箴言(読み)しんげん

精選版 日本国語大辞典 「箴言」の意味・読み・例文・類語

しん‐げん【箴言】

[1] 〘名〙 いましめとなることば。人生の教訓の意味を含めた短い句。格言。金言。〔布令必用新撰字引(1869)〕
※西国立志編(1870‐71)〈中村正直訳〉九「この故に古の箴言(〈注〉イマシメゴト)に、もし事の成就せんことを望ば、自ら往てこれを為べし」 〔書経‐盤庚上〕
[2] (原題Proverbia) 旧約聖書第一九書。ソロモンをはじめとする種々の格言集の集録。実際的な処世訓や現世的な幸福追求のための信仰などを説く。比喩(ひゆ)や金言が、多くは対話法で書かれている。成立は、バビロンの捕囚(前五九七‐前五三八)後、あるいは、ペルシア時代といわれる。

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デジタル大辞泉 「箴言」の意味・読み・例文・類語

しん‐げん【×箴言】

戒めの言葉。教訓の意味をもつ短い言葉。格言。「箴言集」
旧約聖書の中の一書。道徳上の格言や実践的教訓を主な内容とし、英知による格言・金言・勧告が集められたもの。ソロモンその他の賢人の言葉と伝えられる。知恵の書。
[類語](言い習わし常套句常套語決まり文句美辞麗句慣用句ことわざ成句故事成語俚諺りげん俗諺ぞくげん古諺こげん諺語げんご寸言寸鉄警句金言格言名言至言名句座右の銘謳い文句標語売り文句惹句じゃっくスローガンキャッチフレーズモットーキャッチコピーイディオム

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改訂新版 世界大百科事典 「箴言」の意味・わかりやすい解説

箴言 (しんげん)
Proverbs

ヨブ記》《伝道の書》とともに,旧約聖書の知恵文学に属する書物。《箴言》と《伝道の書》は,ソロモンの手になるものとされている。〈モーセ五書〉がモーセにより,《詩篇》がダビデによって書かれたとされるのと同様,知者として有名であったソロモン王に,これらの教訓が帰せられたのである。《箴言》には七つの表題があり,少なくとも七つの部分に分けられる(1:1以下,10:1以下,22:17以下,24:23以下,25:1以下,30:1以下,31:1以下)。そのうち,第1部(1~9章)はもっとも新しく,ヘレニズム時代の著作であろう。第2部(10:1~22:16)はより古く,おそくともイスラエル王国時代に書かれた。実際,王についての言及が見られる(16:12以下,21:1,22:11)。第3部(22:17~23:12)について興味深いことは,エジプトの《アメンエムオペトの教訓》(前2千年紀後半)と内容がよく似ていることである。《箴言》に収められた格言的な教訓はもともと,王国の支配階級子弟学校で教えるためのもので,メソポタミア,エジプトなど古代近東地域の主要部において,類似した内容の教訓が教えられていた。ただ1章7節のようにイスラエルの特色を示す部分もある。第5部(25~29章)は前8世紀後半のユダの王ヒゼキヤが書き記したものとされ,第6部(30章)と第7部(31章)はアラビアマッサの王レムエルの言葉であるとされている。
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箴言 (しんげん)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「箴言」の意味・わかりやすい解説

箴言
しんげん
Mishle; Proverbs

旧約聖書の一書で旧約における知恵文学の代表的なもの。マソラ本文では諸書の真理と呼ばれるものの一書,セプトゥアギンタでは文学の一書。箴言の原語メシャーリームは「比喩」あるいは「格言」の意。第1章の表題から古来『箴言』の著者はソロモンとされていたが,実際はいくつかの箴言集の集成であり,ソロモン自身がそれとどのような関係に立つかは不明である。内容は,(1) 知恵の賛美 (1~9章) ,(2) ソロモンの箴言 (10・1~22・16) ,(3) 知恵ある者の言 (22・17~24・34) ,(4) ソロモンの箴言 (25~29章) ,(5) マッサの人ヤケの子アグルの言 (30章) ,(6) マッサの王レムエルの言 (31・1~9) ,(7) 賢い妻をたたえたアクロスティックの詩 (アルファベット詩歌) に大別される。『箴言』の成立した時代はおそらくバビロン捕囚後で,内外ともに悲観すべき状況にあり伝統的信仰は動揺し道徳的退廃も著しかった。この危機にあたり,預言者に代る教師たち (知恵ある者) は,神を恐れる以上の知恵はないという伝統的信仰に立脚しながら実際的処世訓を説き,若いユダヤ人を指導した。

箴言
しんげん
Les Maximes

フランスのモラリスト,ラ・ロシュフーコーの警句集。『反省または教訓と箴言』 Réflexions ou Sentences et Maximes moralesの略。 1665年刊。当時のサロンで流行した文学様式に従って書かれたもので,何度も加筆訂正され,定本 (5版,1678) は 504編を収める。簡潔的確な文体によって人間心理の微妙な内奥に鋭いメスが入れられており,「美徳はほとんど常に偽装せる悪徳である」を基調にしたその思想は作者の失意の後半生を反映して,厭世的,悲観的である。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「箴言」の意味・わかりやすい解説

箴言
しんげん
mišlē salōmō ヘブライ語
Proverbs 英語

『旧約聖書』中の一書。表題(1章1節)には「イスラエルの王ソロモンの箴言」とある。しかし実際には、古代イスラエル人の間に(一部はすでに彼らの周辺世界に)伝えられていた教訓や格言がさまざまに収集・編集されて成立した箴言集である。全31章。人生や社会生活のさまざまな局面において、善と悪、公正と不正、真理と虚偽、賢明と愚昧(ぐまい)、勤勉と怠惰、等々を分別し、慎みをもって前者につくことを具体的に教え勧める本書は、全体として、人々に「知恵」(ホクマー)を得させることを目的とする。そこには、「知恵」の獲得こそが生命と救いとをもたらし、逆に「知恵」の欠如は死と滅びを招く、との人生観がうかがわれ、ときにはその「知恵」が人格化され、讃美(さんび)される(8章)。また、「主(しゅ)を畏(おそ)れること」、すなわち神との生きたかかわり(信仰)こそが、実は、このような人生知の根本をなす、ともいわれ(1章7節ほか)、このような宗教思想に、単なる人生教訓集を超えた本書の特色がうかがわれる。

[月本昭男]

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普及版 字通 「箴言」の読み・字形・画数・意味

【箴言】しんげん

教戒の言。

字通「箴」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の箴言の言及

【アフォリズム】より

…文学形式の一つで,思考や観察の結果を簡潔な形で,皮肉に,しんらつに,諧謔的に述べたもの。警句あるいは箴言,金言,格言などと訳される。〈分離する〉を意味するギリシア語aphorizeinを語源とし,ヒッポクラテスが医学上の処方を記した《アフォリスモイ》に始まる。…

【知恵文学】より

…旧約聖書の《箴言》《ヨブ記》《伝道の書》,外典に属する《ベン・シラの知恵》《ソロモンの知恵》等を,歴史書,預言文学と区別して〈知恵文学〉と総称する。これらの知恵文学には,特にイスラエル的な信仰を特徴づける主題である排他的な唯一神の信仰,歴史の中に神の行為を実現する救済史観,イスラエルの選び,啓示,契約などが見られない。…

※「箴言」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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