デジタル大辞泉
「相」の意味・読み・例文・類語
そう〔サウ〕【相】
1 そのものの内面などを表す姿・形・ありさま。「憤怒の相」
2 人や物の外面に現れた運勢・吉凶のきざし。人相・手相・家相など。「水難の相」
3 文法で、動詞によって表される動作・作用の性質・あり方とその表現のしかたに関する範疇。受身・可能・自発・使役、また、自動・他動・敬譲など。態。
4 ある物質の、どの部分をとってもその物理的、化学的性質が等しく、他と区別される領域。気体・液体・固体それぞれからなる相を気相・液相・固相という。
あい〔あひ〕【相】
《「合い」と同語源》
[名]
1 二人で互いに槌を打ち合わすこと。あいづち。〈和名抄〉
2 共謀の仲間。ぐる。
「むむ、さては―ぢゃの」〈浄・女楠〉
3 相手をすること。また、相手。
「―には愚僧が行かいでたまるものか」〈伎・韓人漢文〉
[接頭]
1 名詞・動詞に付く。
㋐一緒に、ともに、の意を表す。「相弟子」「相伴う」
㋑互いに、の意を表す。「相四つ」「相憐れむ」
2 動詞に付いて、語勢や語調を整える。現代語では、改まったときや手紙文などで使われる場合が多い。「相成る」「相変わらず」
しょう〔シヤウ〕【相】
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そう サウ【相】
[1] 〘名〙
① 内面の本質を見るべき外面のようす。すがた。かたち。ありさま。外見。仏教では、性(しょう)または体と用(ゆう)に対させる。
※観智院本三宝絵(984)下「身に卅二の相をそなへたり」
※正法眼蔵(1231‐53)弁道話「寂滅を談ずる門には、諸法みな寂滅なり、性と相とをわくことなし」
※ひとりの武将(1956)〈松本清張〉九「まるで山の相が変って居ります」 〔観無量寿経〕
② 将来の運勢、吉凶などが、前もって外面にあらわれたかたち。人相、家相、手相など。
※源氏(1001‐14頃)桐壺「帝王の上(かみ)なき位にのぼるべきさうおはします人の」
※大鏡(12C前)五「とくより、この君をば出家の相こそおはすれとのたまひて」 〔荀子‐非相〕
③ 文法で、一つの動詞がある動作作用を表わすのに、受身、使役など動作作用のとらえ方の相違を、
助動詞との連接などによって示すことについていう。「態」ともいう。動作、作用と主語との関係から能動・受動・使役・可能・自発に分け、また、自動・他動・中相・敬譲を加えることがある。これら相の助動詞は、
接尾語とみなす考え方もある。
⑤ 物理的または化学的性質が均一なことによって他と区別される部分。気体・液体・固体に対応して、気相・液相・固相といい、
純物質・
混合物に対応して純相・溶相というなど。
そう‐・する サウ‥【相】
〘他サ変〙 さう・す 〘他サ変〙
① 物事の姿や
有様をみて、その
実体を判定する。鑑定する。見たてる。
※
名語記(1275)二「馬のとしを相するも、はをみてしる也」
② (「そうずる」とも) 人相・家相・地相などをみて、吉凶を判断する。占う。
※
続日本紀‐延暦元年(782)八月己未「遣
下〈略〉六位已下解
二陰陽
一者合一十三人於大和国
上、行相
二山陵之地
一。為
レ改
二葬天宗高紹天皇
一也」
※大鏡(12C前)五「飯室の
権僧正のおはしましし伴僧にて、相人の候しを、女房どものよびて、相ぜられけるついでに」
しょう シャウ【相】
〘名〙
① 君主を補佐して政治を行なう職。宰相。大臣。
※
神皇正統記(1339‐43)中「坐
(ざし)て以
(もって)道を論ずるは文士の道也。此道に明ならば相とするにたへたり」 〔礼記‐月令〕
② 助けるもの。補佐。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
相 (そう)
動詞の文法的カテゴリーの一つで,動詞のあらわす行為・過程をどのようにとらえるかの違いにかかわる範疇分け,およびその区別に基づく語形上の交替を相(アスペクトaspect)の違いという。そこで,ある行為や過程を全体として一つの点的なまとまりとしてとらえるか,あるいはその内的な展開の種々相のいずれかに着目するかといった違いによって,完了相,瞬間相,進行相,継続相,習慣相,起動相(動作や過程の開始を示す),終結相などが区別される。
aspectという用語は本来はロシア語などのスラブ語(スラブ語派)にみられる現象を示すためのものであり,日本語では〈体(たい)〉とも訳される。ロシア語では動詞はすべて完了体か不完了体のいずれかに属し,それぞれが各時制に関してそれぞれの活用形をもつ。いま(1)On napisal.と(2)Onpisal.の二つの文について,両者は〈彼(on)の〈書く〉という行為〉について述べているという点は共通である。また時制に関しても共に〈過去〉である(napisal,pisalはnapisat',pisat'の過去・単数・男性形)。互いに異なるのは〈体〉(=相)に関してであって,(1)では〈書く〉がすでに終了,完結した点に着目しているのに対し,(2)ではそうではないという違いである。不完了体は通常,〈進行・継続・反復〉などの意味をもち,(2)は〈彼は書いていた〉などと訳すことができる。(1)は〈彼は書き終えた,書いてしまった〉の意味である。
相はこのような完了体napisat'-不完了体pisat'という種類の語形の交替によって示されるばかりでなく,助動詞などを使って迂言的に示したり,特別の小辞を用いてあらわされる場合もある。たとえば英語ではHe sings.-He is singing.の対立にみられるように,be動詞+現在分詞により進行相が示される。また中国語では,已経喫了〈もう食べた〉と還在喫着〈まだ食べている〉の違いにみられるように,小辞〈了〉と〈着〉がそれぞれ完了相と持続相を示す。なお〈喫〉は〈食べる〉の意味である。このようにみてくると,日本語の〈読む〉-〈読んでいる〉にみられる〈……スル〉形と〈……シテイル〉形の対立は相の違いに基づくものであるということができるだろう。
なお,〈相〉という術語はvoice(態)の意味で使われることもあるので,その点留意する必要がある。
執筆者:柘植 洋一
相 (そう)
phase
明確な境界によって他の部分と物理的に区別できる物質系の均質な部分を相といい,その部分が,気体,液体,固体であるのに対応して,それぞれ気相,液相,固相と呼ばれる。二つ以上の気相が共存することはなく,また純粋な物質ではヘリウムを除いては二つの液相が共存することはない。固相の場合は純粋な物質でも結晶構造などが異なるいくつかの相があることもあり,これらが共存する場合も多い。このようなときには異なる相にあるといい,また,熱力学的性質,電場や磁場などの外場に対する応答の仕方などが定性的に異なる場合も相が異なるという。相が1種類の分子(または原子)だけからなるときは純相,2種類以上含む場合は溶相と呼ばれる。また物質系が,ただ一つの相からなる場合は均一系または単相系といい,二つ以上の相を含むときは,不均一系または多相系という。均一系が温度を下げたりすることによって二つまたはそれ以上の相に分かれて不均一になることを相分離,分離した相がそのまま安定に存在することを相平衡という。気相,固相などの呼び方のほかにも磁性体で外部磁場がないにもかかわらず磁化をもつ場合の相を強磁性相,また低温で電気抵抗が0になる相を超伝導相と呼んだりし,このほか液晶もその構成分子の配列の仕方によってコレステリック相,ネマティック相,スメクティック相などに区分される。なお,系が温度や圧力,その他の熱力学パラメーターの変化に伴ってある相から他の相に移ることは相転移と呼ばれる。
執筆者:小野 嘉之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
相
ソウ
phase
単に気相,液相,および固相をいうだけでなく,相律においては次のように厳密に定義されている.それ自身均一で,かつ系のほかの部分と物理的に明確に区別される部分をいう.気体はつねに1相であり,液体はそれが純粋であっても混合物であっても単一相である.ただし,互いに不溶性の溶液が2層をつくるような場合は2相である.固体はいくつかの相からなりうるが,固溶体は単一な相である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
相
明確な物理的境界によって他と区別される物質系の均一な部分.その物質系自体の内部は物理的に均質で,その系の中の他の均質であるが異なる部分とは境されて機械的に分離可能なものをいう.固体,液体,気体などの状態とは関係なく,一つの相では,それ自身の内部では均一であり,しかも他の部分とは物理的に異なった領域のものである[Wahlstrom : 1950,片山ほか : 1879,長倉ほか : 1998].一つの均質な部分とは同じ組成であればその個数には関係なく,何個あっても同じ相である.
相
地質学では分野によって様々な使い方がある.堆積物では,形成を制御する条件の基準として考えられる岩石学的および古生物学的な性質を意味する.単一の火成岩岩体の変化の場合には,通常の岩体からの組織または組成の違いを表す際に用いる.変成岩では変成相に使用される[Gressly : 1838, Dunbar & Rodgers : 1957].ラテン語のfaciesは形,型,種類などの意味.
出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報
相
そう
phase
境界面で空間的に区別された均質な部分を相と呼ぶ。たとえば容器中に液体の部分とその蒸気の部分が共存している場合,それらを液相,気相と呼ぶ。同じ物質の固相でも結晶構造が異なれば,ほかの相とみなされるので,いくつかの相が存在しうる。1相だけの物質を均一系または単相系,2相以上からできている物質を不均一系または多相系という。 (→状態図 , 相律 )
相
そう
lakṣaṇa
仏教用語。特徴,特質,様相,形相という意味。仏教では,体 (本体) ,用 (作用) ,相の3語が組みになって用いられるが,この場合の相は,見られるものの姿を意味する。 (→体・相・用 )
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の相の言及
【態】より
…また〈しまる〉―〈しめる〉にみられる自動と他動の対立も,態における対立ということができる。 なお,〈態〉のかわりに〈相〉という用語が用いられることもある。【柘植 洋一】。…
【日本語】より
…
[文法――形態面]
日本語では名詞の後に種々の助詞を用いて動詞との関係が示される。例えば〈先生が生徒に日本語を教える〉においては,助詞〈が〉は主格で動詞〈教える〉の動作主を,助詞〈に〉は与格で〈教える〉相手を,助詞〈を〉は対格で〈教える〉内容を表している。また,例えば〈たべ・させ・られ・た〉では,動詞語幹〈たべ〉に使役〈させ〉,受身〈られ〉,完了〈た〉の語尾が次々と接合されている。…
【ロシア語】より
…ただし,語頭と語末以外の位置で4音素の区別を保つ(すなわち,/i/と/e/の区別を保つ)体系も標準的とされている(つまり,лиcá(キツネ)とлecá(森林――複数形)を音韻論的に同一としても,しなくてもよい)。 なお,正書法上のи[i]とы[ɨ]の区別は音声上の相違としては存在するが,まったく相補的な分布を示すので同一音素(/í/ないし/i/)と解釈される。また,/ú/,/u/,/ó/の音声的実現はすべて強い円唇性を特徴とすることに注意しなければならない。…
【位相】より
…[位相空間]【中岡 稔】(2)物理学用語。フェーズphaseともいう。振動,波動あるいは交流の電流・電圧などの周期的な現象が,一周期の中のどの状態にあるかを示す量。…
【オーディオ】より
…最近は規格値より立上り時間の速い計器も使用されている。 フェーズphase位相のことであるが,オーディオ機器ではステレオチャンネルの極性を合わせるために,片方のチャンネルの信号の位相を反転させるキーやスイッチにこの名を付している。 変調雑音modulation noise信号に付随して発生する雑音で,テープ録音のときにテープ磁性層のむらやヘッドとテープの接触状態の変動などが原因で振幅変調性の雑音が生じ,テープ走行方向にテープが微振動するために周波数変調性の雑音が発生する。…
【相転移】より
…物質が化学的,物理的に一様であるとき,その均質な部分を相と呼ぶが,一般に物質は,例えば水(液相)が氷(固相)になったり水蒸気(気相)になったりするように,温度や圧力などによって異なる相をとる。このように,物質がある相から異なる相に移ることを相転移,または相変化という。…
※「相」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」