意趣(読み)いしゅ

精選版 日本国語大辞典 「意趣」の意味・読み・例文・類語

い‐しゅ【意趣】

〘名〙
① 心のむかうところ。意向。考え。仏教では仏の説法によって、平等意趣、別時意趣、別義意趣、補特伽羅(ふどがら)意楽意趣の四つを立てる。
今昔(1120頃か)六「能尊王〈略〉事の趣きを問ひ給ふ。聖人、意趣を具(つぶさ)に語り給ふ」 〔法華経‐方便品〕
② 言わんとすること。意味。
※敬説筆記(18C前)「格物致知の詳なること、敬の意趣、『或問』に於て詳に著し」
③ わけ。理由。事情。〔吾妻鏡‐四・文治元年(1185)五月二四日〕
※浄瑠璃・堀川波鼓(1706頃か)下「神妙に意趣をのべ物の見事に討たんずる」
④ 周囲の事情からやめられないこと。ゆきがかり。また、どうしてもやりとおそうとする気持意地
※金刀比羅本保元(1220頃か)下「大臣は此の世にても、随分意趣(イシュ)深かりし人なれば、苔の下迄さこそ思はるらめ」
⑤ 人を恨む心があること。恨みが心に積もること。また、その心。遺恨
江談抄(1111頃)二「貞信公与道明意趣歟」
読本椿説弓張月(1807‐11)後「父の意趣(イシュ)を遂(とげ)

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デジタル大辞泉 「意趣」の意味・読み・例文・類語

い‐しゅ【意趣】

恨みを含むこと。また、人を恨む気持ち。遺恨いこん。「意趣を晴らす」
心の向かうところ。意向。
「格調高雅、―卓逸」〈中島敦山月記
無理を通そうとすること。意地。
二人はわざと―に争ってから」〈有島生れ出づる悩み
理由。わけ。
「神妙に―を述べ、ものの見事に討たんずる」〈浄・堀川波鼓
意趣返し」に同じ。
「昨日の―に一番参ろか」〈浄・矢口渡
[類語]悪意悪気悪感情悪心邪気邪心出来心恨み怨恨えんこん怨嗟えんさ私怨しえん遺恨いこん怨念おんねん宿意宿怨しゅくえん宿恨積怨せきえん旧怨きゅうえんあだ憎しみ復讐心ふくしゅうしん逆恨み恨めしい

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普及版 字通 「意趣」の読み・字形・画数・意味

【意趣】いしゆ

思い。意向。〔宋書、胡藩伝〕桓玄趣常ならず。(つね)にを失へるに怏怏(あうあう)たり。

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