定率減税(読み)ていりつげんぜい

知恵蔵 「定率減税」の解説

定率減税

税負担の軽減策には、(1)税額控除(算出税額から一定額を控除)と、(2)所得控除(課税所得額から法定の金額を控除)がある。(1)のほうがより納税者の負担能力を考慮している。定率減税所得税を20%(25万円が限度)、住民税を15%(4万円が限度)割り引く制度で(1)に当たるが、2006年に半減、07年には全廃される。06年度の与党税制改定大綱は、「経済状況の改善等を踏まえ、定率減税を廃止する」とした。もともと定率減税は、1999年に成立した法「経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減に関する法律」により、99年4月から実現したものである。この法により、(1)定率減税、(2)所得税率の引き下げ(改定前の適用課税所得1800万円超=40%、3000万円超=50%の所得税率を一気に1800万円超=37%と大幅引き下げ。減税額5000億円)、(3)法人税率の引き下げ(改定前の34.5%から30%と大幅引き下げ。減税額2兆7000億円)が実施されたが、(1)だけが廃止となる。廃止による影響を最も受ける勤労者(1年を通じて勤務した給与所得者)の収入は、98年から04年まで7年連続で減少している(05年9月国税庁調査)。

(浦野広明 立正大学教授・税理士 / 2007年)

定率減税

所得税と個人住民税の税額の一定割合を減額する措置。平成11(1999)年度の税制改革において小渕内閣のもとで、「著しく停滞した経済活動の回復に資するため」に、個人所得税の抜本的見直しまでの特例措置として、所得税に対して所得税額の20%(上限25万円)、住民税所得割額の15%(上限4万円)の税額控除として導入された。その後、平成17(2005)年度まで継続されたが、平成17年度税制改正で、所得税、個人住民税とも減税割合が2分の1へと縮減され、所得税額の10%(上限12万5000円)、所得割額の7.5%(上限2万円)が控除されることとなった。さらに、平成18(06)年度税制改正で、残りの2分の1も廃止が決まり、定率減税は2007年1月(個人住民税は6月)徴収分から廃止された。

(神野直彦 東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授 / 2008年)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「定率減税」の意味・わかりやすい解説

定率減税
ていりつげんぜい

家計の税負担を軽減する目的で導入された恒久的な減税措置。1999年に成立した「経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律」に基づく。消費税増税や医療改革により著しく停滞した経済活動を回復させるため,小渕恵三内閣のもとで所得税率の引き下げ,法人税の引き下げとあわせて 1999年4月に導入された。1999~2005年度は,所得税は税額の 20%相当(25万円を限度),住民税は税額の 15%相当(4万円を限度),2006年度は所得税は 10%相当(12.5万円を限度),住民税は 7.5%相当(2万円を限度)が減額された。2007年,不良債権額の減少,名目成長率の上昇など経済状況が改善されたことを理由に廃止された。(→税額控除

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「定率減税」の解説

定率減税

1999年に景気対策として導入された減税制度。所得税では20%相当、個人住民税では税額の15%が控除される制度で、導入当初は恒久的な減税という名目であった。しかし、不況のヤマは超えたといわれる2005年から、国の増税路線への傾向が強まり、06年からは所得税、個人住民税共に控除の割合が半減、また、所得税は12.5万円、個人住民税は2万円まで、という控除額の上限が設定されることになった。さらに、07年には定率減税は完全に廃止されることになっている。

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