吉田秀和(読み)ヨシダヒデカズ

デジタル大辞泉 「吉田秀和」の意味・読み・例文・類語

よしだ‐ひでかず【吉田秀和】

[1913~2012]音楽評論家・随筆家東京の生まれ。内務省文部省などを経て音楽評論家に。ラジオパーソナリティーや音楽教育にも力を注ぎ、小沢征爾らを育てた。昭和50年(1975)評論集「吉田秀和全集」で大仏次郎おさらぎじろうを受賞。平成18年(2006)に文化勲章

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百科事典マイペディア 「吉田秀和」の意味・わかりやすい解説

吉田秀和【よしだひでかず】

批評家。日本の音楽評論を批評の域に高める優れた批評的エッセイを残した。東京日本橋生まれ。外科医の父が小樽の病院長に就任したため,少年期を小樽で過ごす。小樽市中学で伊藤整に英語を習う。旧制成城高等学校をへて1936年東京帝国大学文学部フランス文学科卒業。成城高校時代に,中原中也からフランス語の個人教授を受けた。小林秀雄大岡昇平らとも交遊関係があった。1946年,《音楽芸術》に《モーツアルト》を連載,本格的な批評を始める。1948年,斎藤秀雄らと〈子供のための音楽教室〉を開設,初代室長となる。〈子供のための音楽教室〉は後の桐朋学園音楽部となり,小澤征爾ら多くの優れた音楽家を輩出した。1957年,柴田南雄らと20世紀音楽研究所を設立所長となる。1988年水戸芸術館館長に就任,1990年,すぐれた芸術評論に贈られる〈吉田秀和賞〉(吉田秀和芸術振興基金主催)を創設した。その間,音楽のみならず,和洋の文学,美術についての該博(がいはく)な知見を踏まえて,芸術全般にわたって精力的に批評活動を続けた。独,仏,英語に通じ,翻訳も数多い。《吉田秀和全集》第1期,第2期(全24巻,1975年―2004年,白水社)が刊行されている。文化功労者(1996年),文化勲章受章(2006年)。
→関連項目潮田益子諸井誠

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「吉田秀和」の意味・わかりやすい解説

吉田秀和
よしだひでかず

[生]1913.9.23. 東京,東京
[没]2012.5.22. 神奈川,鎌倉
音楽評論家。旧制成城高等学校在学中にドイツ語教師阿部六郎のもとで中原中也と知り合う。また吉田一穂やのちに小林秀雄などとも交流をもつ。東京帝国大学仏文科に進み,卒業後は内務省の嘱託,第2次世界大戦中は情報局に所属した。1942年にローベルト・A.シューマンの『音楽と音楽家』を翻訳し,戦後は官職を辞して音楽評論家として自立する。1953年に初の評論集『主題と変奏』を刊行するが,その間,チェリストの斎藤秀雄や作曲家の柴田南雄とともに「子供のための音楽教室」を開設,のちの桐朋学園の礎石を築く(→桐朋学園大学)。1953年より約 1年欧米を回り,多くの作曲家や演奏家の生の姿にふれて交流を広げる。1957年には日本の前衛作曲家たちが大同団結した二十世紀音楽研究所の創設にかかわり所長となる。1988年に水戸芸術館館長に就任。『藝術新潮』『音楽芸術』といった雑誌上で健筆ふるい,また『読売新聞』から『朝日新聞』に演奏会批評などの場を移したあとは,幅広い読者をもつようになった。生前に全集も刊行され,日本に音楽批評を定着させた業績によって 1996年文化功労者に選ばれ,2006年に文化勲章を受章した。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「吉田秀和」の解説

吉田秀和 よしだ-ひでかず

1913-2012 昭和後期-平成時代の音楽評論家。
大正2年9月23日生まれ。昭和21年「モーツァルト」の評論で注目をあつめる。23年斎藤秀雄らと桐朋学園大音楽学部の母体となる「子供のための音楽教室」を設立,32年「二十世紀音楽研究所」を設立するなど実践的な活動もおこなう。日本の音楽評論の水準をたかめ,また美術・文明批評でも知られる。50年「吉田秀和全集」で大仏(おさらぎ)次郎賞。平成2年水戸芸術館初代館長。8年文化功労者。18年文化勲章。平成24年5月22日死去。98歳。東京出身。東京帝大卒。著作に「二十世紀の音楽」「音楽紀行」など。

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知恵蔵mini 「吉田秀和」の解説

吉田秀和

音楽評論家、随筆家。1913年9月23日生まれ。日本の音楽評論の先駆者であり第一人者。文学や美術などにも深い造詣を示した。48年、「子供のための音楽教室」を開設、初代室長となる(一期生に世界的音楽家の小澤征爾、中村紘子らがいる)。75年、日本の音楽評論家として初の個人全集を刊行し、同年の大佛次郎賞を受賞(2004年までに全24巻が発行される)。82年、紫綬褒章受章。96年、文化功労者となり、06年、文化勲章受章。12年5月22日、急性心不全のため死去。享年98。代表作「モーツァルト」「マネの肖像」など。

(2012-07-09)

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