おきて【掟】
① あらかじめ立てておいた心づもり。予定。計画。方針。
※源氏(1001‐14頃)帚木「親のおきてにたがへりと思ひ嘆きて」
② 処置。処分。さしず。命令。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「貧しくて、我が子の行くさきのをきてせずなりぬ」
③ 心の持ち方。
心構え。
思慮。こころおきて。こころばえ。また、才能。技術。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「この人も、年をかぞふるに十二ばかりにこそなるらめ。大きさ、をきてこそかしこくとも、人の世に経
(ふ)る
ありさま、限りあるものなれば」
④ 定め。運命。宿命。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「娘は
天道にまかせ奉る。天のをきてあらば、国母
(こくも)、
婦女ともなれ」
⑤ 公にきめられた
規定。法律。法度
(はっと)。
法制。
※
書紀(720)雄略二三年七月(前田本訓)「詔して、
賞罰(まつりごと)、支度
(オキテ)、事に巨
(おほきなる)と細
(ちひさき)と無く、並に
皇太子に付
(ゆだ)ねたまふ」
※北条泰時消息‐貞永元年(1232)九月一一日「これによりて京都の御沙汰、
律令のおきて聊もあらたまるべきにあらず候也」
⑥ 取りきめ。約束ごと。いましめ。内々のきまり。
※源氏(1001‐14頃)
椎本「生まれたる家の程、をきてのままにもてなしたらむなむ」
⑦ 物の形、
配置、方法などについてのきまった様式。
※源氏(1001‐14頃)帚木「けぢかき籬
(まがき)の
うちをば、その心しらひ、をきてなどをなん、上手はいといきほひことに、わろものは及ばぬ所多かめる」
※
物類称呼(1775)五「所の仕来
(しきたり)といふ詞のかはりに〈略〉大隅・薩摩にていかたと云、又掟
(ヲキテ)といふ」
おき・つ【掟】
〘他タ下二〙
① あらかじめ心に定める。予定する。計画する。
※源氏(1001‐14頃)
乙女「つぎつぎ伝はりつつ、へだたりゆかむほどの
行く先、いとうしろめたなきによりなむ、思ひ給へをきて侍る」
※源氏(1001‐14頃)明石「かくながら見捨て侍りなば、波の
なかにもまじりうせねとなんをきて侍る」
※
徒然草(1331頃)一〇八「人をおきてて、高き木に上せて、梢を切らせしに」
※宇津保(970‐999頃)蔵開下「みづしどころ、
大殿の具、いとよくしをきてたり」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「掟」の意味・読み・例文・類語
おきて【×掟】
《動詞「おき(掟)つ」の連用形から》
1 守るべきものとしてすでに定められている事柄。その社会の定め。決まり。また、法律。法度。「家の掟」「掟に背く」
2 かねてからの心づもり。計画。
「この二年ばかりぞかくてものし侍れど、親の―にたがへりと思ひ嘆きて」〈源・帚木〉
3 取りしきること。処置。処分。また、指図。命令。
「おのづから位などいふことも高くなり、身の―も心にかなひがたくなどして」〈源・夢浮橋〉
4 様式にかなったものの扱い方や配置のぐあい。
「筆の―すまぬ心地して、いたはり加へたる気色なり」〈源・梅枝〉
5 心のもち方。心構え。心ばせ。
「―広きうつはものには、幸ひもそれに従ひ、せばき心ある人は、さるべきにて」〈源・若菜下〉
[類語]規則・制度・約束・決まり・定め・規定・規程・条規・定則・規約・規準・規矩準縄・規律・ルール・コード・本則・総則・通則・細則・付則・概則
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掟
おきて
掟書(おきてがき)・置手とも。中世後期以降に盛んに用いられた成文法のこと。はじめに「掟」「定(さだめ)」などの語をおき,以下事書(ことがき)形式で規則を列挙し,「如件(くだんのごとし)」で結ぶのが典型的な様式である。村落などの集団内部の規律を定めた村掟・惣掟のほか,室町幕府の法令のうち,右の形式を備えた撰銭令(えりぜにれい)・徳政令(とくせいれい)関係,さらに戦国大名の制定法などを一括していう。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
世界大百科事典(旧版)内の掟の言及
【掟書】より
…公布された法度(はつと)書の一形式。中世後期より用いられたが,元来,みずからの心構え,取極め,しきたり,処置などの意義のある掟が,在地領主,土豪等が下剋上の結果,法制発布の立場になっても用いたため,普遍化して,順守すべき法令の意味を持つようになったと考えられる。初めに掟(掟事,掟旨),定,定申などの文言が記され,法令の個条が[事書]で記され,終りに違反者への警告の文言,年月日,取極めたもの一同の署判,奉行人の署判,あるいは絶対者の捺印,法令の対象となるものが充所に記されるのが一般的である。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」