山・鉾・屋台行事(読み)やまほこやたいぎょうじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「山・鉾・屋台行事」の意味・わかりやすい解説

山・鉾・屋台行事
やまほこやたいぎょうじ

山や鉾などの山車(だし)を、担いだり、引いたりして練り歩く神社の祭礼。本来、ダシは「出しもの」の意味で、祭りに招き寄せる神の依代(よりしろ)になるものである。現在では飾り付けられた練りの屋台そのものをさすようになり、人が乗って祭囃子(ばやし)を奏で、歌舞伎(かぶき)狂言などの芸能を演じる屋台なども含まれる。山車を用いる祭りの原点は、京都市東山区祇園(ぎおん)町に所在する八坂(やさか)神社の祭礼で、祇園山鉾が町を練り歩く祇園祭であるといわれる。このような祭りは全国にみられ、曳山(ひきやま)、だんじり、祭屋台、山鉾、舁山(かきやま)、笠鉾など、名称や外形はさまざまである。

 日本各地の山車を使った祭りのうち、33件は国の重要無形民俗文化財に指定されている。また、これらの祭礼に使用されている山車66基は、重要有形民俗文化財の指定を受けている。なお、重要無形民俗文化財のうち、京都祇園祭の山鉾行事と日立風流物(ひたちふりゅうもの)は、2009年(平成21)ユネスコ国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されたが、その後2016年には、ほかの祭礼行事31件を加えた全33件が「山・鉾・屋台行事」として一括登録された。

[編集部 2017年2月16日]

資料 国指定重要無形民俗文化財およびユネスコ無形文化遺産の山・鉾・屋台行事

文化庁資料をもとに作成
八戸三社大祭の山車行事
〔読み〕はちのへさんしゃたいさいのだしぎょうじ
〔所在地〕青森県八戸市
角館祭りのやま行事
〔読み〕かくのだてまつりのやまぎょうじ
〔所在地〕秋田県仙北(せんぼく)市
土崎神明社祭の曳山行事
〔読み〕つちざきしんめいしゃさいのひきやまぎょうじ
〔所在地〕秋田市
花輪祭の屋台行事
〔読み〕はなわまつりのやたいぎょうじ
〔所在地〕秋田県鹿角(かづの)市
新庄まつりの山車行事
〔読み〕しんじょうまつりのやたいぎょうじ
〔所在地〕山形県新庄市
日立風流物
〔読み〕ひたちふりゅうもの
〔所在地〕茨城県日立市
烏山の山あげ行事
〔読み〕からすやまのやまあげぎょうじ
〔所在地〕栃木県那須(なす)烏山市
鹿沼今宮神社祭の屋台行事
〔読み〕かぬまいまみやじんじゃさいのやたいぎょうじ
〔所在地〕栃木県鹿沼市
秩父祭の屋台行事と神楽
〔読み〕ちちぶまつりのやたいぎょうじとかぐら
〔所在地〕埼玉県秩父市
川越氷川祭の山車行事
〔読み〕かわごえひかわまつりのだしぎょうじ
〔所在地〕埼玉県川越市
佐原の山車行事
〔読み〕さわらのだしぎょうじ
〔所在地〕千葉県香取(かとり)市
高岡御車山祭の御車山行事
〔読み〕たかおかみくるまやままつりのみくるまやまぎょうじ
〔所在地〕富山県高岡市
魚津のタテモン行事
〔読み〕うおづのたてもんぎょうじ
〔所在地〕富山県魚津市
城端神明宮祭の曳山行事
〔読み〕じょうはなしんめいぐうさいのひきやまぎょうじ
〔所在地〕富山県南砺(なんと)市
青柏祭の曳山行事
〔読み〕せいはくさいのひきやまぎょうじ
〔所在地〕石川県七尾(ななお)市
高山祭の屋台行事
〔読み〕たかやままつりのやたいぎょうじ
〔所在地〕岐阜県高山市
古川祭の起し太鼓・屋台行事
〔読み〕ふるかわまつりのおこしだいこやたいぎょうじ
〔所在地〕岐阜県飛騨(ひだ)市
大垣祭のやま行事
〔読み〕おおがきまつりのやまぎょうじ
〔所在地〕岐阜県大垣市
尾張津島天王祭の車楽舟行事
〔読み〕おわりつしまてんのうまつりのだんじりぶねぎょうじ
〔所在地〕愛知県津島市、愛西(あいさい)市
知立の山車文楽とからくり
〔読み〕ちりゅうのだしぶんらくとからくり
〔所在地〕愛知県知立市
犬山祭の車山行事
〔読み〕いぬやままつりのやまぎょうじ
〔所在地〕愛知県犬山市
亀崎潮干祭の山車行事
〔読み〕かめざきしおひまつりのだしぎょうじ
〔所在地〕愛知県半田市
須成祭の車楽船行事と神葭流し
〔読み〕すなりまつりのだんじりぶねぎょうじとみよしながし
〔所在地〕愛知県蟹江(かにえ)町
鳥出神社の鯨船行事
〔読み〕とりでじんじゃのくじらぶねぎょうじ
〔所在地〕三重県四日市(よっかいち)市
上野天神祭のダンジリ行事
〔読み〕うえのてんじんまつりのだんじりぎょうじ
〔所在地〕三重県伊賀(いが)市
桑名石取祭の祭車行事
〔読み〕くわないしどりまつりのさいしゃぎょうじ
〔所在地〕三重県桑名市
長浜曳山祭の曳山行事
〔読み〕ながはまひきやままつりのひきやまぎょうじ
〔所在地〕滋賀県長浜市
京都祇園祭の山鉾行事
〔読み〕きょうとぎおんまつりのやまほこぎょうじ
〔所在地〕京都市
博多祇園山笠行事
〔読み〕はかたぎおんやまがさぎょうじ
〔所在地〕福岡市
戸畑祇園大山笠行事
〔読み〕とばたぎおんおおやまがさぎょうじ
〔所在地〕福岡県北九州市
唐津くんちの曳山行事
〔読み〕からつくんちのひきやまぎょうじ
〔所在地〕佐賀県唐津市
八代妙見祭の神幸行事
〔読み〕やつしろみょうけんさいのしんこうぎょうじ
〔所在地〕熊本県八代市
日田祇園の曳山行事
〔読み〕ひたぎおんのひきやまぎょうじ
〔所在地〕大分県日田市

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵mini 「山・鉾・屋台行事」の解説

山・鉾・屋台行事

地域社会の安泰や災厄防除を願って地域の人々が執り行う「山・鉾・屋台」の巡行を中心とした祭礼行事のこと。木工・金工・漆・染織などの伝統技術で華やかに飾られた山車を引いて練り歩くことを主行事とする。多くは江戸時代を起源とし、「京都祇園祭の山鉾行事」「日立風流物(ふりゅうもの)」「秩父祭の屋台行事と神楽」など18府県の計33件が国の重要無形民俗文化財に指定されている。政府は2014年3月に、この33件をグループ化しユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録するよう提案、15年3月に再提案した。16年10月31日、ユネスコの補助機関は、これを無形文化遺産に登録するよう勧告したことがわかった。勧告は重視されるため、ほぼ登録される見通しとなっている。

(2016-11-4)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

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