精選版 日本国語大辞典 「国立公園」の意味・読み・例文・類語
こくりつ‐こうえん ‥コウヱン【国立公園】
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一般的な概念としては、国民の公園または国の設定する公園を意味するもので、英語のナショナル・パークnational parkをはじめ、Nationalpark(ドイツ語)、parc national(フランス語)などとともに広く用いられている。1872年、世界最初の国立公園としてアメリカにおいて設置されたイエローストーン国立公園が、「国の設置する大自然公園」という実体をもって輝かしい先例を開いたので、これに啓発されて、各国が導入を図った。これらの国立公園は、国情に応じて多少の差はあるものの、おおむね国の設定する自然公園として定着し、世界的に共通の概念が確立されるに至っている。
[池ノ上容]
アメリカでは、イエローストーン国立公園設置後著しい進展を示し、とくに1916年内務省国立公園局が設置されてからは、公園体系の拡充整備、管理組織の充実が図られて、世界を通じてもっとも理想的な国立公園制度を確立、運営している。アメリカの国立公園体系は、国立公園局設置当初、国立公園と国家記念物をもって始められたが、その後新たな国立公園が設置されるとともに、歴史的な地域、レクリエーション地域などが次々に加えられて、2017年時点で、国立公園59、ほかにナショナル・モニュメント(国家記念物)やヒストリカル・パーク(歴史公園)などを中心に391地域、総面積3400万ヘクタール以上の地域をもって構成されている。国立公園体系に属する地域は、いずれも広義のレクリエーション地域であるが、とくにいわゆる国立公園は、原始的地形地域を主体として、自然景観の厳正な保護を図りつつ、国民の野外レクリエーション利用に供されるものである。
アメリカと同じように原始的地形地域が豊かに残されている国々では、アメリカのアイディアに類似した国立公園制度を導入したものが多くみられる。アメリカと陸続きのカナダでは、1885年にバンフ国立公園を設置し、アメリカに倣った国立公園制度を創設した。カナディアン・ロッキーズ一帯の世界的に傑出した山岳景観を中心に、19世紀末から20世紀の初めにかけて次々に国立公園を設置した。また中部草原地帯に野牛の自然生息地を保護するために設けられたウッド・バッファロー国立公園は、面積450万ヘクタールに及ぶ世界最大の規模をもつ特異なものである。ブラジル、アルゼンチンなどの南米諸国、オーストラリア、ニュージーランド、北欧、アフリカ諸国などのように、未開の原始的地形地域が広域にわたって残されている国では、それぞれ自然生態系の特性を生かして、広大な原始的地形地域を国立公園として設置している。
一方では、ヨーロッパの中部、南部などのように、早くから開発が進み、19世紀にはすでに本来の自然の姿はきわめてわずかしか残されていない国々では、天然記念物保存的な考え方から国立公園が考えられている。スイスにその端的な例がみられ、唯一の国立公園はスイス国立公園とよばれ、主として学術的調査研究を目的とした自然保護地域的な性格が強く、公園的利用は厳しい規制が課せられている。さらにドイツやイギリスのように土地利用の進んだ国々においては、長い間にわたって人の手が加えられたために生じた半自然的な景観が主体となっており、そのような景観を美しく快適に保全することが重要な課題である。ドイツにおいては、1935年のドイツ連邦自然保護法に基づいて、各州において自然保護地域を設定しており、2005年時点で約5000か所に及ぶ。多くは小面積で天然記念物的な性格が強いが、大面積のものは自然公園の実体を備える。リューネブルガー・ハイデ(1万9740ヘクタール)やジーベンゲビルゲ(4200ヘクタール)などは自然保護公園とも称せられて、長期にわたる土地利用の結果生成された半自然的な景観の保全と利用が図られており、国立公園の可能性が検討されている。
イギリスでは1949年に「国立公園および田園利用法」を制定し、日本と相似の社会的、自然的条件のもとで、日本と同様の地域制による自然公園として国立公園を指定している。その目的は、イギリス特有の田園景観を構成する半自然的な地域の自然美と快適さを保全、育成するとともに、野外レクリエーション利用を促進しようとするものである。国土面積の9%を占める15の国立公園の地域は、人工林、農地、牧野、農村集落によって構成される半自然的景観であって、原始的地形地域を主体とするアメリカの国立公園とは制度的にも実体的にもきわめて対照的である。オーストリア、オランダ、スペインなどの欧州諸国においても、ドイツ、イギリスと同様の自然公園としての国立公園の地域指定の制度を実施している。
[池ノ上容]
日本は、地理的、自然的条件によって、変化に富んだきめの細かい美しい自然風景に恵まれている。その代表的に優れたものを国立公園として指定し、風景の保護を図るとともに、国民の保健・休養・教化に資するために1931年(昭和6)国立公園法が制定された。アメリカなどの先例に倣い、国の設定する自然公園という基本的な考え方に異なるところはないが、公有地・私有地に関係なく公園地域を指定する「地域制」によった点で、公園としてまったく新しい概念を確立した。1957年(昭和32)に国立公園法にかわって制定された自然公園法のなかでも、国立公園に関しては、国立公園法の考え方はそのまま踏襲され、「わが国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地」について、環境大臣は中央環境審議会(旧、自然環境保全審議会)の意見を聞き、区域を定めて指定するものとされている。国立公園の指定は、1934年3月、瀬戸内海、雲仙(うんぜん)(1956年雲仙天草)、霧島(1964年霧島屋久(やく)を経て2012年(平成24)霧島錦江湾(きんこうわん))の3公園が指定されたのを最初に、同年12月、阿寒(あかん)(2017年阿寒摩周(ましゅう))、大雪山、日光、中部山岳、阿蘇(あそ)(1986年阿蘇くじゅう)の5公園が、さらに1936年2月、十和田(とわだ)(1956年十和田八幡平(はちまんたい))、富士箱根(1955年富士箱根伊豆)、吉野熊野、大山(だいせん)(1961年大山隠岐(おき))の4公園の指定によって当初の12候補地の指定が完了した。しかし、戦争のために実質的な進展はみられなかった。
第二次世界大戦後、伊勢(いせ)神宮を含む伊勢志摩一帯の自然風景の保護のため1946年伊勢志摩国立公園の指定が行われたのに刺激されて、国立公園指定の要望が全国的に現れ、1955年までに、支笏洞爺(しこつとうや)、陸中(りくちゅう)海岸(現、三陸復興国立公園)、磐梯(ばんだい)朝日、上信越高原、秩父(ちちぶ)多摩(2000年秩父多摩甲斐(かい))、西海(さいかい)の6公園の指定が行われた。その後1957年の自然公園法の制定とともに体系的な指定が計画されて、知床(しれとこ)、南アルプス、白山(はくさん)、山陰海岸が国立公園となり、さらに1971年自然公園行政が環境庁自然保護局(現、環境省自然環境局)の所管に移ってからは、1974年までに利尻礼文(りしりれぶん)サロベツ、小笠原(おがさわら)、足摺宇和海(あしずりうわかい)、西表(いりおもて)(2007年西表石垣)の自然性の高い国立公園が指定された。その後1987年に北海道の釧路(くしろ)湿原を、また、2007年に日光国立公園の尾瀬地区を中心とした区域を分離して新たに指定している。2012年には霧島屋久国立公園が霧島錦江湾国立公園と屋久島国立公園に分割され、2014年には沖縄海岸国定公園の慶良間(けらま)地域が慶良間諸島国立公園として分離独立、2015年にも上信越高原国立公園の西部地域が妙高戸隠(とがくし)連山国立公園として分離独立した。2016年には沖縄のやんばる国立公園、2017年には奄美(あまみ)群島国立公園が指定され、2019年の時点では、34国立公園、総面積2万1907.92平方キロメートル、国土面積に対する割合は5.8%となっている。国立公園の区域は法律に基づく公園計画によって特別地域(73%、特別保護地区を含む)、普通地域(27%)が指定されて、風致景観の維持が図られている。公園の利用施設は、道路、園地、ビジターセンター、自然研究路、公衆便所、避難小屋などの基幹的な公共施設が国費または国庫補助をもって整備が進められている。日本の国立公園は世界中でもっとも高度に利用されており、年間の利用者は2016年で3億5916万人に達している。
[池ノ上容]
『鈴木敏・沢田晴委智郎著『公園の話』(1993・技報堂出版)』▽『飯沼二郎・白幡洋三郎著『日本文化としての公園』(1993・八坂書房)』▽『公園緑地行政研究会著『改正都市公園制度Q&A』(1993・ぎょうせい)』▽『栗山浩一・庄子康編著『環境と観光の経済評価――国立公園の維持と管理』(2005・勁草書房)』▽『森田敏隆写真『日本の国立公園』上下(2007・山と溪谷社)』▽『久末弥生著『アメリカの国立公園法――協働と紛争の一世紀』(2011・北海道大学出版会)』▽『畠山武道・土屋俊幸・八巻一成編著『イギリス国立公園の現状と未来――進化する自然公園制度の確立に向けて』(2012・北海道大学出版会)』▽『小野寺浩他著、国立公園研究会・自然公園財団編『国立公園論――国立公園の80年を問う』(2017・南方新社)』▽『加藤則芳著『日本の国立公園』(平凡社新書)』
数多い日本の風景地の中でも代表するに足りうる傑出した自然の風景地を保護するとともに,その利用の増進を図り,国民の保健・休養および教化に資することを目的として,環境庁長官によって指定される自然公園の一つである。国立公園の諸事業は原則として国が自ら行う。
このほか日本には自然公園として国定公園と都道府県立自然公園がある。国定公園は国立公園に準ずる優れた自然の風景地を,都道府県知事の申し出により環境庁長官が指定する。したがって国定公園の諸事業については,国が都道府県に委任し,原則として都道府県が行う。国定公園は国立公園に比肩する優れた自然景観を保護するものであるが,一方では自然景観が特に傑出していなくとも,大都市に近接し,野外休養地として高い価値をもつものも指定されている。なお,国立公園と国定公園区域の海面内に,海中の景観を維持するために,海中公園地区が指定されている。国立公園や国定公園の指定に当たって,環境庁長官は自然環境保全審議会の意見を聴くことが必要とされている。都道府県立自然公園は,都道府県民を野外休養にひきつける魅力のある地域を都道府県知事が指定する。以上の3公園が自然公園法(1957公布)に定める自然公園である。
日本の国立公園では,保護のための規制は次のように区分される(国定公園も同じ)。(1)特別保護地区 (3)の特別地域内でも特に優れた自然景観,原始状態を保持している所(動・植物,地形および史跡・遺跡等の文化景観も含む)で,落葉・落枝の採取までも規制されるので,原則として,産業開発や観光道路建設なども認められていない。(2)海中公園地区 海中の生物や地形などの海中景観が特に優れているところで,海域における特別保護地区といえる。1970年の自然公園法の改正以後指定された。(3)特別地域 風致の維持,育成を図り,また公園を利用する上で重要な地域で,建物の新設や広告物の設置,河川や湖沼の水位・水量の変更など自然の人為的改変は最小限に規制される。風致維持の必要度により第一種,第二種,第三種に分けられる。特別地域は公園面積の大部分を占めており,自然公園保護の根幹であるから,その風致維持が適切に行われるか否かはきわめて重要である。(4)普通地域 公園区域のうち(1)~(3)の地域に含まれない地域で,最小限の公用制限がある。別荘地の開発,スキーリフトやロープウェー建設も規定の範囲内で認められる。(1)~(4)の区域内における各種の行為には,国立公園については環境庁長官の,国定公園にあっては都道府県知事の許可や認可が必要である。
日本で公園制度が初めて設けられたのは意外に早い。1873年(明治6)太政官布告第16号によって,〈古来ノ勝区名人ノ旧跡等是迄群集遊覧〉の場であった国公有地を公園として政府が認可した。浅草公園,上野公園,偕楽園,兼六園,栗林公園などの都市公園的なものと,松島,養老,嵐山,箕面,天橋立,吉野,奈良,舞子,鞆,厳島などの自然公園的なものがあり,府県が管理した。明治中期になると,大衆的な探勝旅行はもちろん,日本アルプスの登山も盛んとなり,志賀重昂の《日本風景論》(1894),ウェストンの《日本アルプスの登山と探検》(1896,ロンドン),小島烏水の《日本山水論》(1905)などが相次いで発刊され,1911年帝国議会に〈日光ヲ帝国公園トナス請願〉が提出されるほどに運動の高まりをみた。大正期に入ると,史跡名勝天然記念物保護法(文化財保護法の前身)が19年に制定され,著名な景勝地が保護され始めた。アメリカではすでに1872年にイェローストーン国立公園を誕生させ,国立公園局も設置(1915)していた。この影響もあり,日本の内務省は20年に公園法の調査を開始,21年には衛生局保険課が,国立公園候補地として上高地をはじめ16ヵ所の調査を開始した。その後,29年に発足した民間の国立公園協会が雑誌《国立公園》を創刊し,国民の間の自然保護運動も盛り上がった。そして30年内務省に国立公園協会が正式に設置され,31年国立公園法が施行された。この法律にいう国立公園は〈我ガ国天与ノ大風景ヲ保護開発シ,一般ノ利用ニ供スルニ国民ノ保険休養上緊急ナル時務ニシテ且外客誘致ニ資スル所アリト認〉めて制定されたもので,今日に続く国立公園としての性格を明らかに示している。これを受けて,国立公園の選定に関する特別委員会は12ヵ所の国立公園候補地を選定し,34年には瀬戸内海,雲仙,霧島が日本最初の国立公園として指定された。さらに同年中に阿寒,大雪山,日光,中部山岳,阿蘇の5ヵ所も指定され,これに十和田,富士箱根,吉野熊野,大山(1936指定)を加えた12ヵ所が,第2次世界大戦以前の国立公園である。戦後の49年には国立公園に準ずる地域を国定公園とする制度が設けられ,これによって,57年までに国立公園19,国定公園14が指定された。一方,都道府県では国立公園法制定後に,条例によって多くの都道府県立自然公園が指定された。しかし,国定公園や都道府県立自然公園は法制的にはきわめて不備なものであったので,57年に国立公園法を廃止し,〈自然公園法〉が制定された。この結果,国立公園,国定公園,都道府県立自然公園が,一体的に整備されることになった。なお,日本の国立公園数は30(約210万ha),国定公園数は55(約134万ha)で(2007),都道府県立自然公園数は309(約196万ha)となっている(2012)。
世界的にみれば,18世紀後半から19世紀にかけての産業革命と近代都市の成長に伴う自然環境破壊の中から自然保護思想が高まり,また人々の自然への欲求が,国立公園として各国で制度化された。アメリカは世界で最も早く国立公園制度を設け,景勝地や史跡の保護に大きな努力を払ってきた。その背景にはわずか300年の間に際限のない自然破壊や動物の乱獲が進んだことがある。連邦政府が単なる地域指定のみでなく,その土地までも所有する国立公園を設置することになったのは,イェローストーンに関するドーンとウォッシュバーンの調査隊の報告書(1870)が発端となった。メンバーのひとりのコーネリアス・ヘッジスが〈この土地はすべての人々の所有とすべきである〉と提言し,イェローストーンは世界最初の国立公園となった(1872)。イェローストーン国立公園の誕生以降,世界各国で自然保護や国立公園設置の運動が高まり,国際的な連携も進んだ。カナダは1885年にバンフ国立公園を設置した。ドイツは国際連合によって定義されているきわめて広い面積を占める国立公園は有していないが,それに代わる自然保護公園は,1909年に指定が始まった。イギリスでは19世紀後半から民間団体によって,自然を保護し,またそれを一般に開放しようとする運動が盛んとなった。1907年に成立したナショナル・トラストはその典型であった。イギリスの国立公園は,49年の〈国立公園および田園利用法〉に基づいて設置された。また同法によって,特定の動・植物群を保護することを目的とした自然保護区が設定されている。自然景観に恵まれているスイスの国立公園は,イタリアとの国境沿いの標高1500~3173mの地域にただ1ヵ所あるだけであるが,アルパイン・サンクチュアリーとして原始状態のまま自然を残そうと,1914年に設定された。園内の地形や動・植物を徹底的に保護し,自然科学の研究にのみ利用する厳密な意味での自然保護区である。
現在,世界の国立公園体系には,国立公園のほか,アメリカの国家記念物National Monuments,イギリスの自然保護区National Nature Reserves,ドイツの自然公園Naturparkや自然保護公園Naturschutzpark,オーストラリアのPrimitive Areas,インドネシアやスリランカの厳正自然保護地域Strict Nature Reservesなども含まれるが,一般に国立公園といえば,国家が設置する自然公園を指すことが多い。世界の国立公園は大きく二つのタイプに分けられる。一つは公園区域の大部分が国有地として確保され,自然公園としての目的にだけ利用する,いわゆる造営物公園である。これは完全な公園管理や統制ができる理想的な公園で,アメリカのものはその好例であり,カナダ,メキシコ,ブラジル,オーストラリア,ニュージーランド,フィリピンにおいても同じ形態である。一方,開発が比較的早く進み,国土面積に対して人口の稠密な国々では,土地所有権にかかわらず,法的に公園区域を設定し,農林水産業,鉱業などの産業活動も制限を受けながら共存する,いわゆる地域制の体系を採用している。イギリス,ドイツ,オーストリア,イタリアなどがこのタイプで,日本もその一つである。
国立公園としての自然保護はもちろん,その利用において最もよく整っているのは,アメリカの国立公園であろう。アメリカのほとんどの国立公園は,公園の出入口には必ず通過しなければならない関門があり,来訪者は入口で厳しくチェックされ,入園料が徴収される。各国立公園には公園の特徴がよく理解できるような展示室,視聴覚室,売店などのあるビジターセンターがある。また,区域の広い国立公園には自然解説をするナチュラリストを含むレンジャー常駐所があり,パトロール,景観解説が適切に行われる。公園の要所要所には園内の施設・道路,地形・地質,山岳の名称,植物名などを示す標示板が設けられており,自然研究路や博物館も多い。宿泊施設,キャビン(簡易宿泊施設),キャンプ場,駐車場,軽飲食施設などが必ず存在する。これらの諸施設と園内の交通施設(バスなど)は,監督の便宜から国立公園局の厳しい監督下に特定の1社の独占的経営による場合が多い。管理,施設,運営そして土地所有などの点で,アメリカの国立公園は世界の国立公園の考え方に大きな影響を及ぼしている。
日本の国立公園では,近年,自然景観の破壊が大きな問題となってきた。アメリカなどと異なり,管理者である国が土地を所有しないで,区域内で行われる一定の行為だけを規制するという地域制の公園であるため,公園内の自然保護は弱体である。国立公園内でも,樹木の皆伐,石灰石採掘,電源開発,観光開発,林道建設も行われ,原生自然はきわめて少ない。またレンジャー(管理員)も少なく,公共施設も十分でない。利用者の貴重な自然に対する自覚も足りず,公園内における諸施設経営者の営利追求の行き過ぎもみられる。今後,国立公園をはじめとする自然公園を自然誌博物館として,また国民が自然に親しむことのできるための諸施設を整備して国民の利用効果をあげるとともに,自然科学の研究の場としても整備されるべきである。そのためには,イギリスにおけるように,各国立公園の詳細な博物学的な案内書,解説書の発行も重要な施策である。
執筆者:白坂 蕃
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国が指定し経営管理する公園。自然景観・野生生物を保護しつつ,観光資源としての利用をも促進するためのもの。アメリカの国立公園法にならって法整備が進められ,1931年(昭和6)に国立公園法が制定された。34年に瀬戸内海・霧島・雲仙の3公園を指定,阿寒・日光・阿蘇などが続いた。57年に,それまでの国立公園法にかわって新たに自然公園法が制定され,国立公園・国定公園・都道府県立自然公園をその内容とし,自然公園の行政体系も整備された。環境省が管轄。2014年(平成26)現在の数は31。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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