潮来(読み)いたこ

精選版 日本国語大辞典 「潮来」の意味・読み・例文・類語

いたこ【潮来】

[1] 茨城県南東部の地名。霞ケ浦と北浦の間にある。大化改新の頃から駅が置かれていたが、江戸時代に香取、息栖(いきす)、鹿島の三社もうでの船客の中継地として栄えた。水郷筑波国定公園の一中心。JR鹿島線が通じる。平成一三年(二〇〇一)市制。
[2] 〘名〙 「いたこぶし(潮来節)」の略。
洒落本通言総籬(1787)二「けふ此比(このごろ)はいたこやかるい沢ではやる時分」

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デジタル大辞泉 「潮来」の意味・読み・例文・類語

いたこ【潮来】

茨城県南東部の市。利根川三角州にある。鹿島香取息栖いきすの三社詣での中継地、霞ヶ浦北浦水運の中心として発展。水郷観光の中心地。人口3.1万(2010)。

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改訂新版 世界大百科事典 「潮来」の意味・わかりやすい解説

潮来[市] (いたこ)

茨城県南東部の市。2001年4月潮来町が牛堀(うしぼり)町を編入,市制施行して成立した。人口3万0534(2010)。

潮来市東部の旧町。旧行方(なめかた)郡所属。人口2万5841(2000)。北浦の西岸にあり,南は北利根川をへだてて千葉県香取市と接する。町域の北半は台地,南半は低地で,内浪逆浦(うちなさかうら),延方など第2次大戦後の干拓地が広がる。中心集落の潮来は古来,水陸交通の要地で,江戸時代には東北各地から江戸への水運の中継港として栄えた。江戸後期の東廻海運航路の変更,明治後期の成田線の開通により交通の要地としての地位は失ったが,水郷観光の中心地として全国に知られた。鹿島線の開通(1970)により観光客が増加し,現在は水郷筑波国定公園の中心として観光開発に力が入れられている。水郷地帯はまた早場米の産地としても知られ,現在も米作が中心。鹿嶋に進出した企業の社宅団地がつくられ,内浪逆浦干拓地にも大規模な住宅団地が造成されるなど,鹿嶋地区のベッドタウン化も進んでいる。東関東自動車道の潮来インターチェンジがある。
執筆者:

地名は奈良時代の《常陸国風土記》に板来(いたく)村とあり,江戸初期に水戸藩領となって,1698年(元禄11)前藩主徳川光圀の命で潮来と改称したという。江戸時代東廻海運が開けて以来,潮来は水戸藩をはじめ奥州諸藩の産米などを江戸に輸送する中継港として繁栄し,領内屈指の在町であった。遊郭も軒を連ね,水戸領では大洗祝町と並んで知られた。19世紀初めごろは戸数651。密集して町の形をなしていた。江戸後期には鹿島灘の海運の安全性が高まり,航路は直接銚子から利根川に出るようになって,港としての潮来は衰えたが,鹿島神宮に近く,筑波の双峰を遠く望む景勝の地として,江戸方面からの遊客も多かった。
執筆者:

潮来市西部の旧町。旧行方郡所属。人口6103(2000)。霞ヶ浦の南東端に位置し,北利根川を境に千葉県と接する。町域の北部は低い台地が広がり,南部は低地となる。中心集落の牛堀は北利根川に面し,霞ヶ浦の出入口にあたる水運の要所で,河岸が設けられていた。現在も商業が盛んである。低地は水郷の早場米地域の一角を占めるが,全般的に農業はふるわない。湖岸は水郷筑波国定公園に属し,市街地背後の台地からの展望にすぐれ,葛飾北斎の《富嶽三十六景》に〈常州牛堀〉の図がおさめられている。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「潮来」の意味・わかりやすい解説

潮来
いたこ

茨城県南東部、行方郡(なめかたぐん)にあった旧町名(潮来町(まち))。現在は潮来市の中央から東部を占める一地区。1889年(明治22)町制施行。1955年(昭和30)津知(つち)、延方(のぶかた)、大生原(おおうはら)の3村と合併。2001年(平成13)牛堀町(うしぼりまち)を編入して市制施行。JR鹿島(かしま)線と国道51号が通じ、東関東自動車道の潮来インターチェンジがある。『常陸国風土記(ひたちのくにふどき)』には板来(いたく)、中世には板久(いたく)と書かれ、近世になって潮来と改められた。中心地は常陸利根(ひたちとね)川に沿い、利根川の三角州にある低湿地で干拓地が多い。古代には海草、魚貝の産が多かったという。江戸時代は水戸藩領に属し、奥羽諸藩や常陸国の物資を利根川水運につなぐ中継港として栄え、仙台河岸(かし)、南部河岸の跡を残す。文人墨客の来遊も多く、水郷(すいごう)景勝地として知られていた。明治時代以後は霞ヶ浦(かすみがうら)・北浦水運の中心となり観光地化してきた。釣り、カモ猟のほか、アヤメ(ハナショウブ)の季節は、あやめ園、十二橋(香取(かとり)市加藤洲(かとうず))めぐりなど四季を通じて来遊する者が多い。鹿島臨海工業地域の発展により、住宅地、休養地としても発展している。米作が主で自動車部品工業がある。源頼朝(よりとも)の建立した長勝寺(ちょうしょうじ)には国指定重要文化財の梵鐘(ぼんしょう)や芭蕉(ばしょう)の句碑がある。

[櫻井明俊]

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普及版 字通 「潮来」の読み・字形・画数・意味

【潮来】ちよう(てう)らい

潮がさす。唐・杜牧〔桐江の隠者に寄す〕詩 去り來る、洲の春 山(ぬひとり)の如く、(しとね)の如し

字通「潮」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「潮来」の意味・わかりやすい解説

潮来
いたこ

茨城県南東部,利根川下流域の水郷にある地域。 1889年町制。 1955年津知 (つち) ,延方 (のぶかた) ,大生原 (おおうはら) の3村と合体。 2001年牛堀町と合体し,市制 (→潮来市 ) 。古代から鹿島,香取,国府 (石岡) へ通じる交通の要地。近世,水戸藩の飛地で,東北諸藩と江戸を結ぶ奥州航路と利根川,江戸川水運の中継港として栄えた。明治以後は水郷観光の中心として復活。アヤメ園,潮来十二橋めぐりなどが有名で,釣り,カモ猟なども盛ん。第2次世界大戦後,内浪逆浦 (うちなさかうら) を干拓し,水田が開かれたが,住宅団地に変容した。行方 (なめかた) 台地上の稲荷山公園からは,水郷の景勝を一望できる。水郷筑波国定公園に属する。 JR鹿島線,国道 51号線が通り,東関東自動車道と結ばれる。

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