手綱(読み)たづな

精選版 日本国語大辞典 「手綱」の意味・読み・例文・類語

た‐づな【手綱】

〘名〙
馬具の一つ。馬の轡(くつわ)左右に結びつけ、騎乗者が手にとって馬を操縦する綱。縄または布、組緒の類を用い、その質や染色により唐糸手綱、縄手綱、紺手綱、絞手綱などの名がある。くつわづら。たんな。
※宇津保(970‐999頃)菊の宴「馬をならべ、たつなをかはして物がたりをするついでに」
※大鏡(12C前)二「馬の手綱ひかへてあふぎたかくつかひてとほり給を」
② 転じて、勝手な行動をしないように注意して見張る気持をたとえていう。
※虞美人草(1907)〈夏目漱石〉一「『そこでクレオパトラがどうしました』と抑へた女は再び手綱(タヅナ)を緩める」
③ ふんどし。室町時代から江戸時代初めにかけて用いた語。犢鼻褌(とくびこん)。たんな。
曾我物語(南北朝頃)一「相撲は、これがはじめなれば、〈略〉あらくもはたらかば、たづなも腰もきれぬべし」
④ 月経帯のこと。昔は紙で手製の丁字帯を作って用いたが、これを「お馬」と俗称したところからいう。
※雑俳・柳多留‐六二(1812)「乗初めに駒の手綱を母伝授」
烏帽子を着けるとき、上に結ぶ鉢巻
源平盛衰記(14C前)三四「小袴に懸け直垂、烏帽子に手綱(タヅナ)うたせて」
※晩菊(1948)〈林芙美子〉「水色桃色のぼかしたたづななぞを身につけていた」
[補注]①について「永祿十一年節用集」には「手綱 タンナ」、「日葡辞書」には「Tanna(タンナ)。または、Tazzuna(タヅナ)ともいい、むしろその方がまさる。馬の手綱」とあり、「タンナ」ともいっていた。

たんな【手綱】

〘名〙 (「たづな」の変化した語)
※玉塵抄(1563)二二「かけづる馬をたんなぐつわでひっしめてをく」
② 馬の手綱状の長い布。すなわち、したおび。ふんどし。とうさぎ。ふどし。たな。〔黒本本節用集(室町)〕
東北地方で、長い布を目だけを出すように顔にまく被り物をいう。

た‐な【手綱】

〘名〙 (「たづな」の転じた「たんな」の撥音「ん」の無表記) =たんな(手綱)

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デジタル大辞泉 「手綱」の意味・読み・例文・類語

た‐づな【手綱】

馬具の一。くつわの左右に結びつけ、人が手に取って馬を操る綱。
人を動かし、また物事を処理する手加減。「家計手綱を握る」
手綱染め」の略。
烏帽子えぼしの上に締める鉢巻き。
「烏帽子に―打たせて」〈盛衰記・三四〉
ふんどし。まわし。室町時代から江戸時代の初めにかけて用いた語。
「相撲はこれがはじめなれば…―も腰も切れぬべし」〈曽我・一〉

たんな【綱】

《「たづな」の音変化》
馬の手綱。〈日葡
したおび。ふんどし。
「この子、ちりめんの―をして」〈仮・仁勢物語・上〉

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「手綱」の意味・わかりやすい解説

手綱
たづな
bridle

馬具の一種 (くつわ) の両端の引手に装着して馬を制御するための綱で,馬をつなぎ止めるための野繋索が添えられる。和鞍の手綱は長さ 2.5~3.5mの絹布や麻布を手綱染 (赤と白,紫と白などコントラストの強い2色に染め分けた同一間隔の太い縞模様) にしたものを4つ折りにして用いる。洋馬具の手綱は一般に皮製で,馬場馬術などに用いられる大勒 (たいろく) 用と,障害飛越や競馬などで用いられる小勒用とがある。

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世界大百科事典(旧版)内の手綱の言及

【ふんどし(褌)】より

…《延喜式》巻十四では,褌の字を〈したのはかま〉,袷褌を〈あわせのしたのはかま〉と訓じており,袴を意味していた。室町時代ころは,手綱(たづな)と呼び,江戸時代には,下帯(したおび)とも呼んでいる。〈ふんどし〉の語は,江戸時代の初めころからという。…

※「手綱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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