在郷軍人(読み)ざいごうぐんじん

精選版 日本国語大辞典 「在郷軍人」の意味・読み・例文・類語

ざいごう‐ぐんじん ザイガウ‥【在郷軍人】

〘名〙 平時は主に郷里生業についているが、戦時や事変の際には必要に応じて召集され国防任務についた、予備役(えき)後備役、帰休兵、退役軍人などをいう。在郷兵。〔陸軍召集条例(明治三二年)(1899)〕

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デジタル大辞泉 「在郷軍人」の意味・読み・例文・類語

ざいごう‐ぐんじん〔ザイガウ‐〕【在郷軍人】

平時は民間で生業に就いているが、戦時には必要に応じて召集され国防の任に就く予備役・後備役などの軍人。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「在郷軍人」の意味・わかりやすい解説

在郷軍人
ざいごうぐんじん

日本軍隊の徴兵制度において予備兵力保有のために設けられた制度。兵営で一定期間訓練された者が、除隊後に予備役に編入され、帰郷後も有事の際には召集できるように設けられたものである。具体的には兵役区分としての予備役、後備役および補充兵役国民兵役にある者を通称した。この通称は、「在郷(予備後備)兵」などの呼称とともに、1886年(明治19)の陸軍召集条例制定前後から、帰郷兵の人事異動や集会、教育と召集などの監視、監督に関する地方行政機関の通牒(つうちょう)、訓令などにみえるようになり、日清(にっしん)戦争(1894~95)後にしだいに一般に流布するようになった。

 在郷軍人は、連隊区司令部や市町村役場兵事係から日常的な監視を受け、平時には、勤務演習(軍隊教育復習)と簡閲点呼(人事異動などの査閲のために便宜の指定地に集合し、点呼を受ける)などの義務を課せられた。各地の在郷軍人は、1880年代後半から、地方行政機関の指導と援助のもとに、召集準備や軍隊教育の復習などを目的にして自己の団体を組織した。これらの団体は「在郷軍人団(会)」などの名称をもち、日清戦争後には自力でその設立運営を目ざすようになったが、日露戦争後には、政治的勢力として成長した軍部によって統合され、1910年(明治43)11月に帝国在郷軍人会が設立された。これは軍隊教育の復習や相互扶助などを目的にしたが、軍の政治的手足として国民に対する教化や統制の役割を果たしていった。

[遠藤芳信]

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改訂新版 世界大百科事典 「在郷軍人」の意味・わかりやすい解説

在郷軍人 (ざいごうぐんじん)
ex-soldier
reservist
veteran

一般に現役として軍に属していない軍人をいい,予備役,後備役,帰休兵,退役軍人などがそれにあたる。在郷軍人は平時民間にあって生業についているが,戦時あるいは事変などに際して必要に応じて召集される義務を負っている。近代国家において在郷軍人は二重の意味で重要な役割を果たしてきた。第1に,国家財政の節約になった。規模の拡大した近代戦に備えて,国家が常時巨大な常備軍を維持することは財政上不可能である。そのため必要に応じて召集できる在郷軍人の存在意義は大きい。したがって,将来の総力戦に備えて,国家(軍部)は常日頃から軍人精神の涵養(かんよう)に努め,軍事能力の鍛練を図った。教育召集(定期的に数日間軍隊に召集し訓練する)や簡閲点呼(将校を各地に派遣して,実情の視察や訓示などをする)はその一環である。と同時に,このことは第2の要因である,国家意思の国民への浸透に一役を担った。国家(軍部)は在郷軍人をとおして軍国主義的宣伝を各地に徹底させようとした。そのため各地に在郷軍人会を組織し,軍事・行政両面の下部組織として国民統合に役立たせた。
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百科事典マイペディア 「在郷軍人」の意味・わかりやすい解説

在郷軍人【ざいごうぐんじん】

現役として軍務に服していない予備・後備役または退役の軍人。戦時に動員する大軍隊を常備しておくことは財政上制約があるので,平時は在郷軍人を一定期間訓練させて戦時に備える。また在郷軍人団体を組織させて軍国主義的宣伝の役割を果たさせる。日本の旧帝国在郷軍人会や米国のアメリカン・リージョンのように政治的圧力団体としての役割を演じているものも多い。
→関連項目日本郷友連盟花岡事件

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「在郷軍人」の意味・わかりやすい解説

在郷軍人
ざいごうぐんじん
veteran

現役として軍務に服していない軍人。日本では第2次世界大戦が終るまで,予備役,後備役,退役軍人をいった。 1907年に約 800人をもって東京神田区在郷軍人団が結成されたのが,日本最初の在郷軍人の親睦,修養団体である。 10年には全国的な帝国在郷軍人会が結成され,36年には勅令をもって陸海軍の公的機関となった。第2次世界大戦後,56年に旧陸海軍人の親睦,修養団体として社団法人日本郷友連盟が設立された。郷友連政治連盟という政治活動のための組織をもっている。アメリカでは,初めは戦争に参加した退役将兵をさしたが,第2次世界大戦以後はすべての除隊者を意味するようになり,60年代のアメリカでは全人口のうち8分の1にあたる 2200万人が該当した。アメリカの在郷軍人会は,三十数団体あり,除隊者の利益擁護,反共主義の推進など,圧力団体としても有名である。またジュネーブには世界在郷軍人会本部がおかれている。

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