(読み)たん

精選版 日本国語大辞典 「単」の意味・読み・例文・類語

たん【単】

〘名〙
① ただそれ一つであること。ひとりであること。単一。単独。
※永平道元禅師清規(13C中)弁道法「恐動念于鄰単」 〔史記‐信陵君伝〕
② まじりけがなく、あっさりしていること。こみいっていないこと。複雑でないこと。
③ 衣服に裏がついていないこと。また、その衣服。ひとえ。〔庾信‐対燭賦〕
庭球卓球などで、ひとりとひとりとが試合を行なうこと。また、その試合。シングルス
競馬(1946)〈織田作之助〉「ハマザクラが遂に逃げ切ってゴールインしたのを見届けるといきなり万歳と振り向き、単だ、単だ、大穴だ、大穴だと絶叫しながら」

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デジタル大辞泉 「単」の意味・読み・例文・類語

たん【単〔單〕】[漢字項目]

[音]タン(呉)(漢) [訓]ひとえ
学習漢字]4年
ひとえの着物。「単衣たんい
ただ一つ。ひとり。「単一単価・単科・単記単身単数単独単発
それだけで一つと数えられるまとまり。「単位単元単語
複雑でない。「単純単調簡単
書きつけ。紙片。「菜単伝単
[名のり]いち・ただ
[難読]単衣ひとえ

たん【単】

単試合」の略。⇔
単勝式」の略。

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改訂新版 世界大百科事典 「単」の意味・わかりやすい解説

単 (ひとえ)

公家の衣服の一種で,単衣(ひとえぎぬ)の略。公家の服装構成で最も下に着用される衣。裏をつけない単ものであるが,夏冬とも用いられる。垂領(たりくび)で,男子のものは脇を縫いつけない闕腋けつてき)形式で,(あこめ)と同型であるが,身丈がやや短い。材質は,束帯(そくたい)や衣冠には五位以上の者は紅の繁菱(しげびし)または遠菱の綾,六位以下の者は平絹を用いた。直衣(のうし)や狩衣(かりぎぬ)には禁色(きんじき)以外の好みの色の綾や平絹を用いた。夏にはいずれも生綾や生平絹が使われた。女子の単は(うちき)や衵と同型であるが,裄(ゆき)や身丈が長く作られている。地質は綾や平絹,夏は生綾や生平絹または,羅,縠(こく),紗などの薄物を用い,文様は繁菱,遠菱,幸菱など,色は禁色以外の好みのものとし,襲(かさね)の色に気を配った。なお,単のような裏のつかない単ものの衣の縁は,生地をひねりといって撚絎け(よりぐけ)で縫ってあり,近世は絎けず,のりで固めている。
執筆者:

現代の和服の単には長着,羽織,長じゅばん,帯,コートがある。おもに初夏から初秋まで用いるが,7月,8月は麻や透ける絹物,6月と9月中旬から下旬にかけては袷(あわせ)の長着や長じゅばんの素材の単仕立てを着る。羽織やコートはこれよりも早目。単帯は6月から9月まで。ウール,ゆかたは単仕立てで,ウールは春・秋・冬の袷の季節にも着られることが特徴である。広袷仕立ての袷長着には,羽二重や絽(ろ)の裏衿をつける。肌着や裾除(すそよけ)は単が主である。

執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「単」の意味・わかりやすい解説


ひとえ

公家(くげ)衣服の一種。単衣(ひとえぎぬ)の略。平安時代以降、素肌または肌着の上に着用した単仕立て・垂領(たりくび)、広袖(ひろそで)形式の衣。男女の別があり、男子の単は袙(あこめ)とほぼ同型で、身丈が短く、脇(わき)を縫い付けない衣。その地質は、束帯(そくたい)や衣冠の場合、五位以上の者に紅(くれない)の繁菱(しげびし)または遠菱(とおびし)の綾(あや)、六位以下の者に平絹を用いるとした。直衣(のうし)や狩衣(かりぎぬ)の場合、禁色(きんじき)以外の好みの色の綾や平絹が用いられた。女子の単は袿(うちき)や袙と同型であるが、裄(ゆき)や身丈がやや長めで、脇を縫い付けてある。その地質は、冬に五位以上の者が綾や平絹、夏に生(き)綾、生平絹のほか羅(ら)、縠(こく)、紗(しゃ)などの薄物(うすもの)を用いた。綾や縠などの文様は繁菱、遠菱、幸菱(さいわいびし)など。その色は禁色以外の好みのものや、襲色目(かさねいろめ)によるものとしている。なお、単襲(ひとえがさね)といって、女子が盛夏に、単仕立ての衣を数領かさねて着装する服装も行われた。

[高田倭男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「単」の意味・わかりやすい解説


ひとえ

単物 (ひとえもの) ともいい,裏地のつかないきもののこと。江戸時代には麻地の物を帷子 (かたびら) といい,絹や木綿地の物を単と呼んだ。夏物の薄生地には,平絽,絽縮緬 (ちりめん) ,紋紗,レース,麻縮,お召などがあり,ほかに訪問着として絵羽染,紋付用の単重 (ひとえがさね) もある。第2次世界大戦後ウールと綿や絹,化繊の厚手の交織が出ている。 (→ )  

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「単」の解説


ひとえ

単衣(ひとえぎぬ)の略。裏地をつけない衣服の総称。とくに男女ともに用いた,装束の一番下に着用する広袖絹製の肌着をさす。赤染めのため赤単(あかひとえ)ともいい,布製の物を赤帷子(あかかたびら)とよんで区別することもある。季節を問わず用いるが,夏はとくに薄物を用いた。平安末期以降,肌着として小袖(こそで)を使用するようになると,その上着となった。

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百科事典マイペディア 「単」の意味・わかりやすい解説

単【ひとえ】

(あわせ)に対して裏のついていない衣服。単帯,単羽織などもあるが,一般には単の長着(きもの)をさす。縮緬(ちりめん),御召(おめし),紬(つむぎ),絽(ろ),紗(しゃ)などで作り,多くは夏物。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【雲水】より

…雲水の求道心が試され,それが終わると雲水行脚僧の宿泊寮舎である旦過(たんが)寮に入り1週間前後止宿し,その間を暫到と呼ぶ。掛搭式を経た雲水は,単(たん)(修行者の座る座席)が決められ,清規(しんぎ)(規則)に従って僧堂生活がはじまる。1年を雨安居(うあんご)(夏安居)と雪安居(冬安居)の2期に分け,その間月に1回程度接心(せつしん)(摂心。…

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