昇天(読み)ショウテン

デジタル大辞泉 「昇天」の意味・読み・例文・類語

しょう‐てん【昇天】

[名](スル)
天高くのぼること。「旭日きょくじつ昇天の勢い」
キリスト教で、イエス=キリストが復活後40日目に天にのぼったこと。転じて、人が死んでその魂が天にのぼること。「安らかに昇天する」
[類語](2死ぬ永逝死亡死去死没長逝永眠往生逝去他界物故絶息絶命大往生お陀仏死する辞世成仏崩御薨去卒去瞑目落命急逝夭折夭逝亡くなる没する果てる眠るめいするたおれる事切れる身罷みまか先立つ旅立つ急死する頓死とんしする横死する憤死する息を引き取る冷たくなるえなくなる世を去る帰らぬ人となる不帰の客となる死出の旅に出る亡き数に入る鬼籍に入る幽明さかいことにする黄泉こうせんの客となる命を落とす人死に物化まかくたばる絶え入る消え入るはかなくなる絶え果てる空しくなる仏になる朽ち果てる失命夭死臨終ぽっくりころり突然死即死

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精選版 日本国語大辞典 「昇天」の意味・読み・例文・類語

しょう‐てん【昇天】

〘名〙
① 天にのぼること。上天。
田氏家集(892頃)下・仲秋釈奠聴講周易賦従龍「蟠龍未得昇天使、空望遠山一片雲」
※百学連環(1870‐71頃)〈西周〉二「磔殺せらるるの翌日其死骸は Ascension (昇天)せりと言ふ」 〔後漢書‐虞延伝〕
② 上にのぼること。
滑稽本・八笑人(1820‐49)四「マヅしばらく陶器類を持って、昇天(ショウテン)することだ。〈略〉みなみなそれぞれに酒道具を持て二階へ上る」
③ 死んで魂が天にのぼること。死ぬこと。
百鬼園随筆(1933)〈内田百風呂敷包「私の方でもろもろの包を残して昇天するばかりである」

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改訂新版 世界大百科事典 「昇天」の意味・わかりやすい解説

昇天 (しょうてん)
Ascension
Himmelfahrt[ドイツ]

キリストの昇天Ascension of Christ〉をいう。復活後のキリストは数回の〈出現〉ののち,使徒たちの見ている前で天にあげられ神の右に座したとされる(《ルカによる福音書》24:50~51,《マルコによる福音書》16:19,《使徒行伝》1:9~11)。その際には,白い衣を着た2人の人が使徒たちの側に立って,キリストは〈天に上って行かれるのをあなたがたが見たのと同じ有様で,またおいでになるであろう〉(《使徒行伝》1:11)と告げる。昇天はキリスト再臨の告知を含意する。

 なお,復活祭後40日目(木曜日にあたる)を昇天日Ascension Day,Holy Thursdayと呼び,ローマ・カトリック教会ではキリストの昇天を祝う。また昇天日前の3日間を昇天前祈禱日Rogation Daysという。聖母マリアの昇天は〈聖母被昇天Assumption of the Virgin〉と呼び,その祝日は8月15日。イスラムの預言者ムハンマドの昇天については〈ミーラージュ〉の項目を参照されたい。

東方美術ではつねに,大光輪に包まれたキリストが天使たちによって天に持ち上げられる,という定式で表現された(シリア語《ラブラの福音書》挿絵,586ころ)。西方ヨーロッパの美術ではより自由な異形(バリアント)が生じ,最も早い例では,キリストは雲から出ている神の手または天使により,オリーブ山Mount of Olivesの頂から天に持ち上げられる,という象徴的表現をとっている(5世紀初めの象牙二連板)。14世紀ジョットのフレスコ画パドバ,アレーナ礼拝堂)では,自力で昇天するキリストは,旧約時代の義人たちを従えて側面から見た姿で表現されている。その下では聖母と使徒たちが,キリスト再臨の予告を伝える2人の天使の声に耳を傾けている。ときにはキリストの左右にも天使たちが飛翔する。キリストは全身像のみでなく,とくに後期ゴシック,ルネサンスの木版画(デューラーなど)では雲間から突き出た足のみが部分的に示され,それとともにオリーブ山の頂に残されたとされる二つの足跡が強調されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「昇天」の意味・わかりやすい解説

昇天
しょうてん
Ascention

キリスト教では、肉体の死を経ることなく天に昇ることをいい、とくにイエス・キリストの昇天をさす。昇天の記事は『旧約聖書』にも(エノク、エリヤなど)みられるが、『新約聖書』に著されたイエスの昇天は、原始教会以来の重要な教義となっている。それによると(「マルコ伝福音書(ふくいんしょ)」16章19、「使徒行伝」1章9~11など)、イエスは復活後40日目に、最後の説教をしたのち、弟子たちの見ている前で「天に挙げられ、神の右に坐(ざ)した」。これは、低きものとして卑しめられ死したイエスが復活して全世界の支配者という高き位置についたことを意味し、さらにイエスを信ずる人々もまた天に入れられるであろうことへの保証ともなっている。なお、カトリック教会では、聖母マリアの被昇天Assumptionの教義を有する。

[鶴岡賀雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「昇天」の意味・わかりやすい解説

昇天
しょうてん
Ascensio Christi

キリスト教の教義の一つ。『ルカによる福音書』 (24・51) および『使徒行伝』 (1・9) によれば,キリストは復活後,弟子たちの前に現れ,40日後彼らの面前で天にのぼったという。また『ヨハネによる福音書』にも昇天への言及があり (6・62,20・17) ,このキリストは,さらに昇天後栄光に満ちて聖父の右に坐したと信じられ,信仰個条として定着した。この信仰の神学的意味は,キリストが復活後父なる神から天と地に対する完全なる支配権を受け,神の栄光のうちにあるということであり,復活と昇天とは2つの出来事に分れるのではなく,むしろキリストの栄光化として1つになっていると解される。昇天祭は4世紀にさかのぼるキリスト教会の大祭日の一つで,復活祭後 40日目の木曜日に祝われる。

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普及版 字通 「昇天」の読み・字形・画数・意味

【昇天】しようてん

天にのぼる。〔神仙伝、一、白石生〕彭の時に至り、已に二千餘なり。肯て昇天のを修めず。但だ不死を取るのみ。

字通「昇」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の昇天の言及

【最後の審判】より

…この4者がその後の〈審判図〉の基本要素で,主として《マタイによる福音書》の記述によっている(19:28,24:29~31,25:31以下)。ところで,この図の上3段は〈キリスト昇天〉図にも共通で,《使徒行伝》1章11節に見られる天使の言葉によって,昇天のキリストは審判のキリストを予見せしむるというから,両者に密接な関係があるのは当然である。昇天図の下辺に,よみがえった人々(《コリント人への第1の手紙》15:52)も小さく付加して,この原始的な審判図は形成されたといえる。…

※「昇天」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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