吐血(読み)とけつ(英語表記)Hematemesis

精選版 日本国語大辞典 「吐血」の意味・読み・例文・類語

と‐けつ【吐血】

〘名〙 胃や食道など上部消化器からの出血を吐くこと。多くは、コーヒー状の変色した血をはく。→喀血(かっけつ)。〔医心方(984)〕
談義本・化物判取牒(1755)四「吐血(トケツ)して死す」 〔顔氏家訓‐風操〕

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デジタル大辞泉 「吐血」の意味・読み・例文・類語

と‐けつ【吐血】

[名](スル)食道十二指腸などから出血した血液嘔吐おうとすること。吐いた血の色は褐色がかっている。→喀血かっけつ

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六訂版 家庭医学大全科 「吐血」の解説

吐血
とけつ
Hematemesis
(外傷)

 原因としては食道静脈瘤(じょうみゃくりゅう)胃潰瘍(かいよう)十二指腸潰瘍などの病気が一般的です。外傷によって直接的に食道、胃、十二指腸が損傷することで吐血することは、それほど多くありません。むしろ、頭部の外傷や全身的に重症な外傷を負った強いストレスにより、急に胃にびらん・潰瘍が発生して出血が起こり(急性胃粘膜病変)、そのために吐血が起こることが多いと考えられます。

 そのため、重症外傷の患者さんには、腹部に外傷がない場合でも早期に予防的に抗潰瘍薬を投与します。もし病院に到着する前に吐血した場合の応急処置としては、吐血による窒息が起こらないように、吸引などの気道確保が中心になります。また、顔面の外傷患者は、鼻出血や口腔内の出血を飲み込み、それを吐き出すことで大量の吐血をすることがあるので注意が必要です。

 治療は原因にもよりますが、投薬内視鏡治療を行う場合があります。

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百科事典マイペディア 「吐血」の意味・わかりやすい解説

吐血【とけつ】

消化管上部(食道,胃,十二指腸など)からの出血を嘔吐(おうと)したもの。胃・十二指腸潰瘍(かいよう)や,肝硬変による食道静脈瘤(りゅう)からのものが多い。胃液と混合した場合には胃酸の作用を受けて暗赤色を呈する。治療には頭部を低くして安静を保ち,胃部を冷湿布する。大量のときは輸血やタンポンによる止血,内視鏡による硬化剤注入などが行われるが,止血が不可能な場合は手術が必要。→喀血(かっけつ)
→関連項目新生児メレナ溺死

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「吐血」の意味・わかりやすい解説

吐血
とけつ

食道、胃、十二指腸の上部から出血した血液を嘔吐(おうと)によって吐き出すことをいう。普通、この血液は黒褐色で、吐物はコーヒー残渣(ざんさ)様になっている。吐血は消化性潰瘍(かいよう)(胃・十二指腸潰瘍)からの出血がもっとも多く、びらんまたは胃炎からの出血がこれに次ぐ。肝硬変の末期に発生する食道静脈瘤(りゅう)からの出血は大量のことが多く、予後は悪い。胃癌(がん)からの出血も少なくない。

 吐血の対応としては、出血部位の確認と出血量を推測することである。出血量が多いと輸血が必要である。出血部位の確認には内視鏡検査が行われるが、これを緊急内視鏡という。最初の処置としては、患者を安静にさせておくことである。一般に出血は自然に止血するものであるから、落ち着いてから医師に相談することがたいせつである。また、出血量が多く止血されない場合は、救急的処置が必要となるが、たいせつなことは、吐血した患者にできるだけ不安を与えないことである。

[高橋 淳]

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改訂新版 世界大百科事典 「吐血」の意味・わかりやすい解説

吐血 (とけつ)
hematemesis

下血とともに消化管出血の二大症状の一つ。食道,胃および十二指腸からの出血によって,ときに新鮮血,多くはコーヒー残渣様の褐色に沈殿した血液を吐出すること。胃潰瘍,十二指腸潰瘍,出血性胃炎あるいは食道静脈瘤破綻(はたん)がおもな原因である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「吐血」の意味・わかりやすい解説

吐血
とけつ
hematemesis

食道や胃から出血した血液を吐き出すこと。吐物は黒褐色でコーヒー様をしており,気泡を含まない点で,気管からの喀血と区別される。胃潰瘍,食道静脈瘤,胃癌に起因することが多い。

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普及版 字通 「吐血」の読み・字形・画数・意味

【吐血】とけつ

血を吐く。

字通「吐」の項目を見る

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栄養・生化学辞典 「吐血」の解説

吐血

 食道,胃,十二指腸など,上部消化管より出血し,血液を吐くこと.

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内科学 第10版 「吐血」の解説

吐血(症候学)

【⇨3-2-4)】[吉岡健太郎]

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世界大百科事典(旧版)内の吐血の言及

【消化管出血】より

…消化管すなわち食道,胃,小腸(とくに十二指腸)および大腸,さらに膵臓や胆道系の疾患で,消化管内に出血を生じ,血液が口から吐出したり(吐血hematemesis),肛門から排出する(潜出血occult bleedingあるいは下血melena)こと。 消化管出血は多くの消化器疾患においてみられる症状の一つで,出血量の少ない場合には自覚症状もなく見過ごされやすい。…

【胃潰瘍】より

…そのほか,上腹部の不快感,重苦しくて張る感じ,胸焼け,吐き気などを伴うこともある。ときには胃潰瘍から出血があり吐血や下血がみられることがある(消化管出血)。吐血の場合,血液が多量に出たとき以外は,血液のヘモグロビンが胃液の酸により塩酸ヘマチンとなり,黒褐色になったりコーヒー残渣様になって嘔吐される。…

【嘔吐】より

…後者を〈吐糞症〉という。また,胃潰瘍などで血が混じる場合を吐血という(消化管出血)。激しい嘔吐が起こると大量の胃液を吐出するため脱水状態に陥ることがある。…

【喀血】より

…急性気管支炎では感冒様症状で始まり,血痰,きわめてまれに喀血を伴うことがあるが,2~3日で出血が止まり,再び出ることはない。 喀血したと思われるときには,まず鼻,咽腔など上気道からの出血でないこと,さらに消化管出血(吐血)でないことを確認することがたいせつである。喀血の血液は,通常鮮紅色で,泡をもち,咳とともに喀出され,凝固せず,アルカリ性である。…

【出血】より

…出血の大きさにより,点状出血,斑状出血,組織内に広い範囲にわたってみられる血性浸潤などがあり,また1ヵ所に血液がたまって腫瘍状を呈する血腫,体腔または管状・囊状の臓器内に出血してたまった血瘤がある。出血を起こした部位ないし臓器により,鼻出血,消化管からの吐血,大便に混じってみられる下血(吐血,下血を総称して消化管出血という。出血が少量のとき,〈潜出血〉といい,潜血反応によって確かめられる),気管支・肺からの喀血,尿への血尿などがあり,また胸腔内への血胸,心囊内への血心囊などがある。…

【消化管出血】より

…消化管すなわち食道,胃,小腸(とくに十二指腸)および大腸,さらに膵臓や胆道系の疾患で,消化管内に出血を生じ,血液が口から吐出したり(吐血hematemesis),肛門から排出する(潜出血occult bleedingあるいは下血melena)こと。 消化管出血は多くの消化器疾患においてみられる症状の一つで,出血量の少ない場合には自覚症状もなく見過ごされやすい。…

※「吐血」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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