群体(読み)ぐんたい(英語表記)colony

翻訳|colony

精選版 日本国語大辞典 「群体」の意味・読み・例文・類語

ぐん‐たい【群体】

〘名〙 生物学で、分裂や出芽などで増殖した個体が集まって共通の体を組織し、互いに連結している生物集団。樹状、球状線状などの形が多く、構成する各個体を個虫という。植物ではボルボックス珪藻動物では海綿動物刺胞動物などにみられる。合体コロニー

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デジタル大辞泉 「群体」の意味・読み・例文・類語

ぐん‐たい【群体】

分裂出芽によって生じた新しい個体が、母体を離れずに、組織内の連絡を保ちながら生活する個体群海綿動物サンゴクダクラゲボルボックス珪藻けいそうなどにみられる。コロニー。

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改訂新版 世界大百科事典 「群体」の意味・わかりやすい解説

群体 (ぐんたい)
colony

生物の中には,出芽または分裂などの無性生殖で生じた新しい個体が母個体から分離しないで,互いに体の一部分または殻などの構造によって連結されているものがある。この集合体を群体と呼ぶ。群体を構成するおのおのの個体を個員または個虫zooidといい,真の意味の群体では,個員が互いに原形質によって連絡して,栄養摂取や刺激に対する反応は全個員に及ぶ。これに対して殻などの死んだ物質により接着するのみで,互いの連絡がない場合は,偽群体pseudcolonyと呼ぶ。群体をつくる生物には,植物ではラン藻植物,緑藻植物などがあり,動物では原生動物海綿動物,刺胞動物,内肛動物コケムシ類ホヤ類が知られている。群体は外部形態から,(1)個員が互いに一直線につらなる線状群体,(2)全体が樹状につらなった樹状群体,(3)球形を構成する球状群体,さらに(4)底部をもち互いに連絡して芝草状になる叢状群体などに区別される。群体は単細胞生物間にも多細胞生物間にもみられ,前者を連結生活体もしくは細胞群体と呼ぶ。また群体を構成する個員の間に,形態的,機能的な分化が著明なものを多形性群体という。連結生活体である球状群体のオオヒゲマワリ(緑ラン藻植物)は,泳ぐ時には極性を示し,さらに大きな群体になると前後の分化がおこり,前方には体細胞,後方には生殖細胞が位置する。このように分化がはじまり,機能の分業がおこっている連結生活体は,単細胞生物から多細胞生物への進化の過程をあらわすものと考えられている。一方,多形性群体は,ヒドロポリプやコケムシに例が多い。例えばクダクラゲは大きくいって,栄養を消化吸収する栄養個体,卵や精子などの生殖細胞をつくる生殖個体,細長い指状個体,泳ぐための泳鐘個体,外部刺激を感じる感触体,防御のための刺胞をもつ触手個体,中にガスがたまっていて全体の浮き沈みを調節する気胞個体など,形態・機能がまったく異なった個員からなり分業がおこなわれている。これらのちがった個員の分業によって全体が生活しているのである。コケムシはふつうの個員を収容する虫室のほかに,受精卵を収容する卵室,群体につくごみを除去したり防御の役割をしたりする振鞭体,物をとらえるように筋肉の発達した鳥頭体などが集まった多形性群体である。またカイウミヒドラには,栄養個員のほかに指状個員,らせん個員,刺状個員,子茎などがある。一般にカツオノエボシなどのように複雑な群体では,各個員は独立して生活することが困難になっている。多形性群体は,多細胞生物がさらに高次の形態,機能をもった生物個体への進化の過程をあらわしているとも考えられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「群体」の意味・わかりやすい解説

群体
ぐんたい

分裂または出芽によって生じた新たな個体が互いに連結されてできた個体の集合。原生動物、海綿動物、刺胞(しほう)動物、コケムシ類(外肛(がいこう)動物)、ホヤ類(原索(げんさく)動物)など、主として海産無脊椎(むせきつい)動物のさまざまなグループにみられる。群体を形成する個体を個虫または個員とよぶ。群体は形態上から線状群体、樹状群体、球状群体、叢状群体(そうじょうぐんたい)などに区別され、また固着性、浮遊性、匍匐(ほふく)性のものがある。群体の統合の程度はさまざまであり、個虫どうしが単に殻などによって連結されているだけのものから、個虫間に神経系による刺激の伝達がみられ全体として統合された動きをみせるものまである。クダクラゲ類(刺胞動物)やコケムシ類ではもっとも高度に統合された群体の例がみられる。クダクラゲ類のカツオノエボシでは、個虫が、浮き・栄養体・生殖体・触手などに形態的・機能的に分化しており、これらが集合して一つの群体を形成するが、それは高度に統合された動きによって餌(えさ)をとらえて消化し、あるいは刺激に対して逆方向に逃避することができる。このような群体が単一の受精卵から分裂によって生じるという点からも、それを一つの個体と考えることもできるが、海綿などでは同種の隣接した群体が合体して一つの群体となることもあり、また系統発生的にも、もともと単独生活を営んでいた個虫が集合して群体を生じたと考えるのが正しい。

[喜多 実]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「群体」の意味・わかりやすい解説

群体
ぐんたい
colony

原生生物,刺胞動物サンゴやクラゲ類),曲形動物(スズコケムシ類),外肛動物(苔虫類),脊索動物ホヤ類)などに見られる生活型。分裂または出芽によって生じた新個体(個虫)が多数結合したもので,個虫の役割と形態が異なっている場合もある。形や大きさは種類によって異なる。群体を構成する個体同士が体壁の穴を通して原形質によって連絡している場合(真の群体)と,体の外方に分泌した殻などの外骨格によって結合している場合(偽群体)とがある。群体の大部分の個体は単独でも生活できる能力をもつ。外形によって,線状,樹状,球状,叢状などに区別される。

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百科事典マイペディア 「群体」の意味・わかりやすい解説

群体【ぐんたい】

分裂や出芽などで生じた新個体が,母体から離れることなく,体の一部,または体から分泌した殻などによって互いに連なっているもの。群体を構成する各個体は個員または個虫と呼ばれる。真の群体では個員間に原形質の連絡があり,栄養摂取,刺激に対する統一的な反応が成立し,さらにクダクラゲ類などでは個体間に分業がみられ,1個員は一つの器官のように働く。これに対して,各個員は殻などの死んだ物質によって接着するだけで互いに密接な関連を持たないものは偽個体と呼ばれる。群体は原生動物,腔腸(こうちょう)動物から触手動物,原索動物にまで広くみられるほか,ラン藻類や緑藻類などの植物にもみられる。
→関連項目出芽

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世界大百科事典(旧版)内の群体の言及

【コロニー】より

…語意は植民地ないし同類集団の居住地であるが,第1次大戦後のイギリスの結核対策では転じて,一般地域で生活困難をきたす結核回復者へのアフターケアと労働とを組み合わせた共同生活施設の通称となった。日本には,結核回復者施設の流れをくむ身体障害者施設でコロニーと称する社会福祉法人がある。一方,親亡きあとの重度精神遅滞者に家庭に代わる施設の必要性を訴えた親たちの運動にこたえて,国が設置し,特殊法人の心身障害者福祉協会が運営する精神遅滞者の大型施設が,1971年群馬県高崎市に国立コロニーとして設立された。…

【植民地】より

…植民地という概念は,ラテン語coloniaに起源をもち,それが近代ヨーロッパ語のcolony(英語),colonie(フランス語),Kolonie(ドイツ語)として広く用いられ,さらに近代日本において,その日本語訳として定着したものである。この概念は古典古代,近代ヨーロッパ,近代日本と三重の歴史的位相をもち,それに応じて,意味する内容も拡大してきた。近代以前には,植民地という言葉はおもに,ある集団か,その一部が従来の土地を離れて新たな地域に移住し,そこで形成する社会を意味した。…

※「群体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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