浮免(読み)うきめん

精選版 日本国語大辞典 「浮免」の意味・読み・例文・類語

うき‐めん【浮免】

〘名〙
荘園制における免田(めんでん)一種。一定面積だけを決めておいてその場所を指定せず、年によって変わる免田。浮き免田。
※和泉久米田寺文書‐宝治二年(1248)一二月五日・関東下知状「次在庁勘状事、本免与浮免不書顕、其足所掠申也云々」
江戸時代薩摩藩郷士に給した田の一種。実体武士が開墾し、自作自収する土地であった。浮き免地。

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改訂新版 世界大百科事典 「浮免」の意味・わかりやすい解説

浮免 (うきめん)

10世紀以降,国衙領や荘園における免田の一形態。官物(かんもつ)(年貢)や雑役(ぞうえき)が免除される下地が固定せず浮動するもの。10世紀になると国衙はそれまでの正税にかえて公民の負担する雑役を寺社等に対する諸給付にあてるようになる。この雑役を免除された旧地を雑役免田というが,その田地は当初特定地に固定しておらず,年ごとに郡郷内を移動した。その際,損田(天災により収穫が減少した田)を避けてその年々の得田が指定されるのが原則であった。このような初期の浮免の例としては,東大寺領の大仏供白米免田・御油免田・香菜免田,興福寺領の進官免田などが著名であるが,これらの大和国内の諸免田では11世紀前半以降しだいに田地の固定化が進行する。この固定化した形態を浮免に対し定免(じようめん)という。鎌倉期以降でも地頭・下司などの荘官に給分として与えられる雑役免田が浮免の形をとることがあり,〈雑免者浮免也,下地不定之間〉と見える高野山領備後国大田荘の例がよく知られている。
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百科事典マイペディア 「浮免」の意味・わかりやすい解説

浮免【うきめん】

国衙(こくが)領や荘園における免田の一形態。国衙が正税に代えて寺社などに諸給付として雑役を与えた雑役免田は,一定の収穫を確保するため,面積だけを定め,下地は損(そん)田(天災により収穫が減少した田)を避けて得(とく)田から指定された。このように下地が浮動(不定)の免田をいう。11世紀に耕地の安定化に伴い固定(定免)化が進行するが,中世荘園領主から地頭荘官に給分として与えられる雑役免田が浮免の形をとることがあった。→国衙・国府
→関連項目

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「浮免」の意味・わかりやすい解説

浮免
うきめん

10世紀以降の土地制度の一つである免田(めんでん)の一形態。浮免田ともいう。年貢、公事雑役(くじぞうやく)のうち後者が免除される雑役免田に多く、面積は一定であるがその坪付(つぼつけ)は固定せず、年によって場所が浮動する免田をいう。したがって浮免田の受給者(国衙(こくが)などにかわって、免除された分の雑役などを取得する権利を与えられた者)は国衙などを介して得分を取得した。11世紀以降坪付の固定化(定免化)が進み、雑役免田を中心とした荘園(しょうえん)が成立する。しかし、中世に入っても荘官や地頭の給田として残り、作人不定の場合も浮免ということがあった。

[木村茂光]

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