とく【得】
〘名〙
① 得ること。なすことの叶うこと。成就すること。
※
讚岐典侍(1108頃)上「一とせの
行幸の後、又見参らせばやと、ゆかしくおもひ参らするに、そのとくなければ」 〔春秋左伝‐定公九年〕
② (「徳」とも) もうけ。利益。利得。
※
落窪(10C後)一「時の
受領は、世にとく有物といへば、只今そのほどなめれば、つかうまつらむ」
※雁(1911‐13)〈
森鴎外〉一「
我儘をするやうでゐて、実は
帳場に得
(トク)の附くやうにする」 〔漢書‐項籍伝〕
③ (形動) 有利であること。便利であること。また、そのさま。
④ (prāpti の
訳語) 仏語。
衆生(しゅじょう)が身に得たものを失われないようにつなぎとめておく力をいう。逆に身から離れさせる力を非得という。〔
倶舎論‐四〕
⑤ 仏語。
真宗で、
因位のとき得ることを獲というのに対し、
果位において得ることをさしていう。信を得るのは獲、
極楽往生してさとりを得るのは得である。
※
三帖和讚(1248‐60頃)
正像末「獲の字は因位のときうるを獲といふ、得の字は果位のときにいたりてうることを得といふなり」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
デジタル大辞泉
「得」の意味・読み・例文・類語
え【得/▽能】
[副]《動詞「う(得)」の連用形から》
1 (下に打消しの語または反語を伴って)不可能の意を表す。…できない。うまく…できない。
「若者は挨拶の言葉も―言わないような人で」〈有島・溺れかけた兄弟〉
「数ならぬ身は、―聞き候はず」〈徒然・一〇七〉
2 可能の意を表す。…できる。うまく…できる。
「面忘れだにも―為やと手握りて打てども懲りず恋といふ奴」〈万・二五七四〉
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