(読み)ナワ

デジタル大辞泉 「縄」の意味・読み・例文・類語

なわ〔なは〕【縄】

麻・わらなどの植物繊維化学繊維をより合わせて作った、細長いひも。物を縛ったりつないだりするのに用いる。「をなう」
罪人を縛るための縄。捕縄ほじょう。とりなわ。
田畑の面積を間縄けんなわで測ること。また、それに用いるもの。縄入れ
つな[用法]
[下接語]麻縄荒縄かぎ掛け縄飾り縄口取り縄口縄朽ち縄首縄化粧縄けん極楽縄腰縄下げ縄差し縄さし三寸縄渋縄注連しめ棕櫚しゅろ墨縄高縄釣り縄手縄・胴縄・年縄捕り縄泥縄投げ縄鳴子縄荷縄はえ早縄引き縄左縄一筋縄火縄振り縄みずもちわら
[類語]荒縄細引きテープしめ縄命綱帆綱ロープザイル

じょう【縄〔繩〕】[漢字項目]

[音]ジョウ(呉) [訓]なわ
学習漢字]4年
〈ジョウ〉
なわ。「縄文結縄捕縄
大工道具の一。すみなわ。また、正しさの規準。「縄尺準縄
〈なわ〉「腰縄泥縄
[名のり]ただ・つぐ・つな・なお・のり・まさ

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精選版 日本国語大辞典 「縄」の意味・読み・例文・類語

なわ なは【縄】

〘名〙
① 植物の茎や繊維、紙、化学繊維などをより合わせて細長くしたもの。物を縛ったりつないだりするのに用いる。用途によって太い細いがあり、普通、太いものは綱、細いものは紐(ひも)という。
(イ) 一般的にいう場合。
※万葉(8C後)二〇・四四二九「厩(うまや)なる奈波(ナハ)絶つ駒のおくるがへ妹が云ひしをおきて愛(かな)しも」
※説経節・さんせう太夫(与七郎正本)(1640頃)下「あれにつったるかわごは、ふるけれ共、かけたるなわがあたらしし」
(ロ) 罪人を捕えて縛るために特に丈夫にこしらえたもの。はやなわ。捕縄(とりなわ・ほじょう)。比喩的にも用いる。
※石山寺本瑜伽師地論平安初期点(850頃)二三「索(ナハ)を擲ぐ」
※狂言記・生捕鈴木(1660)「やしんのあるにより、なんぢらまで、なわをかかりゐるよな」
(ハ) 火縄銃を撃つ際、点火のために火をつけるもの。火縄。
※雑俳・柳多留‐一八(1783)「縄がなくなって魚蝋で吸付ける」
(ニ) 出産の際に、産婦がとりすがるもの。
※雑俳・福寿草(1747)「此度は・縄もとりあへずおぎゃおぎゃおぎゃ」
(ホ) 魚釣りに用いる、針をつけるもの。釣り糸。延縄(はえなわ)。また、それを用いて釣りをすること。
洒落本・仕懸文庫(1791)一「おぢい此ごろはなははどふだの〈長なはのこと〉」
② 犬追物(いぬおうもの)の円形の馬場の二重のなわがこい。外円を大縄、内円を小縄という。
③ 田畑の面積などを測量すること。検地。丈量。また、それに用いるもの。縄入れ。
筑前国続風土記(1703)一「天文十二年日本国中毎国の知行高をしるし、其簿を将軍家に献ず。是を民俗には天文の縄と云」

じょう【縄】

〘名〙 墨壺(すみつぼ)に付属する糸巻き車に巻いてある麻糸。大工が木材などに直線を引くために用いる。墨縄。墨糸。すなわ。
小学読本(1874)〈榊原・那珂・稲垣〉二「円を絵くには、䂓を用ゐ、〈略〉直を知るには、縄を則とす」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「縄」の意味・わかりやすい解説


なわ

有機質の繊維を撚(よ)ったロープ。複数の縄を撚り合わせた製品を綱(つな)とよぶことがある。紐(ひも)は直径8ミリ以下の縄をさすこともあるが、衣料素材を用いた帯状の小索をさすことも多い。日本では縄が荷造り用の藁(わら)縄を意味することが多かった。藁縄は藁加工品中の最多量産品で、伝統的には農間余業として夜間、農閑期冬期)に他の藁加工品とともにつくって自給した。藁縄の初綯(な)いが正月行事の一つだった所もあった。帯、襷(たすき)、履き物の緒、井戸のつるべ、たわし、椅子(いす)、のれんおよび簾(すだれ)(本来は扉の代用)、馬具部分、塗り壁に混ぜる補強材などにそのまま用い、編んで籠(かご)(とった魚を入れ水に沈める魚籃(びく)など)、袋(背負い袋など)、網(屋根の保護用など)などに広く利用した。製造機械化の試みが20世紀初めから始まり、1950年代には荒縄をつくる縄ない機と精縄をつくる縄仕上げ機が考案され、日本農林規格(JAS(ジャス))を設けて小工場で生産したが、1960年代以降、石油化学製品の紐、縄類にとってかわられ、樹林越冬用を除き関連用途も廃絶した。藁縄以外では、じょうぶなつくりの捕縄用の縄(刑罰の意にも用いた)、土地測量用の縄(検地の意にも用いた。縄張り語源)、注連(しめ)縄(左撚り。東アジア北半に広く分布)、漁労用の縄(延(はえ)縄。内水面ではウナギ漁用)、銃の火縄(カバ、ネズコ製)、土器文様をつける縄などが重要であった。

 世界の諸民族の縄の材料には植物質が多いが、植生の乏しい草原、砂漠、氷雪地帯では哺乳(ほにゅう)動物の皮などを原料とすることが多かった。栽培植物では各種のアサがもっとも有力で、ワタ、シュロなどの栽培植物のほかに樹皮などを採集して用いた。右撚り(S撚り。両手に材料を挟み右手がつねに前に出るようにもんでなう)と左撚り(Z撚り)の二つがあり、つなげるのには、結ぶのと、ほどいて繊維を撚り合わせる方法の二つがある。つるす、つなげる、動力を伝えるなどが一般的用途で、とくに衣料や住居の部分、運搬用具部分、狩猟または漁労用の網や罠(わな)、狩猟具または武器の投げ縄、莚(むしろ)や袋類の材料などの利用例が多い。特殊な用途には、ゲームと歌の発達した縄とびの縄、長さ・結び目の数などを文字代用とした結縄(けつじょう)(沖縄、古代インカ)、手品(縄切り、縄抜け)用の縄などがある。

[佐々木明]

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改訂新版 世界大百科事典 「縄」の意味・わかりやすい解説

縄 (なわ)

植物の茎や繊維などを撚りあわせて細長くしたもので,(ひも)よりも太く,より細いものを漠然と縄と呼ぶ。外国では動物性のものもあるが,日本では古くから稲わらがその材料とされ,農家の夜なべ仕事の大半は,このわら縄を綯(な)う作業であった。伝統的な材料には,このほか麻があるが,特殊なものとしてはスギ,サワラ,シナノキ,ニレ,フジなどの樹皮などが用いられ,麻,シュロ,ヒノキなどで作った縄は丈夫なうえ,水に強いとして,つるべ縄や錨(いかり)の縄に使用された。クロベ,シラカバ製のものは火縄として重用された。

 縄の綯い方には,右撚りと左撚りがあるほか,二つ打ち縄(2本を綯いあわせる),三つ打ち縄などの別がある。日本では右撚りの縄が多い。ただ右撚り縄を何本か撚りあわせるときには,左撚りにする。また,ぶらんこの縄は右撚りと左撚りを左右に対にして用いる。撚りがもどるのを防ぐためである。左撚りの縄はこのように構造上,構成上の要請にもとづくものが多い。ただ,信仰上の用途に供するもの,たとえば〈しめ縄〉は左撚りと決められており,右撚りを強く忌む風が残っている。このような傾向は,朝鮮,モンゴル,シベリアにも見られるという。

 縄は通常,ものを縛るのに用いるが,かつては文字の代役をつとめたこともあった。その結び目によって数量の表示・記録に充てた古代ペルーのキープ,沖縄の〈わらざん〉がその例である。
ロープ
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百科事典マイペディア 「縄」の意味・わかりやすい解説

縄【なわ】

藁(わら),アサ,シュロの毛など植物繊維をよって細長くしたもの。荷造,運搬等に使用。〈なわない〉として古くから手で作られてきたが明治中期ごろから機械化。現在は化学繊維が使用されている。→しめ縄
→関連項目

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【ひも(紐)】より

…つる,樹皮,皮革,毛,布,糸,紙などを材料としてつくり,製作方法の相違によって組紐,織紐,編紐,裁(たち)紐,絎(くけ)紐,束(たば)ね紐などに分けられる。このほかにこよりも広義の紐の中に含められる。これらは縒(よ)る,組む,織る,編むという基本的な技法のいずれかでつくられる。…

【ロープ】より

…細い繊維を集めて左撚り(より)をかけて単糸(ヤーン)にし,これを数本ないし数十本集めて右撚りをかけて子縄(ストランド)にし,ストランドを三つ,四つ,または八つ撚り合わせるかまたは組むことによって作った長い繊維索。綱,縄,ひも(紐)はだいたいの大きさで繊維索を分別したもので,狭義にロープは綱をさす。…

※「縄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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