漢書(読み)かんしょ(英語表記)Hàn shū

精選版 日本国語大辞典 「漢書」の意味・読み・例文・類語

かん‐しょ【漢書】

〘名〙 漢文で書かれた書物。中国の書物。漢籍。からぶみ。→かんじょ。〔改正増補和英語林集成(1886)〕

かんじょ【漢書】

中国の歴史書正史一つ。一〇〇巻。後漢の班固著。高祖から平帝までの二三一年間の史実紀伝体で記す。司馬遷の「史記」とともに中国の史書を代表する。前漢書

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デジタル大辞泉 「漢書」の意味・読み・例文・類語

かんじょ【漢書】

中国二十四史の一。前漢の歴史を紀伝体で記した書。80年ころ成立。後漢班固はんこが撰し、妹の班昭らが補った。本紀13・表10・志18・列伝79の全120巻。後世の史書の模範とされた。前漢書。西漢書。

から‐ぶみ【書】

中国の書物。漢文の書物。漢籍。かんしょ。
「うたてなど大和にはあらぬ―の跡を学ばぬ身となりにけん」〈新撰六帖・五〉

かん‐しょ【漢書】

漢文の書物。中国の書物。漢籍。

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改訂新版 世界大百科事典 「漢書」の意味・わかりやすい解説

漢書 (かんじょ)
Hàn shū

後漢の班固の著。漢の高祖から王莽(おうもう)の時代にいたる前の歴史をあつかう正史。太古から秦までの人物はその姓名を〈古今人表〉にまとめ,九等に評価づけている。本紀12巻,表8巻,志10巻,列伝70巻,合わせて100巻。本紀と列伝の一部には父の班彪はんぴよう)が《史記》の続編として書きついでいた《後伝》を用い,体例と史観も父を襲うところが多い。表と〈天文志〉は妹の班昭弟子の馬続が執筆したという。《漢書》は往々にして《史記》と比較され,《史記》のような自由な人間描写に乏しいと評されるが,断代史の形式を創始したこと,史伝の文体を確立したこと,刑法志,五行志地理志芸文志(げいもんし)を設けたことなど,後世の正史に及ぼした影響は大きく,《史記》とともに経書についで尊重された。しかも《史記》よりもむしろよく読まれたのであって,後漢末以来,唐の顔師古にいたるまで,《史記》にまさる注釈がつぎつぎに書きつがれた。
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百科事典マイペディア 「漢書」の意味・わかりやすい解説

漢書【かんじょ】

中国の正史の一つ。前漢の歴史を記す。後漢の班固の著だが,未完のまま死んだので,妹の班昭が完成。120巻。《史記》にならって紀伝体を用い,整然たる叙述によって後世の史書の範とされる。その〈地理志〉に初めて1世紀前後の日本(倭)のことが記述されている。
→関連項目顔師古諸子百家日本

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「漢書」の意味・わかりやすい解説

漢書
かんじょ

中国、前漢一代のことを記した歴史書。『前漢書』と同じ。後漢(ごかん)の扶風安陵(ふふうあんりょう)(陝西(せんせい)省咸陽(かんよう)市の東)の人、班固(はんこ)(32―92)の撰著(せんちょ)。清(しん)朝の考証(こうしょう)学者趙翼(ちょうよく)の言に「四人の手を経て、三、四〇年を閲(へ)て始めて完成した」とあるとおり、班固20余年の著作ではあるが、父の班彪(はんぴょう)が『史記』の続編として書いた『後伝(こうでん)』64編が基礎となっており、八つの年表と天文志の部分は、班固の死後、妹の班昭(はんしょう)と経学者馬続(ばしょく)の手で補われたものである。『史記』と同じく紀伝体の史書であるが、通史ではなく、王朝一代に限って叙述した断代史であり、この形式は、後の正史の模範とされて受け継がれた。武帝以前のことはおおむね『史記』によるが、随所に新しいくふうと儒家らしい独自の論述があり、古来『史記』との優劣を論じたものは多い。現行本は本紀13、表10、志18、列伝79の120巻。なお、地理志の「楽浪(らくろう)海中倭人(わじん)あり……」の一文は、日本に関する最古の記録である。

[尾形 勇]

『小竹武夫訳『漢書』(1979・筑摩書房)』

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「漢書」の解説

漢書
かんじょ

前漢の高祖劉邦(りゅうほう)から新の王莽(おうもう)まで(前206~後23)の230年間をおもに記した中国の正史。皇帝12代を記した帝紀12巻,諸侯・官名などを一覧にした表8巻,律暦・礼楽など制度を扱う志10巻,個人の事績を記す伝70巻の計100巻(のち細分して120巻)からなる。後漢の班固(はんこ)らの撰。班固の父班彪(はんひょう)が基礎的仕事を手がけ,班固の死後,8表と天文志は妹の班昭がうけつぎ,馬続(ばしょく)がこれを助けて完成させた。文章が古典的で,班固没後100年にみたぬ頃から音義が作られた。帝王が則るべき古典として,「史記」とともに周辺諸国にも大きな影響を及ぼす。巻28の地理志に倭(わ)の記事がみられる。注釈も多く書かれ,唐の顔師古の注が知られる。日本でも奈良~平安前期には「史記」よりも重宝された。中華書局刊。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「漢書」の意味・わかりやすい解説

漢書
かんじょ
Han-shu

中国,前漢一代の歴史を記した書物。正史の一つ。班固撰。帝紀 12,年表8,志 10,列伝 70編,120巻。班固の父の班彪 (はんひょう) は『史記』が武帝のなかばまでの歴史で終っているため,それ以後の歴史を記した『後伝』 65編を著わした。班固は父の遺志を継ぎ,これに武帝以前の歴史を加えて前漢一代および王莽 (おうもう) の滅亡にいたるまでの歴史を,20年余を費やして完成した。ただし,八表,天文志など未完の部分は,妹の班昭,馬続の手になるという。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「漢書」の解説

『漢書』(かんじょ)

中国の正史の一つ。後漢の班固(はんこ)の撰。100巻。82年頃成立。漢の高祖(劉邦(りゅうほう))から王莽(おうもう)までの230年間の歴史を記述する。『史記』に比べて儒教的色彩が強いが,整然たる叙述形式は後世の史書の範となる。

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旺文社世界史事典 三訂版 「漢書」の解説

漢書
かんじょ

後漢 (ごかん) の歴史家班固が著した,前漢(劉邦〜王莽)の正史100巻
82年ごろ成立。帝紀12巻,年表8巻,志10巻,列伝70巻よりなる紀伝体の書。班固は未完成のまま死んだので,妹の班昭が完結させた。『地理誌』には日本(倭)についてのはじめての記述がある。

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旺文社日本史事典 三訂版 「漢書」の解説

漢書
かんじょ

中国の前漢(前202〜後8)の正史
後漢の班固 (はんこ) (32〜92)の撰,120巻。巻28地理志に倭人の記事がある。1世紀ころの日本が小国に分立していた状態を記しており,これは日本に関する最古の史料。

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世界大百科事典(旧版)内の漢書の言及

【漢】より

… さて文化のもう一つの特色の儒教主義は,武帝のときに儒教が国教化されたことによってもたらされたものであるが,儒教が浸透する後漢時代に入って顕著となる。班固の著した前漢一代の歴史《漢書》はその典型である。そこでは班固は,《史記》にはじまる紀伝体を模倣しながら,歴史観においては司馬遷の客観かつ自由な立場を否定し,徹底した儒教主義と前漢王朝を賛美する立場を強くうち出した。…

【顔師古】より

…唐の太宗時代,王朝によって行われた文化事業,たとえば《五経正義》の定本づくりともいうべき五経本文の校定,《隋書》の撰述などに秘書監として参画。またその《漢書》注は後漢代以来の注釈の集大成であるとともに,祖父の顔之推,叔父の顔遊秦たちがきずいた家学の蓄積を継承する。そのほか《急就章》の注,文字学,音韻学に関するノート風の《匡謬正俗(きようびゆうせいぞく)》の著作がある。…

【中国文学】より

…人間の歴史と運命についての深い思索が全部をつらぬくが,対話の劇的構成にすぐれ,それによって人物の性格描写に成功した。《史記》が古代から作者の時代までの通史であるのに対して班固の《漢書》は前漢(西漢)一代の史実を同じく紀伝体でつづり,周到で簡潔な記述は,《史記》と並んで歴史文学の模範となった。こののちの各王朝の〈正史〉はすべて紀伝体で書かれ,その編集に加わることは文人学者の名誉であった。…

【班固】より

…中国,後漢の学者・文人。《漢書》の著者。字は孟堅。…

【班彪】より

…王莽(おうもう)末期の動乱時代に甘粛省の天水地方に拠った隗囂(かいごう)に身をよせたとき,《王命論》を著して隗囂の天下統一の野望に水をさした。後漢王朝が創業されると,《史記》の体例と史観を批判しつつその続編となるべき《後伝》の執筆に専念,本紀と列伝から構成された《後伝》は班固の《漢書》にとりこまれた。【吉川 忠夫】。…

※「漢書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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