御神渡り(読み)オミワタリ

デジタル大辞泉 「御神渡り」の意味・読み・例文・類語

おみ‐わたり【神渡り】

冬、湖水の氷結面の一部にできる盛り上がった氷堤。気温が下がると氷が収縮して裂け、そこに下の水が上がって結氷し、気温の上昇に伴って氷が膨張して、裂け目の氷が持ち上げられる現象古来長野県諏訪すわでは、諏訪大社の神が渡ったものとし、その方向や出来ぐあいによってその年の豊凶を占う。 冬》

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「御神渡り」の意味・わかりやすい解説

御神渡り
おみわたり

冬季の寒冷地で,湖面に一部盛り上がった氷堤が見られる現象。湖面が結氷したのち,さらに厳しい寒さが続き,快晴放射冷却の大きいとき,氷の上面に収縮亀裂が生じると,亀裂に水が入り薄い氷ができる。日中,気温が上がり氷は膨張し,両側から圧力がかかることで薄い氷が割れてせり上がって氷堤が生じる。長野県の諏訪湖で特によく発生する。諏訪大社の上社と下社はこの御神渡りの起こりやすい両端近くに相対してまつられており,伝説では,御神渡りは上社の男神が下社の女神のもとへ出かけた跡だといわれている。御神渡り期日は,諏訪神社などの史料には 14世紀頃から記録されている。寒暖の歴史を研究する貴重な資料であり,藤原咲平による研究が有名。近年は発現する年が減少する傾向にあり,1980年代が 7回,1990年代が 2回,2000年代は2003,2004,2006,2008年の 4回の発現となっている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「御神渡り」の意味・わかりやすい解説

御神渡り
おみわたり

おわたり(御渡)ともいう。長野県諏訪湖(すわこ)に伝わる伝承。冬季、湖面が全面氷結したあと、寒気のため収縮すると、割れ目を生ずる。そこに下の水が上ってきて結氷するが、朝になって気温が上昇すると氷が膨張し、両側からこの割れ目を圧縮して、その部分の氷を持ち上げる。この盛り上がった一大亀裂(きれつ)に沿って、諏訪大社の祭神が上社から下社に渡って行かれたと考え、御神渡りとよばれたのである。またその亀裂の形から吉凶を占うようなことも行われた。諏訪湖の御神渡りの起日の記録はおよそ500年にわたって保存されており、気候変動の資料として世界的にも有名である。

[根本順吉]


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知恵蔵mini 「御神渡り」の解説

御神渡り

凍結した湖や沼の氷が堤状にせり上がる自然現象。長野県・諏訪湖のものが有名で、昼夜の寒暖差などにより裂け上がった氷の高さは30センチから1メートル80センチほどになる。湖を横切るようにできるため、神が渡った跡であるかのように思われ、この名がついた。諏訪湖の伝説では、諏訪神社の上社の男神・建御名方神(タケミナカタノカミ)が下社の女神・八坂刀売神(ヤサカトメノカミ)へ会いに通った道とされている。諏訪湖の御神渡りを検分する特殊神事「御渡り神事」は1978年、諏訪市無形民俗文化財に指定された。

(2014-1-21)

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