後部硝子体剥離

六訂版 家庭医学大全科 「後部硝子体剥離」の解説

後部硝子体剥離
(眼の病気)

 後部硝子体剥離は、普通は硝子体の加齢性変化として起こります。多くの場合、無害で単なる老化現象といえるのですが、時に網膜剥離(もうまくはくり)の発生に関わります。中高年者に起こる網膜剥離は、かなりの割合で後部硝子体剥離が引き金になっていると考えられます(図46)。

 網膜と硝子体は眼底のほぼ全体で接しています。大部分ではゆるく接着していますが、部分的に強く接着している場所や病的に癒着(ゆちゃく)している場所があります。網脈絡膜(もうみゃくらくまく)の変性や瘢痕(はんこん)がある部分では病的な癒着がとくに強く、また正常でも血管の上ではいくぶんか強く癒着しています。後部硝子体剥離が起こる時、癒着がある部分では網膜が強く引っ張られて引き裂かれます。後部硝子体剥離は眼底の中心から始まり、周辺部へと広がっていきます。そのため、裂孔(れっこう)は眼底の中心に頭を向けた弁状になることが多いのです。

 後部硝子体剥離は裂孔の形成に関わるだけでなく、その有無は網膜剥離の性質にも大きく影響します。若年者に多い後部硝子体剥離を伴わない網膜剥離は、進行が遅い、丈が低い、網膜下の液は粘稠(ねんちゅう)(ねばりけがある)で、剥離した網膜はほとんど動かないという特徴があります。

 一方、後部硝子体剥離を伴う網膜剥離は、進行が速い、丈が高い、網膜下の液はさらさらしている、網膜は眼球の動きによって波打つなどの特徴がみられます。


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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