曹禺(読み)ソウグウ

デジタル大辞泉 「曹禺」の意味・読み・例文・類語

そう‐ぐう〔サウ‐〕【曹禺】

[1910~1996]中国劇作家本名は万家宝。湖北省の人。天津生まれ。清華大学在学中の1934年、中国近代劇史上画期的な作品雷雨」を発表し、一躍文壇に登場。のち、「日出」「北京人」などを発表。ツァオ=ユィ。

ツァオ‐ユィ【曹禺】

そうぐう(曹禺)

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「曹禺」の意味・わかりやすい解説

曹禺
そうぐう / ツァオユー
(1910―1996)

中国の劇作家。天津(てんしん)生まれ、湖北省潜江(せんこう)県出身。本名万家宝。1933年清華大学西洋文学科卒業。南開中学時代からアマチュアの南開新劇団に参加。南開、清華両大学時代にシェークスピアイプセンチェーホフゴーリキー、オニールらの戯曲を読み影響を受けた。処女作『雷雨』(1933)は複雑なプロット含蓄に富み洗練され個性化された台詞(せりふ)によって、中国新劇界に影響を与えた。ほかに『日の出』(1935)、『北京人(ペキンじん)』(1941)、『王昭君』(1979)などがあり、『雷雨』は1957年(昭和32)日本、59年ソ連、63年アルバニアで上演され、日本ではさらに『日の出』『原野』『蛻変(ぜいへん)』『明るい空』が民芸、稲の会等により上演された。中華人民共和国成立後は北京人民芸術劇院長、中国戯劇家協会主席を務め、中国新劇の充実発展に尽くした。『曹禺全集・7巻』が出版されている(1996・河北省花山文芸出版社)。「曹禺戯劇文学奨」が設けられており、湖北省潜江市には「曹禺陵園」がある。

[中野淳子]

『松枝茂夫訳『中国現代文学選集6 老舎・曹禺篇』(1962・平凡社)』『小野忍著『現代の中国文学』(1958・毎日新聞社)』『黎波著『中国の名著』(1961・勁草書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「曹禺」の意味・わかりやすい解説

曹禺 (そうぐう)
Cáo Yú
生没年:1910-96

中国,現代の劇作家。天津生れ。本名万家宝。幼少時から文学,戯曲を愛好し,南開中学時代には劇団にも参加した。清華大学ではギリシア悲劇など西欧古典戯曲を研究。在学中に創作した《雷雨》(1933)によって劇壇から認められ,つづく《日出》《原野》等の諸作品によって中国近代劇を確立した。その周到な劇的構成と精錬された詩的対話は,他の追随をゆるさない。最新作は78年の歴史劇《王昭君》。訳業には《ロミオとジュリエット》などがある。現在は中国戯劇家協会主席。46年にはアメリカ国務省の招きで渡米するなど国際的にも評価が高い。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「曹禺」の意味・わかりやすい解説

曹禺
そうぐう
Cao Yu

[生]宣統2(1910).9.24.
[没]1996.12.13. 北京
中国の劇作家。湖北省潜江県の人。本名,万家宝。清華大学でギリシア悲劇を専攻。 1934年発表の『雷雨』で一躍天才児と騒がれ,次いで『日出』 (1935) ,『原野』 (37) で中国における近代劇創始者の立場を確立した。抗日戦争勃発後は全国戯劇界抗敵協会理事として演劇工作に従事,その間『蛻変』 (40) により民族的リアリズムの方向へ転換し,46年『橋』では民族資本の問題を扱った。 52年から工場に派遣され自己改造に努め,『明るい空』 (54) を発表。のち中国戯劇協会主席となり,第五期全国人民代表大会常任委員,北京人民芸術劇院院長,中国文学芸術界連合会主席などを歴任。ほかに『北京人』 (40) ,シナリオ『艶陽天』 (47) などがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「曹禺」の意味・わかりやすい解説

曹禺【そうぐう】

現代中国の劇作家。本名万家宝。天津生れ。1934年処女作《雷雨》を発表,絶賛された。1936年《日の出》によって中国劇壇の第一人者となる。1940年《蛻(ぜい)変》,1942年巴金の《家》を劇化。1946年渡米,国共内戦中は香港にのがれ,建国後,帰国した。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内の曹禺の言及

【中国文学】より

…しかし,こうした左翼文学運動には党員のセクト的傾向が終始つきまとい,いわゆる〈自由人〉や〈第三種人〉を標榜するリベラルな文学者をおしなべて〈敵〉として攻撃・排除したことで,みずから戦線を狭くしていったことも認めなければならない。 この時期はまた,茅盾(ぼうじゆん),老舎,巴金,丁玲,曹禺など,のちの中国文学を担う文学者たちが,つぎつぎと世に出た時代であった。なかでも茅盾《子夜》(1931),巴金《家》(1930),李劼人(りかつじん)《死水微瀾》,老舎《駱駝の祥子》(1937)などは,中国文学が世界に通用する本格的ロマンを持ち始めたことを示した。…

【雷雨】より

…中国の新劇作品。曹禺の処女作。1934年《文学季刊》に発表された。…

※「曹禺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android