精選版 日本国語大辞典 「渋江抽斎」の意味・読み・例文・類語
しぶえ‐ちゅうさい【渋江抽斎】
しぶえちゅうさい しぶえチウサイ【渋江抽斎】
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森鷗外の史伝。1916年(大正5)に《東京日日新聞》《大阪毎日新聞》に連載。津軽藩の侍医で,考証学者としても知られた渋江抽斎(道純,1805-58)の伝記。医にして文業を遺し,幕藩体制の内部を自在に生きた抽斎の生涯を,鷗外は自己の経歴と重ねながら共感と憧憬をこめて描く。資料の大部分は抽斎の三男保の提供したものだが,伝記の空白を埋める調査・考証の過程を伝と併行して描くという史伝の新しい領域を開いている。漢文脈を基調とする文体も格調が高く,蒼古として淀むところがない。事実尊重の態度で終始するが,小説的潤色をほどこした個所もあり,妻五百の像などに生彩を添えた。鷗外の関心は親戚,子孫に及び,記述は抽斎の没後57年まで続く。
執筆者:三好 行雄
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