格付け会社(読み)かくづけがいしゃ(英語表記)rating firm

翻訳|rating firm

日本大百科全書(ニッポニカ) 「格付け会社」の意味・わかりやすい解説

格付け会社
かくづけがいしゃ
rating firm
rating agency
credit rating agency

国や自治体、企業、金融機関などが発行した債券や金融商品などについて、元本償還利払いの能力を評価する会社。格付け会社の複数のアナリストが財政・財務状況、収益力、国際情勢、業界動向、経営方針などを調査し、確実性に応じてアルファベットとプラスマイナスの記号やアルファベットと数字の組み合わせで表したランキングを投資家に知らせる。現時点の償還・利払い能力を表す信用格付けのほか、中長期的な見通しを示す「アウトルック」や短期的な「ウォッチ」を発表する格付け会社も多い。格付けには企業などの依頼に基づいて有料で格付けする「依頼格付け」と、依頼がなくとも国債などを独自に格付けする「勝手格付け」がある。投資家にとって、こうした格付けは、投資の際のリスクを知る一定の目安になるとされる。

 1909年、アメリカの格付け会社、ムーディーズの創立者が鉄道会社の債券を格付けしたのが始まりとされる。その後、1929年の世界恐慌で、債務不履行に陥る企業が多かったため、企業の信用情報としての格付けサービスが定着した。格付け会社は、ムーディーズのほか、アメリカのスタンダート・アンド・プアーズ(S&P)、欧米系のフィッチ・レーティングスなどが有名で、日本にはこの3社の日本法人のほか、日本格付研究所(JCR)や格付投資情報センター(R&I)などがある。

 2008年の世界金融危機のきっかけとなったサブプライムローン関連商品に対し、格付け会社が不当に高い格付けを与えていたとして、アメリカの司法省はS&Pを提訴した。これ以降、2010年にヨーロッパ連合EU)が格付け会社の登録を義務づけるなど、世界各国で規制する動きが広がっている。日本でも格付け会社の登録制と金融庁による検査・監督が始まり、2012年(平成24)には格付け会社として初めて、S&P日本法人に業務改善命令が出た。金融庁は甘い格付けや誤った格付け情報の開示を防ぐため、関係法令改正の検討を始めた。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「格付け会社」の意味・わかりやすい解説

格付け会社【かくづけかいしゃ】

債権の元本・利息を,債権発行者(国家,企業,自治体)が償還まで計画どおり支払うことができる能力を保持しているかどうか評価する会社。格付け機関ともいう。発行者の信用度を財務分析,業界分析,経済動向などから多角的,総合的に判断し,〈AAA〉〈Aaa〉などの記号で表示する。債権のみならず,発行者そのものを評価する場合も多く,対象範囲も資産証券化やプロジェクト・ファイナンス,さらには大学などの諸機関にまで拡がっている。グローバル化にともない国債金融市場が拡大している現状では,2007年の世界金融危機や,2010年の欧州ソブリンリスクのように,格付け会社の持つ影響力は各国の経済のみならず政治動向にも大きな意味を持つことになる。日本の金融庁は指定格付け機関として,ムーディーズSFジャパン,スタンダード・アンド・プアーズ,フィッチ・レーティングスなどの6機関を指定している。
→関連項目格付け機関

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android