日本大百科全書(ニッポニカ) 「浮島(池沼)」の意味・わかりやすい解説
浮島(池沼)
うきしま
浅い池沼中に浮動する島で、高層湿原中の池沼や、老衰期の浅い富栄養湖などにみられる。浮島の形態は大小さまざまであるが、一般に湖底からの泥土や植物の枯死体で形成された泥炭などを基盤とし、表層は湿生植物で覆われている。よく発達した浮島には、大木の生育する巨大なものがあるといわれる。浮島の成因には、単に湖岸の一部が離れて池中に浮くものと、池底の泥炭が浮上して生ずるものとがある。また、湿原下の泥炭の部分が分解し、夏季、ガスを発生して底質の一部とともに上昇し、冬にふたたび沈むという周期的な浮島もある。山形県朝日町の浮島大沼(うきしまおおぬま)にある浮島は、湖流の複雑な動きに対応して動くといわれる。尾瀬ヶ原湿原の池塘(ちとう)には多数の浮島がみられ、イボミズゴケやヒメシャクナゲなど高層湿原植物で覆われている。また鹿児島県薩摩川内(さつませんだい)市祁答院(けどういん)町の藺牟田池(いむたいけ)にはヨシ、アンペライ、ヒトモトススキなどの低層湿原が発達し、国の天然記念物に指定されているが、増水期には湿原の一部が泥炭層から分離して池の面に浮かび大小の浮島となる。
[奥田重俊]