接合(読み)せつごう(英語表記)conjugation

翻訳|conjugation

精選版 日本国語大辞典 「接合」の意味・読み・例文・類語

せつ‐ごう ‥ガフ【接合】

〘名〙
① つぎあわせること。つなげあうこと。
※植物小学(1881)〈松村任三訳〉一〇「葉は羽状にして托葉葉柄に接合し花は白色を常とす」 〔阮籍‐通易論〕
原生動物繊毛虫類にみられる特殊な生殖方法。二個体が体表の一部で融着し、互いに核の一半を交換したのち分離して二個体となること。接合後の核質は二個体に由来するので受精に相当する。ゾウリムシがその典型
③ 植物、特に菌類・藻類における生殖細胞または生殖器官が合体すること。

はぎ‐あわ・せる ‥あはせる【接合】

〘他サ下一〙 はぎあは・す 〘他サ下二〙 布や板などを継ぎ合わせる。一つにつづりあわせる。はぎあわす。
激流(1963)〈高見順〉三「母の少女の頃の着物をはぎ合せて、こたつ蒲団に仕立てたのである」

はぎ‐あわ・す ‥あはす【接合】

[1] 〘他サ下二〙 ⇒はぎあわせる(接合)
[2] 〘他サ五(四)〙 =はぎあわせる(接合)

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デジタル大辞泉 「接合」の意味・読み・例文・類語

せつ‐ごう〔‐ガフ〕【接合】

[名](スル)
つなぎ合わせること。「鉄板を接合する」
原生動物の繊毛虫類などにみられる有性生殖の方法。2個体が接して、核分裂で生じていた2個の小核のうち一つを交換し、分離する。
植物、特に菌類・藻類などで、生殖細胞または生殖器官が合体すること。その後に核が合一し、新個体を形成する。
[類語]複合結合融合合成ハイブリッド

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改訂新版 世界大百科事典 「接合」の意味・わかりやすい解説

接合 (せつごう)
conjugation

原生動物の繊毛虫類にみられる生殖法の一つ。2個体が接着し細胞融合を起こし,核物質を相互に交換した後,分離して2個体に復帰する。配偶子間の合体copulationでは2細胞が1個体を形成し,この点で接合と異なる。接合は任意の2個体間に起こるのではなく,接合型の異なる個体間で特異的な接着が起こることによって始まる。ゲノムの交換と混合が行われ,また接合型の分化が認められることからしばしば有性生殖に対比され,その原型と考える研究者が多い。ゾウリムシの接合現象はとりわけよく研究されており,接合型を決定する物質の純化も試みられている。ゾウリムシの接合は対数増殖期にある個体群では起こらず,栄養の欠乏のように環境要因が悪化して増殖の定常期に入った個体群で起こる。一般に接合には若返り効果があると考えられる。

 ゾウリムシは大核と小核を有するが,接合にあたっては,大核は消失し,小核が4個に分裂した後,その中の3個が消失して1個が残る。さらに残った1個が2個に分裂して,その中の1個が相互に交換され(移動核),他の1個はもとの個体内にとどまる(静止核)。交換後移動核と静止核は合体して新しい核(合核)を形成する。
執筆者:

植物では生殖細胞(配偶子)または生殖器官(配偶子囊)の合体を接合と呼ぶ。原生動物の場合と違って,接合によって生じるのは1細胞(接合子)である。大きさや形の等しい配偶子が合体する同形配偶子接合(クラミドモナスアオミドロなど)と,形は似ているが大きさの異なる配偶子が合体する異形配偶子接合(アオサ,アオノリ,ミルなど)とがある。接合藻類や鞭毛藻類では,生殖細胞に分化していない体細胞が性を異にする体細胞と接合する場合があり,これは体細胞接合と呼ばれる。接合過程の第1の特徴として,接合は相補的な1対の接合型の間で起こることが挙げられる。クラミドモナスでは,光学顕微鏡では区別できないが,微細構造レベルでは異なる二つのタイプの配偶子がみられ,鞭毛の近くにデスモソームに似た接合型構造mating type structure(MTS)があって葉緑体遺伝子を選択的に伝播(でんぱ)する配偶子は(+)型,(+)型配偶子より単純な微細構造をもつ配偶子は(-)型と定義される。アオミドロでは,接合子のできる側の配偶子は雌,それに進入するほうの配偶子は雄とされる。配偶子としての性的能力は環境の変化に応じて誘導され,クラミドモナスでは窒素源を除いた培養液に移すことによって簡単に配偶子を誘導できる。また,多くの真核生物では両タイプの細胞をいっしょにすると,性フェロモンが分泌され,それによって配偶子の分化が誘導される。接合には性的相補型の相手を認識する過程が存在し,その認識機構は細胞表層(鞭毛,繊毛,細胞壁)にそなわっている。クラミドモナスでは(+)と(-)の配偶子を混合すると,鞭毛どうしが互いに接着し,大きな凝集塊ができる。この凝集現象が細胞間の認識機構として重要であり,これは鞭毛表面の糖タンパク質間の相互作用によるとされている。凝集塊内で相補型間の組合せができると,前述のMTSから出るアクチン繊維でつまった管が(+)型配偶子から(-)型配偶子の方向に伸びる。次いで,両者の間で膜融合が起こり,その後,核や葉緑体がそれぞれ融合して接合子が形成される。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「接合」の意味・わかりやすい解説

接合
せつごう
conjugation

植物および菌類において,配偶子,配偶子嚢または体細胞が有性的に合体融合する現象。配偶子接合には,両配偶子が同型の場合と異型の場合とあり (どちらもクラミドモナスに例がある) ,配偶子を中に含んだままの配偶子嚢接合はカビなどに例が多く,体細胞接合はアオミドロなどの接合藻類に例をみる。動物の場合は,原生動物の繊毛虫類 (ゾウリムシ,ツリガネムシなど) にみられる有性生殖の一型をさし,2個体が核を交換後,また2個体に分れるもの。これに対し,2個体が融合して新しい1個体になってしまう場合を「合体」 copulationという。なお細菌でも接合の現象があり,遺伝物質 (DNA) を注入するほうを雄,受取るほうを雌と定義する。

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百科事典マイペディア 「接合」の意味・わかりやすい解説

接合【せつごう】

繊毛虫類,菌類,細菌類にみられる生殖様式。ゾウリムシやツリガネムシのものが最もよく研究されている。2個体が接着または融合し,核の一部を交換後,再び離れて2個体となる。これらの生物は分裂などで無性的に増殖することが普通だが,接合により初めて親と異なった遺伝子型を生じるので,有性生殖の原型と考えられる。
→関連項目生殖

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普及版 字通 「接合」の読み・字形・画数・意味

【接合】せつごう

連なる。

字通「接」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の接合の言及

【形質導入】より

…これによって集団内の遺伝的多様性を増すのであるが,単相世代だけしか持たない生物には遺伝的多様性を増すための別の方式がみられる。特に,細菌では接合形質転換,形質導入という三つの方式が明らかになっている。 形質導入というのは,ある細菌(供与体)の遺伝情報がファージを介して別の細菌(受容体)に伝えられ,そこで形質発現をする現象で,ツィンダーN.ZinderとレーダーバーグJ.Lederbergがサルモネラ菌の一種であるネズミチフス菌Salmonella typhimuriumにおいて初めて発見した(1952)。…

【原生動物】より

…無性生殖は体が縦,または横に分裂して2個体になるほか,出芽する場合もある。有性生殖では多細胞動物のように精子や卵をつくるのではなく,2個体が合一して1個体になる融合とか,2個体が一時的に相接して核の一部を交換し,再び離れていく接合が行われる。
[分類]
 原生動物門の系統的な分類は学派によって異なっていて,まだ一つの体系にまとまっていない。…

※「接合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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