干渉(波)(読み)かんしょう(英語表記)interference

翻訳|interference

日本大百科全書(ニッポニカ) 「干渉(波)」の意味・わかりやすい解説

干渉(波)
かんしょう
interference

同じ振動数をもつ二つ以上の波が重なると、波がつねに強め合う場所と弱め合う場所とが交互に並び、縞(しま)模様が観察される。この現象干渉という。干渉によって生じた縞模様干渉縞とよばれる。波が実数関数で表される場合には、波の強度は、波を表す関数の2乗の時間平均に等しい。二つの波が干渉して生ずる合成波を表す関数は、個々の波を表す関数の和に等しい。したがって、合成波の強度は、個々の波の強度の和に、干渉の影響を表す干渉項を加えたものに等しくなる。二つの波が重なると、二つの波の位相差がゼロまたは180度の偶数倍に等しい場所では、干渉項は正の値をとり、合成波の強度が極大となる。位相差が180度の奇数倍に等しい場所では、干渉項は負の値をとり、合成波の強度は極小になる。干渉縞がはっきり見えるかどうか、すなわち干渉縞のコントラスト大小は、波源の放つ波の単色性や波源の実効的な幅によって左右される。

 水の表面を同一の振動数で上下に振動する2本の棒でつつくと、これらの2本の棒を中心として水面上に広がる二つの円形波を生じ、これらの波が重なる場所には干渉縞が見られる。干渉の現象は、このほかにも、音波、電磁波(光波、X線を含む)、物質波(電子、中性子など)など、あらゆる種類の波について観察される。水面に広がった油の膜やシャボン玉の膜に白色光を当てると多彩な縞の環が見える。これらの膜に単色光を当てて反射させると、明暗の環が見られる。これは薄膜(はくまく)の上面および下面での反射によって生じた二つの光波が重なってつくる干渉縞である。平凸レンズの凸面をガラス板に密着したとき、単色光の反射によって見られるニュートン環も同じような干渉縞である。

 ヤングの干渉の実験(の(1))では、接近した2本のスリットS1とS2からなる複スリットを肉眼の前に置く。二つのスリットに平行なスリットSを単色光で照らす。スリットSを出て、スリットS1またはS2を通った二つの光波は、互いに干渉して目の網膜上にスリットに平行な明暗の干渉縞を生ずる。干渉縞の間隔は、スリットS1とS2の間の距離に逆比例し、光の波長に比例する。フレネルの複プリズムは、180度よりわずかに小さい頂角をもつ薄いプリズムである。スリットから出た単色光は、このスリットに平行な稜(りょう)をもつフレネルの複プリズムを通過したあとは、ヤングの実験での2本の平行なスリットを通ったあとの二つの光波と同様に伝わっていく。したがって、二つの波の重なる場所には、プリズムの稜に平行な明暗の干渉縞が生ずるのをルーペで観察することができる。ロイドの鏡の実験では、単色光で照らされたスリットSにガラス板Gの一端をくっつけ、ガラス板の手前側の端に近い平面P上にルーペのピントをあわせて観察する(の(2))。スリットSから直接に広がってきた光波と、ガラス板による反射光波とが重なって干渉縞が生ずる。ガラス板によって光が反射するとき、波の位相が180度跳ぶこと、およびその他の理由によって、ヤングの干渉縞とは異なる強度分布をもった干渉縞が生ずる。とくに平面P上のガラス板に近い場所では、最高のコントラストをもつ干渉縞が観察される。

 波の干渉は、波の伝わり方に関するホイヘンスの原理や波の回折や散乱の現象において、基本的に重要な役割を果たしている。光波の干渉は各種の干渉計や干渉顕微鏡の原理となっている。

[飼沼芳郎]

『飼沼芳郎著『干渉および干渉性』(1981・共立出版)』


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