自然公園法(読み)シゼンコウエンホウ

デジタル大辞泉 「自然公園法」の意味・読み・例文・類語

しぜんこうえん‐ほう〔シゼンコウヱンハフ〕【自然公園法】

国立公園国定公園・都道府県立自然公園について規定した法律。国立公園法にかわる法律として、昭和32年(1957)に制定された。平成21年(2009)5月、同法の目的に、生物の多様性確保に寄与することを追加するとともに、それまで規制の対象外となっていた干潟岩礁を「海域公園」として指定し、生物の保護強化や開発を規制できる制度を盛り込んだ改正法が成立した。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「自然公園法」の意味・わかりやすい解説

自然公園法
しぜんこうえんほう

1931年(昭和6)国立公園法の制定によって、国の指定する自然公園として国立公園の制度が生まれた。1934年から瀬戸内海をはじめ12の国立公園が指定されたが、戦争のために実質的な進展はみられなかった。第二次世界大戦後、国立公園行政に対し、文化国家再建の一翼を担うものとして改めて関心が寄せられ、強力に推進を図ろうとする機運が生まれた。このような情勢のなかで、国立公園に関する規定の強化、国立公園に準ずる公園としての国定公園の制度の明確化、都道府県立自然公園に関する法的根拠の整備などの理由によって、新たな法体系が必要となり、国立公園法にかわるものとして1957年、自然公園法(昭和32年法律161号)が制定された。この法律によって、自然公園は国立公園、国定公園および都道府県立自然公園の三者からなると規定され、前二者は国の指定する公園、都道府県立自然公園は都道府県が条例によって指定し、国立公園に準じて風致維持のために規制を行うことができるものとされている。それによって、わが国の自然公園は総合的な体系化が図られることになり、都市公園法とあわせてわが国の公園全体を規律することになった。1960年代に入って環境問題がにわかに厳しくなり、72年に制定された自然環境保全法とともに、自然公園法は自然景観の保護のためにさらに重要な役割を担うことになった。

[池ノ上容]

『鈴木敏・沢田晴委智郎著『公園の話』(1993・技報堂出版)』『飯沼二郎・白幡洋三郎著『日本文化としての公園』(1993・八坂書房)』『環境庁国立公園課監修『自然公園実務必携――平成9年版』(1997・第一法規出版)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自然公園法」の意味・わかりやすい解説

自然公園法
しぜんこうえんほう

昭和32年法律161号。優れた自然の風景地を保護するとともに,その利用増進をはかり,国民の保健休養および教化に資するとともに,生物の多様性の確保に寄与することを目的とする法律。1957年10月施行。国立公園国定公園および都道府県立自然公園の指定,公園計画および公園事業の決定・執行,公園内の特別地域(第1種,第2種,第3種)や特別保護地区等における許認可手続きをおもな内容とする。前身は国立公園法(昭和6年法律36号)。2022年3月末現在,日本を代表する傑出した自然の風景地 34ヵ所が国立公園に,国立公園に準ずる優れた風景地 58ヵ所が国定公園に指定されているほか,都道府県の風景を代表する風景地 310ヵ所が都道府県立自然公園に指定されている。
同法施行後の 1960年代は観光ブームをうけて各地で観光道路が建設され,それに伴う自然破壊が問題視されるようになった。環境の保全や美観の維持がはかられるなか,1970年に美しい海中景観を維持するための施策として,海中公園地区が国立公園および国定公園内に設置されることになった。1973年には,特別地域や海中公園地区以外の普通地域でも規制が強化され,またゴルフ場の設置が公園事業から削除された。1990年代以降は動物・植物の保護がうたわれるようになり,1990年に特別地域における車馬の乗り入れや動植物の捕獲・殺傷,採取が制限され,2002年には同法の責務規定に「生物の多様性の確保」が,さらに 2009年には同法の目的に「生物の多様性の確保に寄与すること」が追加された。2009年はこのほか,海中公園地区が海域公園地区に改められ,保護の対象が従来の海中に加え,海上の岩礁や干潟などを含む海域に広がった。なお,公園の管理については,2002年に一般社団法人または一般財団法人,非営利団体 NPO法人などのうち,自然公園の管理に一定の能力を有する法人を,国立公園については環境大臣が,国定公園については都道府県知事が,公園管理団体として指定できるようになった。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「自然公園法」の意味・わかりやすい解説

自然公園法【しぜんこうえんほう】

すぐれた自然の風景地の保護と利用の増進を図り,国民の保健・休養と教化に資することを目的とする法律(1957年)。国立公園法(1931年)に代わって制定された。自然公園審議会の設置,国立公園・国定公園・都道府県立自然公園(以上3種を自然公園という)の指定,その保護と利用,公園の事業費用の負担などについて定める。→都市公園
→関連項目国定公園国立公園自然保護

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の自然公園法の言及

【国立公園】より

…都道府県立自然公園は,都道府県民を野外休養にひきつける魅力のある地域を都道府県知事が指定する。以上の3公園が自然公園法(1957公布)に定める自然公園である。 日本の国立公園では,保護のための規制は次のように区分される(国定公園も同じ)。…

【自然公園】より

…自然の風景地をそのまま利用してつくられる公園で,都市公園に対比されるもの。日本では1957年に制定された自然公園法において,〈すぐれた自然の風景地を保護するとともに,その利用の増進をはかり,国民の保健,体育および教化に資することを目的として,一定の区域を画して指定される公園〉と規定され,国立公園,国定公園,都道府県立自然公園の3種が含められている。国によっては,サンクチュアリなど自然保護を目的として指定された区域をも自然公園と呼ぶことがあるが,一般には単なる自然の保護だけでなく,公衆の野外レクリエーションの場としての機能をも目ざして設置されている。…

【自然保護】より

…いずれにしても,自然保護の概念は,現在の日本では未成熟で,著しく多様性をもつ概念であることを認めざるをえない。 明治以降,自然に対する人の社会の干渉に制約を加える制度は早くから作られてきており,そのおもなものとしては,自然公園法(1931年公布の国立公園法を継承して57年に公布)による国立公園・国定公園・公立公園,文化財保護法(1919年公布の史跡名勝天然記念物保存法等を統合して50年に公布)による天然記念物,鳥獣保護法(略称。1918公布。…

※「自然公園法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android