家(巴金の小説)(読み)いえ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「家(巴金の小説)」の意味・わかりやすい解説

家(巴金の小説)
いえ

中国の作家巴金(はきん)の長編小説。1931年作。『春』『秋』と続く「激流三部作」の第1編。作者の生家をモデルとした四川(しせん)省成都の大官僚地主の家庭を舞台に、辛亥(しんがい)革命後の停滞を打ち破った五・四新文化運動の波に洗われ、最後のあがきをみせながら滅亡の道をたどる旧世代の人々、礼教の支配下にある家の重圧に抗しかねて死んでいく人々、自らが育った家に反逆し、旧世代の人々に敢然と戦いを挑んで、その家を棄(す)てて出ていく若者など、過渡期群像を通して、形骸(けいがい)化した儒教道徳の害毒と、新中国を生み出した青年たちのエネルギーを描いた現代中国文学の代表的作品の一つ。1920年代中国の年代記ともいえる。

立間祥介

『飯塚朗訳『家』上下(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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