デジタル大辞泉
「彼方此方」の意味・読み・例文・類語
あちら‐こちら【▽彼▽方×此▽方】
[代]「あちこち」に同じ。「彼方此方の名所を訪ね歩く」
[形動ナリ]「あちこち」に同じ。
「―なる事を申してさまざまに難儀させ」〈浮・織留・六〉
かなた‐こなた【▽彼▽方×此▽方】
[代]遠称の指示代名詞。いろいろの場所・方向などをさす。あちらこちら。方々。
「見渡す海原の―には三本檣の大きな漁船が往来して居る」〈荷風・ふらんす物語〉
あっち‐こっち【▽彼▽方×此▽方】
[代]「あちこち」に同じ。「彼方此方の知人宅を泊まり歩く」
あなた‐こなた【▽彼▽方×此▽方】
[代]指示代名詞。あちらこちら。あれこれ。
「君の御身には、かの一節の別れより、―もの思ひとて」〈源・若菜下〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
あっち‐こっち【彼方此方】
(「あちこち」の変化した語)
※
洒落本・通仁枕言葉(1781)「あっちこっちへ云ひやって、仕めへにゃァつかみ合」
※
人情本・
春色辰巳園(1833‐35)三「私と仇吉
んとあっち此方
(コッチ)なら、おまへもそんな
愚智をいって」
あち‐こち【彼方此方】
[1] 〘代名〙 他称。いろいろの方向または
地点をさし示す。また、所々方々、あれこれ、いろいろ、などの意で副詞的にも用いる。あちらこちら。あっちこっち。
※宇治拾遺(1221頃)三「牛の、あちこちありき困(こう)じたるに」
※
古今集遠鏡(1793)三「こちの心がサ、花といっしょにあちこちとちっていくやうな心もちがする」
[2] 〘形動〙 逆になっているさま。あべこべ。反対。あちらこちら。あっちこっち。
※随筆・
蘐園雑話(1751‐72頃)「親が子を引合すべきに、子にて親を引合すはあちこちなり」
あちら‐こちら【彼方此方】
※俳諧・はりまあんご(1789)「
水音もあちらこちらや
朧月〈
玉井〉」
※浮世草子・
傾城色三味線(1701)大坂「裸身に羽織をあちらこちらに着て」
あっちら‐こっちら【彼方此方】
(「あちらこちら(彼方此方)」の変化した語)
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)三「『おめへの傍(そば)へ倚(よ)ると色かぶれがしてこまらア』『ヘン、きつい洒落さ。そりゃア、あっちらこっちらだよ』」
かなた‐こなた【彼方此方】
〘代名〙 他称。いろいろの方向、または地点をさし示す。あれこれ、いろいろなどの意で副詞的にも用いる。あちらこちら。あちこち。処々方々。
※宇津保(970‐999頃)楼上下「七夕祭、かなたこなたとせさせ給へり」
※太平記(14C後)三二「継母の讒に依て、那辺這辺(カナタコナタ)漂泊し給つるが」
あなた‐こなた【彼方此方】
〘代名〙 他称。あちらこちら。ほうぼう。
※宇津保(970‐999頃)春日詣「宮よりはじめ奉りて、女みこたち、あまたの北の方、あなたこなたあはせてここの所」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報