小切手(読み)コギッテ(英語表記)check

翻訳|check

デジタル大辞泉 「小切手」の意味・読み・例文・類語

こ‐ぎって【小切手】

銀行当座預金をしている者が、支払人である銀行にあてて、一定の金額の支払いを委託する一覧払い有価証券。現金に代わる支払い手段として利用される。

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精選版 日本国語大辞典 「小切手」の意味・読み・例文・類語

こ‐ぎって【小切手】

〘名〙 銀行に当座預金をしている人が振り出し、その所持人に一定の金額を支払うことを銀行に委託する一覧払いの有価証券。貸借、売買などの決済にあたり、現金の代用物として利用される。振出方式に記名式指図式、持参人払式などがある。チェック。〔銀行小言(1885)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「小切手」の意味・わかりやすい解説

小切手 (こぎって)
check

振出人が支払人である銀行(またはその他の金融機関)にあてて,受取人その他の正当な小切手所持人に対して一定金額の支払を委託する有価証券。小切手を振り出すにはあらかじめ銀行との間で,振出人は銀行に対して小切手支払の資金を提供する旨,および銀行はこの資金によって小切手の支払をする旨を約束する契約(当座預金契約または当座貸越契約)を締結しておかなければならない(小切手法3条)。振出人はこの契約にもとづいて銀行から小切手用紙の交付をうけ,これを使って小切手を振り出すことになる。振出人から小切手の振出しをうけた者または小切手の譲受人は,小切手記載の支払場所に小切手を呈示して,支払人から小切手金額の支払をうけることができる。小切手を自分の取引銀行に渡して取立委任により支払をうけることもできる。
執筆者:

小切手は14世紀に商業・貿易が隆盛であったイタリアの諸都市で,私人・行政当局等が銀行預金に対して支払指図をするために使用されたのが始まりとされ,その後イギリスやヨーロッパ大陸諸国に普及している。日本では鎌倉時代に,割符(わりふ)などと呼ばれる現在の為替手形と似たものが用いられていた。江戸時代になると,両替屋に預金をもっている商人が両替屋を支払人として振り出す手形,いわゆる振出手形が発達している。これが,今日の小切手に相当するものである(〈為替〉の項参照)。もともと小切手の経済的機能は,日常多額の現金を取り扱うものが,支払の安全を確保しつつ直接的な現金の授受に伴う過誤,煩瑣(はんさ)や危険を回避するために現金の代用物として利用する点にある。小切手は,その当事者として振出人・受取人・支払人を必要とし,金銭支払の委託を書き表した証券であるという点で為替手形と同じであり,法律的な性質や構造は為替手形と類似しているが,為替手形は債務の弁済時期を事実上繰り延べる信用取引の用具として用いられる信用証券であるのに対して,小切手は上記のように現金支払の代用物たる支払証券であるという点が大きく相違している。
執筆者:

小切手に関する法令としては,1931年の小切手法統一条約にもとづいて制定された小切手法(1933公布)がある。同法は小切手が国際取引で利用される場合の準拠法についても規定している(78~81条)。小切手法の付属法令として,拒絶証書令(1933公布,勅令),〈小切手法ノ適用ニ付銀行ト同視スベキ人又ハ施設ヲ定ムルノ件〉(1933公布,勅令)などがある。これらの法令に規定のない事項については,商法および民法の定めるところによる。

 小切手法1条は小切手に記載を要する事項(小切手要件)について定めており,それは,(1)小切手なることを示す文字,(2)一定の金額を支払うべき旨の単純な委託,(3)支払人の名称,(4)支払地,(5)振出日および振出地,(6)振出人の署名(記名捺印をふくむ)であるが,実際上は小切手用紙の空白部分に必要事項を記入すればよい(〈線引小切手〉および〈支払保証〉については,それぞれの項参照)。

 小切手は持参人払式(〈小切手の持参人へお支払い下さい〉との記載のあるもの)が多いが(小切手法5条参照),この種の小切手は引渡しにより譲渡できる。小切手の受取人として特定の者を記載した記名式小切手は,裏書禁止の記載のあるものを除き,裏書により譲渡できる。いずれの場合も善意取得の法則(21条)や抗弁切断の法則(22条。〈手形抗弁〉の項参照)が適用される。

 小切手はすべて一覧払であり,所持人は直ちにその支払を求めることができる。実際の振出日よりも将来の日を振出日として記載した先日付小切手の場合でも同様である。所持人は法定の呈示期間(国内小切手の場合は振出日から10日。29条)内に支払を求めることを要し,これを怠ると遡求権(そきゆうけん)を失う。ただし支払人は,振出人から支払委託の取消しをうけないかぎり,呈示期間経過後でも支払をすることができる(32条)。

 所持人が呈示期間内に支払のために呈示をしたが支払を拒絶された場合には,振出人および裏書人に対して小切手金額,利息および費用の支払を求めることができ(44条),これを遡求という。またこれを振出人・裏書人の側から表現して,これらの者は担保責任を負うという。遡求をするには支払拒絶の証明が必要であるが,それは支払人の支払拒絶宣言でもよい(39条。〈拒絶証書〉の項参照)。裏書人が遡求に応じて支払ったときは,振出人および自分よりも以前に裏書した裏書人に対して再遡求することができる。遡求権および再遡求権は6ヵ月で時効にかかる(51条)。なお小切手には為替手形の場合のような引受けの制度はないので,引受拒絶を理由とする遡求はない。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「小切手」の意味・わかりやすい解説

小切手
こぎって
cheque
check

発行人(振出人)が当座勘定取引契約のある金融機関にあてて、自己の資金から一定の金額(小切手金額)の支払いを委託する形式の有価証券(支払委託証券)をいう。現行の日本の小切手制度の根拠法規は小切手法(昭和8年法律57号)である。

[井上 裕]

沿革

小切手の使用は14世紀のイタリアに始まり、その後ヨーロッパ大陸やイギリスに普及し、近代的な小切手制度は1865年のフランス小切手法に基礎を置くといわれる。日本でも古くは鎌倉時代の割符(さいふ)にその起源をみることができるとされ、江戸時代には両替商を支払人とする振出手形が発達したが、現在の手形・小切手制度は明治になって欧米から移植されたものである。手形・小切手に関する法律としては、1882年(明治15)の為替(かわせ)手形約束手形条例が最初で、ついで90年および99年の商法のなかに規定があった。その後、1931年(昭和6)のジュネーブでの小切手法統一条約の締結に伴い現行小切手法が成立、今日に及んでいる。

[井上 裕]

仕組み・機能

小切手は支払委託の有価証券で、直接に現金を授受する危険と手数を避けるために使用され、本来、現金にかわる支払い手段である。この点、手形が信用手段であるのと異なる。発行人(振出人)は当座勘定取引契約に基づいて取引金融機関から小切手用紙の交付を受け、これに必要事項を記載、署名捺印(なついん)して相手方(受取人)に渡し、相手方はこの小切手を支払金融機関に呈示することによって資金の決済を得る。この場合、受取人から第三者に転々流通することもある。呈示は、直接に支払銀行の店頭に赴く場合と、手形交換所を経由して交換呈示される場合とがある。

 なお、小切手の法定記載事項は、(1)小切手という文字、(2)一定金額の単純な支払委託文句、(3)支払人の名称、(4)支払地(支払人の住所)、(5)振出地、(6)振出日、(7)振出人の署名、である。もっとも、金融機関から交付される小切手にはすでに印刷されている部分があるから、実際には、一定金額、振出地、振出日、振出人の署名をすれば足りる。小切手は一覧払いが原則であり、その呈示期間は振出日を含めて11日である。

[井上 裕]

種類

小切手は一般的には持参人払い式が多く、これは支払委託文句が「この小切手と引替えに持参人へお支払いください」とあるもの。この「持参人」を「××殿」と訂正したものが記名式、「××殿または指図(さしず)人」としたものが指図式である。記名式・指図式の支払いまたは譲渡にあたっては、小切手の裏面に裏書を要する。また、紛失、盗難などにより不正の所持人が支払いを受ける危険を避けるために線引(せんびき)小切手の制度がある。線引には一般線引と特定線引の2種類があり、前者は小切手面に2本の平行線を引いたもので、他の金融機関または自行の取引先以外に支払うことができない。後者は2本の平行線の間に特定金融機関名を記したもので、これはその指定金融機関に対してだけ支払いがなされる。また、支払金融機関が自己にあてて振り出す小切手を自己宛(あて)小切手、このうち同じ支店振出し・支払いのものを預金小切手(略して預手(よて))といい、ほぼ現金同様の信用度をもつ。振出日の日付が実際よりも先になっているものを先日付(さきひづけ)小切手とよぶ。なお、以上のほかに、金融機関相互間の送金目的に利用される送金小切手、個人専用のパーソナル・チェック、海外旅行者専用のトラベラーズ・チェックなどがある。

[井上 裕]

『鈴木竹雄著『法律学全集32 手形法・小切手法』(1957・有斐閣)』『田中誠二著『手形・小切手法詳論』上下(1968・勁草書房)』『日本経済新聞社編・刊『手形100問100答』(1978)』『高窪利一著『現代手形・小切手法』(1979・経済法令研究会)』『小橋一郎著『銀行員のための手形・小切手法入門』(1981・金融財政事情研究会)』『前田庸著『手形法・小切手法入門』(1983・有斐閣)』『加藤勝郎著『図説 手形・小切手法教室』(2002・創成社)』『浅木慎一著『手形法・小切手法入門』(2003・中央経済社)』『田邊宏康著『手形小切手法講義』第2版(2008・成文堂)』

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百科事典マイペディア 「小切手」の意味・わかりやすい解説

小切手【こぎって】

振出人が銀行に一定金額の支払を委託する形式で振り出した有価証券。前提として銀行と当座預金の契約を結び,預金を小切手により処分することを約す。手形と異なりすべて一覧払証券であり呈示があれば直ちに支払う必要がある。現金に代わる支払手段として広く利用される。持参人払式小切手記名式小切手とがある。
→関連項目為替為替手形金銭証券小切手法先日付小切手線引小切手手形交換所当座貸越しトラベラーズ・チェック振替制度保証小切手預金貨幣

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「小切手」の意味・わかりやすい解説

小切手
こぎって
check

振出人が支払人である銀行 (小切手法3,59) にあてて受取人その他の所持人に対し一定の金額の支払いをなすべきことを委託する有価証券 (1条) 。小切手は,現金の支払いに伴う危険や煩雑さを避けるため銀行に預金し,これをもって諸支払いにあてるために利用されるいわゆる現金代用物である。なお,小切手を振出すためには,振出人と支払人である銀行との間に,当座預金契約ないし当座貸越契約と小切手契約とが締結される。

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世界大百科事典(旧版)内の小切手の言及

【チェック】より

…市松模様,格子縞,そのほか線が直角に交差した格子柄模様の総称。一般に先染めした経糸(たていと)と緯糸(よこいと)で織り出して作るが,プリントで表したものもある。種類は各種あるが,その名称は織物の由来からつけられたものが多い。おもなものにスコットランドのタータンやタータンをもたない新興土地所有者たちによってそれぞれの地方でつくられたディストリクト・チェックdistrict check,そのほか窓枠のように仕切られたウィンドー・ペーンwindow pane,ピン・チェックpin check(微塵(みじん)格子),ギンガム,ブロック・チェックblock check(市松格子)などがある。…

【遡求権】より

…手形・小切手になんらかの当事者として関与(署名)した者は,原則として,手形金,小切手金の支払につき責任を負わなければならない。手形・小切手の署名者の責任は2種類に分けられる。…

※「小切手」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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