日露漁業交渉(読み)にちろぎょぎょうこうしょう

百科事典マイペディア 「日露漁業交渉」の意味・わかりやすい解説

日露漁業交渉【にちろぎょぎょうこうしょう】

北西太平洋での漁船操業をめぐり,日本・ロシア(1991年12月まではソ連)間でさまざまな取決めがなされてきた。1956年にはソ連との間で日ソ漁業条約締結されたが,1977年,ソ連は200カイリ水域を設定したのに伴いこれを破棄し,同年,新たに日ソ漁業暫定協定が発効した。これによって日本漁船のソ連200カイリ水域内での操業は厳しい制限を受けることになった。しかし,1984年には日ソ地先沖合漁業協定が締結され,両国の200カイリ水域内での相互入漁が行われている。同協定に基づいて設置された日露漁業委員会において漁獲割当てなどの入漁条件を協議しており,1998年分の相互入漁の漁獲枠は9万5000t,日本の有償分は1万1000t,4億8000万円であった。 ソ連200カイリ水域外のサケ・マス漁業に関しては,1982年に採択された国連海洋法条約(1994年発効)の母川国主義にのっとって1985年,日ソ漁業協力協定が締結された。サケ・マスが産卵のために遡上(そじょう)する川(母川)を有する沿岸国は,200カイリ水域外の公海でもサケ・マスの管理権が認められるとする国連海洋法条約に基づき,ソ連は,自国領土の川を母川とするサケ・マスについて日本の200カイリ水域内で日本漁船が漁獲する場合の漁獲量を制限しており,日露漁業合同委員会(日露サケ・マス交渉)で協議されている。 1992年に米国・カナダを加えた4国間で締結された北太平洋サケ・マス保存条約の締結によって,北太平洋公海でのサケ・マスの沖取りが全面的に禁止された。加えて米国・カナダによる両国200カイリ水域内での日本のサケ・マス漁業禁止は日本の漁業に大きな打撃を与えたが,上記の日ソ漁業協力協定に基づく操業が現在も続けられている。また最近では,カニタラエビなどの漁獲と販売を日本・ロシアの合弁で行ったり,民間ベースでの共同事業や洋上買上げなどが活発に行われている。→漁業水域水産物貿易北洋漁業
→関連項目高碕達之助

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