外国人指紋押捺制度(読み)がいこくじんしもんおうなつせいど

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「外国人指紋押捺制度」の意味・わかりやすい解説

外国人指紋押捺制度
がいこくじんしもんおうなつせいど

日本に1年以上住む 16歳以上の外国人指紋を押すことを義務づけた制度。日本に在留する外国人は,入国の日から 90日以内に,また日本において外国人となったとき,あるいは出生その他の事由により入管法3章に規定する上陸の手続きを経ずに,日本に在留することになった日から 60日以内に,その居住地の市区町村長に申請して,外国人登録原票に登録されなければならず,その際登録原票や登録証明書などに指紋を押す義務があった。これは,在留外国人の居住関係と身分関係を明確にして,その公正な管理に資するためのものであった。各人の同一人性を最も簡便かつ正確に確認できる方法は指紋の照合であるとの考えからこのような制度がとられていたが,指紋押捺という行為自体が犯罪者の場合と同じであるため,押捺義務者の人格権を侵害するのではないかとして,法的・政治的な紛争になった。法務省としては,指紋の採取方法が非人道的にならないように工夫するとともに,1990年5月のノ・テウ (盧泰愚) 韓国大統領来日時の日韓外相の合意事項に基いて,92年5月に在日韓国人朝鮮人など永住者については指紋押捺を廃止し,写真・署名・家族関係の登録をするという外国人登録法改正案が成立した。また 99年8月にはさらに改正がなされ,これまでの指紋押捺制度全廃。指紋押捺制度に代えて,署名および家族事項の登録という同一人性確認手段がとられることになったほか,登録原票の開示制度も新設された。

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