干潟(読み)ヒガタ(英語表記)tidal flat

デジタル大辞泉 「干潟」の意味・読み・例文・類語

ひ‐がた【干潟】

海岸で潮がひいたときに現れる砂泥底。潮干潟 春》
[類語]砂州中州デルタ三角州扇状地

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精選版 日本国語大辞典 「干潟」の意味・読み・例文・類語

ひ‐がた【干潟】

〘名〙 (古くは「ひかた」) 潮がひいて遠浅になった海岸。潮干潟。《季・春》
海道記(1223頃)萱津より矢矧「猶この干潟を行ば、小蟹ども、おのが穴々より出て蠢き遊ぶ」

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改訂新版 世界大百科事典 「干潟」の意味・わかりやすい解説

干潟 (ひがた)
tidal flat

河口域や湾の奥部の潮間帯には,川から流れ出た砂泥が堆積し,広く平たんな砂泥地ができる。干潟とは,このような場所が干潮時,海面上に姿を現したものを指す。その成因から,干潟の砂泥は,きわめて豊富な栄養塩類や有機物を含んでいる。それにもかかわらず干潮時には,毎日2回は空気中にさらされるため,酸素が十分に供給され,生物にとって好適な環境をつくっている。

 干潟には,ゴカイ類,二枚貝類などが,きわめて豊富にすみつき,コメツキガニなどのスナガニ類も多い。これらの底生生物たちを餌とする鳥類(チドリ,シギ,サギなど)も多く訪れるため,鳥の観察には絶好の場所を提供している。また干潟は,アサリ,バカガイ,シオフキガイなどの貝を求めて,潮干狩りに利用されている。満潮時は冠水するが,このときは底生生物を餌とする多くの魚類が集まり,藻場と同じように,浅海で最も重要な幼稚魚の成育場にもなっている。一方,その立地条件などから,干潟は埋立地として最もねらわれやすく,1978年の環境庁の調査によると,日本の干潟の3分の1は,工業用などに埋め立てられてなくなっている。

1960年代後半の高度成長時代に,工場立地のためなどによって次々と干潟が埋め立てられたため,反公害や自然保護などの住民運動も盛んに行われるようになり,入浜権や環境権なども主張されるようになった。自治体などでは,これらの住民要求と埋立計画の妥協策として,埋立地の沖側や埋立てで陸地にとり残された海岸の一部に,人工的に干潟を作った。都市周辺の人工干潟には,年とともに底生動物も増加し,多くの野鳥が集まるようになってきているが,客土した土壌の性質や人工干潟の位置,海水の交換などの条件によって,自然の干潟とほぼ同じような生物相になったところから,ひじょうに貧弱な生物相のままのところまである。83年現在,東京湾奥の2ヵ所の野鳥公園,横浜の人工干潟などがあるが,全国で目下計画中のものがいくつか知られている。
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干潟(旧町) (ひかた)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「干潟」の意味・わかりやすい解説

干潟
ひがた
tidal flat

満潮時には海面下に沈み,干潮時には海面上に現れる低平な粘土や泥からなる土地。川から流れた砂泥が河口域や湾の奥などに堆積することで形成され,広さは干満の差および海岸地形に左右される。川から運ばれてきた有機物や栄養塩類が豊富で,アサリなどの貝類ゴカイマハゼなどの魚類が生息する生物の宝庫である。またそれらを求めて,シギなどの鳥類も多く渡来する。水産業環境保全の点からきわめて重要な役割を果たす。日本では東京湾内の千葉県側海岸,有明海には広大な干潟がみられたが,前者では埋め立てが,後者では干拓が進み,急速にその面積が縮小した。(→ラムサール条約生態学

干潟
ひかた

千葉県北東部,旭市北西部の旧町域。九十九里平野北部にある。 1955年古城村,中和村,萬歳村の3村が合体して町制。 2005年旭市,海上町,飯岡町と合体して旭市となった。椿海という潟湖を,江戸時代初期に干拓して成立した新田開発村から発達。干潟八万石と呼ばれる米作地で,早場米で知られる。水田農業に依存してきたが,1951年大利根用水開通により,野菜の施設栽培が発達。長部地区には江戸時代に農村改革を指導した大原幽学の居宅,墓地がある。

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百科事典マイペディア 「干潟」の意味・わかりやすい解説

干潟【ひがた】

河川が運んだ土砂が湾奥や河口付近の海底に堆積し,干潮の際に海面上へ姿を現したもの。有機物を多く含む土砂は,干上がった際に空気に触れて酸素が供給されるため生物の生息環境としてはきわめて良好であり,微生物のみならず魚介類・鳥類も多く集まり豊かな生態系をはぐくむ役割を果たしている。千葉県の谷津(やつ)干潟や愛知県の藤前干潟など,多様な生態系が評価されてラムサール条約の登録湿地に指定されたものもある。一方で,水深が浅いことから埋め立ての好適地であり,自然環境保護の観点から問題を指摘する声も多い。
→関連項目干拓

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世界大百科事典(旧版)内の干潟の言及

【海岸】より

…アメリカ東岸のバリアは沖浜から直接にあるいは海岸に沿う砂の流れ(漂砂)によって砂が供給され,多くは数千年前に急速に成長し,現在は浸食過程にあるものもある。潟や湾の内側では波浪が弱いので,泥質の細粒物質が堆積して干潟をつくる。河川が湾や潟に流入する河口付近には三角州が形成され,干潟をなす所も多い。…

※「干潟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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