正法眼蔵随聞記(読み)ショウボウゲンゾウズイモンキ

デジタル大辞泉 「正法眼蔵随聞記」の意味・読み・例文・類語

しょうぼうげんぞうずいもんき〔シヤウボフゲンザウズイモンキ〕【正法眼蔵随聞記】

鎌倉時代法語集。6巻。道元の法語を、弟子懐奘えじょう記録した書。嘉禎年間(1235~1238)の成立

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精選版 日本国語大辞典 「正法眼蔵随聞記」の意味・読み・例文・類語

しょうぼうげんぞうずいもんき シャウボフゲンザウズイモンキ【正法眼蔵随聞記】

興聖寺時代の道元の法語を弟子の懐奘(えじょう)が集録したもの。六巻。嘉禎年間(一二三五‐三八)の成立。宗教生活のあり方がわかりやすく説かれる。

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改訂新版 世界大百科事典 「正法眼蔵随聞記」の意味・わかりやすい解説

正法眼蔵随聞記 (しょうぼうげんぞうずいもんき)

道元が嘉禎年間(1235-38),日常その門下に語った修行の心がまえを,弟子の懐奘(えじよう)(1198-1280)が克明に記録したもの。6冊の書冊にまとめられたのは懐奘没後のことである。嘉禎1年は,道元が京都郊外の深草に興聖寺を建立して2年目にあたり,懐奘が道元門下に加わったのはその前年である。嘉禎年間とはまさに初期道元僧団確立の時期にあたり,道元は種々の角度からあるべき修行僧の姿を説き明かしている。それをひとことで言えば,清貧の中で,師の言行にしたがい,修行者が一致団結して悟りを求めよ,ということである。とくに道元は,修行者の志気をかきたてることに重点を置いて語っている。当時の仏教界では,道元禅は特異な存在であり,その修行方法にも厳しいものがあったので,弟子たちは道元の教えと行動についていけないものを感じることもあった。そのような弟子たちの悩みに答えて,道元は正しい仏教のあり方を説いたのである。その意味で本書は,道元禅の入門書であるとともに,初期道元僧団や当時の仏教界のあり方がうかがえるかっこうの史料といえる。しかし本書は,江戸期になるまでほとんどその存在を知られていなかった。1651年(慶安4)にはじめて板本として世に出たが,そのときは,だれの書ともわからないが法理がすぐれているので版行したとさえ言われた。その後,面山瑞方(1683-1769)が1758年(宝暦8)に序を書き,70年(明和7)になって刊行されたいわゆる《明和本随聞記》によって,懐奘の手になる嘉禎年間の記録であることが明らかになった。けれども,長らく中世における本書の伝承がわからないままであったが,1942年に愛知県長円寺において,いわゆる《長円寺本随聞記》が発見され,ここにはじめて室町期の《随聞記》の古体を知るにいたった。長円寺本は1644年(正保1)の書写であるが,その原本は1380年(天授6・康暦2)に福井県宝慶寺で書写されたものである。本書は,堂奥に達した弟子との問答を記した祖録とする説もあるが,一般には道元禅の入門書とされ,研究者の間ではやや軽視するむきもあったが,その史料的価値が再評価されつつある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「正法眼蔵随聞記」の意味・わかりやすい解説

正法眼蔵随聞記
しょうぼうげんぞうずいもんき

鎌倉時代の仏書。6巻。日本曹洞(そうとう)宗の開祖道元(どうげん)が、嘉禎(かてい)年間(1235~38)、山城(やましろ)深草(京都市伏見(ふしみ)区)の観音導利(かんのんどうり)興聖宝林寺(こうしょうほうりんじ)にて、門下の僧俗に対して日常行った説示を、弟子の孤雲懐奘(こうんえじょう)が聞くに随(したが)って筆録したものをもとに編集された。体系的な書ではないが、仏道を学ぶ者の心得が細かに平易な文体で説かれている。本書には慶安(けいあん)刊本系と、面山瑞方(めんざんずいほう)校訂の明和(めいわ)刊本(流布本)系と長円寺本系とがあり、巻の配列、本文段章の有無などの相違があるが、近時、長円寺本系が古形を伝えているといわれている。

[伊藤秀憲]

『東隆眞編著『五写本影印 正法眼蔵随聞記』(1979・圭文社)』『西尾実他校注『日本古典文学大系81 正法眼蔵 正法眼蔵随聞記』(1965・岩波書店)』『水野弥穂子訳『正法眼蔵随聞記』(1963・筑摩叢書)』『安良岡康作校註・訳『日本古典文学全集27 正法眼蔵随聞記』(1971・小学館)』

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「正法眼蔵随聞記」の解説

正法眼蔵随聞記
しょうぼうげんぞうずいもんき

道元(どうげん)が宋から帰朝後の初開道場である京都深草の興聖寺で,嘉禎年間に門下に語った修行の用心覚悟を,高弟孤雲懐奘(こうんえじょう)が聞き書きしたもの。6巻。懐奘の没後に編纂された。大安寺本ほかの古写本系と1651年(慶安4)刊本以下の流布本系があり,巻序・字句に異同がある。「岩波文庫」「日本古典文学大系」所収。

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旺文社日本史事典 三訂版 「正法眼蔵随聞記」の解説

正法眼蔵随聞記
しょうぼうげんぞうずいもんき

鎌倉中期,曹洞宗開祖道元の語る教えをその弟子懐弉 (えじよう) が筆録した書
6巻。道元が宋から帰朝し山城の興聖寺に住した1234〜38年ころ,彼が語った法語を筆録したもので,曹洞宗最古の記録。仮名書きで平易に書かれ,道元の思想・人物を知るための絶好の書である。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「正法眼蔵随聞記」の意味・わかりやすい解説

正法眼蔵随聞記
しょうぼうげんぞうずいもんき

道元の侍者,懐弉 (えじょう。 1198~1280) の編。6巻。道元の法話を,懐弉が聞いたとおりに平易な文章で筆記したもので,理解しやすく,道元自身の姿をいきいきと浮彫りにしている。

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世界大百科事典(旧版)内の正法眼蔵随聞記の言及

【しゃっくり】より

…この書には,トウガラシの粉をうどん粉に丸く包んで飲むというやや刺激的な方法もある。また,《正法眼蔵随聞記》には,病気は気の持ちようだから仏道にいそしめば病も起こらないという例として,しゃっくりをしている人につらいことをいえば,言い訳をしようと本気になるのにまぎれて止まると述べられている。日常多くみるのは驚愕,憤怒などの激しい情動や急ぎの食事などの際に起こる一過性の生理的なしゃっくりだから,横隔膜を強く刺激するくしゃみや特殊な嚥下には効果があると思われるし,その他のまじないも効いたとされることがあることになる。…

※「正法眼蔵随聞記」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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