父母(読み)ちちはは

精選版 日本国語大辞典 「父母」の意味・読み・例文・類語

ちち‐はは【父母】

〘名〙 (「ちちはわ」の時代も) 男親女親。父と母。両親。ふぼ。ててはは。
書紀(720)神代下(兼方本訓)「故、天稚彦の、親(チチハハ)、属(うからやから)、妻、子(こ)、皆、謂(おも)はく」
土左(935頃)承平五年一月二一日「わがちちはははありとしおもへば」
日葡辞書(1603‐04)「Chichifaua(チチハワ)

かぞ‐いろ【父母】

〘名〙 (古くは「かそいろ」) =かぞいろは(父母)
※書紀(720)神代上(寛文版訓)「其(そ)れ父母(カゾイロ)の既に諸子(もろもろのみこたち)に任(ことよせ)たまひて」
信長公記(1598)六「かぞいろとやしなひ立てし甲斐もなくいたくも花を雨のうつをと」

かぞ‐いろは【父母】

〘名〙 (古くは「かそいろは」。「いろは」は実母の意) 父母(ふぼ)。ちちはは。かぞいろ。
※書紀(720)神代上(水戸本訓)「故其の父母(カソイロハ)二はしらの神」
太平記(14C後)二五「かぞいろは何に哀と思ふらん三年(みとせ)に成ぬ足立ずして」

ふ‐ぼ【父母】

〘名〙 父と母。両親。ぶも。
※律(718)名例「凡応議者祖父母、父母、伯叔、姑、兄弟妻子
※百座法談(1110)三月二七日「身躰髪ふは父母(フホ)のたまはれる処也」 〔書経‐大禹謨〕

とち‐はは【父母】

〘名〙 「ちちはは(父母)」の上代東国方言。
万葉(8C後)二〇・四三四〇「等知波波(トチハハ)え斎(いは)ひて待たね筑紫なる水漬(みづ)く白玉取りて来(く)までに」

ぶ‐も【父母】

〘名〙 (「も」は「母」の呉音) =ふぼ(父母)
源平盛衰記(14C前)三九「夫母(ブモ)の諫にもかかはらず」

てて‐はは【父母】

〘名〙 ちちとはは。ちちはは。ふぼ。両親。
大和(947‐957頃)二条家本附載「近くをだにはなたずててははのかなしくする人なりければ」

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デジタル大辞泉 「父母」の意味・読み・例文・類語

ふ‐ぼ【父母】

ちちと、はは。ちちはは。両親。
[類語]両親二親父母ちちはは親御親元実の親生みの親・実父母・継父母継親ままおや仮親養父母養親養い親育ての親・育て親・里親名付け親片親

ちち‐はは【父母】

父と母。両親。ふぼ。
[類語]両親二親父母ふぼ親御親元実の親生みの親・実父母・継父母継親ままおや仮親養父母養親養い親育ての親・育て親・里親名付け親片親

かぞ‐いろは【母】

《古くは「かそいろは」》父と母。両親。かぞいろ。
「―いかに哀れと思ふらん、三年みとせになりぬ足立たずして」〈太平記・二五〉

ぶ‐も【母】

ふぼ」の古形。
身体髪膚を―に受け」〈義経記・四〉

てて‐はは【父母】

ちちと、はは。ちちはは。ふぼ。
「―、炭櫃に火などおこして待ちゐたりけり」〈更級

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改訂新版 世界大百科事典 「父母」の意味・わかりやすい解説

父母 (ふぼ)

出生した子どもは両親が社会的に承認された夫婦であれば,正当な社会的地位が与えられる。子どもにとって多くの親は生物学的なつながりがあるとともに,それを前提として社会学的な関係が設定されるが,しばしば血のつながりがあるとされる父母とは異なる父母に社会学的関係を設定することがある。いま血のつながりがあるとされる父母を生物学的父,生物学的母,社会関係が設定される父母を社会学的父,社会学的母と呼んで両者を区別するとすれば,父母の意味についてより深い考察が与えられることになる。養子縁組は社会学的父母と生物学的父母とが異なる典型的な例であるが,このほかにも両者のずれはさまざまな形で認められる。まず母系社会においては,子どもが成長するにしたがって,子どもに対して法的権力をふるうのは生物学的父ではなくて,母の兄弟すなわち母方オジである。この意味において母系社会における社会学的父は母方オジであって,生物学的父とずれを見せる。またアフリカ東部のヌア族の間で行われている亡霊婚は両者のずれを示すもう一つの好例である。ヌアでは結婚後子どもをつくらずに死亡した男がいた場合,その妻が死んだ夫の弟と性交渉をもって子どもをつくる。その場合生まれた子どもは兄の子として社会的に位置づけられる。なぜなら弟と兄の妻は正式の夫婦ではないからである。この場合,弟は生物学的父であるが,社会学的父は死んだ兄である。このように社会学的父をだれとするかはそれぞれの社会の親族組織や社会構造の規定を受けるのである。
親子成り
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

普及版 字通 「父母」の読み・字形・画数・意味

【父母】ふぼ

両親。〔孝経、開宗明義章〕身體髮膚、之れを母に受く。敢て毀傷せざるは、孝の始めなり。

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