播性(読み)まきせい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「播性」の意味・わかりやすい解説

播性
まきせい

冬作物は秋に播種(はしゅ)して、幼植物時代に冬の低温にあうことによって花芽をつくり、春になって温度が上がり、日が長くなると開花する。同一種の作物でも、花芽をつけるために必要な低温期間の長さは品種によって異なり、たとえばコムギでは長期間を要するものから、低温をまったく必要としないものまである。これを播性といい、必要低温の長さによって七群の播性に分類されている。前者(もっとも長期間を要するものをⅦとし、以下Ⅲまで)は秋に播(ま)く必要があるので秋播性といい、この性質の品種を秋播コムギ(冬コムギ)とよぶ。後者(Ⅱ、I)は春暖くなってから播いても花芽ができるので春播性といい、春播コムギ(春コムギ)という。春播コムギはもし秋に播くと冬の寒さのくる前に花芽をつくるので、冬に穂が枯死する。そこで春播コムギは、冬の寒さが弱い暖地、あるいは秋播コムギも栽培できない極寒地で春になってから播く。中間地では冬の長い地域ほど秋播性程度の高い(Ⅶをもっとも高いとする)品種が作付けされる。

 夏作物でも、たとえばダイズは花芽をつけるのに高温日長短日)が影響するが、品種により反応が異なり、春播性(夏大豆といい、高温で花芽がつく)と夏播性(秋大豆といい、短日で花芽がつく)に大別される。このように播性は、品種の地理的分布や、栽培時期を決める、農業上重要な特性である。

[星川清親]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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