精選版 日本国語大辞典 「父」の意味・読み・例文・類語
ちち【父】
〘名〙
① 両親のうちの男の方。すなわち、実父・継父・養父の総称。父親。おとこおや。ち。かぞ。てて。しし。
※万葉(8C後)一三・三三一二「奥床に 母はい寝たり 外床に 父はい寝たり」
※源氏(1001‐14頃)末摘花「ちちの大輔の君はほかにぞすみける。ここには時時ぞかよひける」
② キリスト教で、神をいう。
※悪魔(1903)〈国木田独歩〉三「天に在(まし)ます父(チチ)よ」
③ 新しいものの開祖。先駆者。また、偉大な貢献者。「現代物理学の父」
[語誌](1)もとは「ち」に父の意があったことが「まろが知(チ)」〔古事記‐中・歌謡〕などから分かる。「ち」は、また「おほぢ」(祖父)、「をぢ」(伯父、叔父)などの語基でもある。
(2)中古以後に「てて」の形も認められるが、徐々に俗語的になっていったことが「てて 父の俗語也」〔倭訓栞〕などからうかがわれる。
(3)「日葡辞書」には「Toto(トト)」がみられ、この語にさまざまな接辞のついた語形が近世になって現われる。上方語では「ととさん」「ととさま」、江戸語では「おとっちゃん」「おとっつぁん」「おととさん」「とうさん」「おとうさん」などである。
(4)「ちゃん」は「おとっちゃん」の上略語とされるが、全国に広がる方言分布からすると、それほど新しい語とは思えず、「ちち」に由来する可能性もある。
(2)中古以後に「てて」の形も認められるが、徐々に俗語的になっていったことが「てて 父の俗語也」〔倭訓栞〕などからうかがわれる。
(3)「日葡辞書」には「Toto(トト)」がみられ、この語にさまざまな接辞のついた語形が近世になって現われる。上方語では「ととさん」「ととさま」、江戸語では「おとっちゃん」「おとっつぁん」「おととさん」「とうさん」「おとうさん」などである。
(4)「ちゃん」は「おとっちゃん」の上略語とされるが、全国に広がる方言分布からすると、それほど新しい語とは思えず、「ちち」に由来する可能性もある。
とと【父】
〘名〙
① 父をいう幼児語。子が父親を敬い親しんで呼ぶ語。おとなが子の立場に立って使う場合もある。〔日葡辞書(1603‐04)〕
※咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)上「かの息子にっこと笑ひ『なふとと、百はたごとはこの事か』といふ」
② 転じて、夫。亭主。
てて【父】
〘名〙
① 父。ちちおや。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「この手、母にも勝り、母はてての手にも勝りて」
② 遊女屋の主人。〔随筆・異本洞房語園(1720)〕
③ 下男のこと。
※御伽草子・月日の本地(室町時代物語集所収)(室町末)「よくよく、しゅごし申せとて、御ててにぞめされける」
ち【父】
〘名〙 男子を敬っていう上代語。ちち。かぞ。他の語の下に付いて用いられる場合は、連濁によって「ぢ」となることもある。
しし【父】
〘名〙 「ちち(父)」の上代東国方言。
※万葉(8C後)二〇・四三七六「旅ゆきに行くと知らずて母(あも)志志(シシ)に言申さずて今ぞ悔しけ」
てて‐ら【父】
〘名〙 =てて(父)
※浄瑠璃・雪女五枚羽子板(1708)厄払ひ「ててらかからに爺婆息災」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報