前方(読み)マエカタ

デジタル大辞泉 「前方」の意味・読み・例文・類語

まえ‐かた〔まへ‐〕【前方】

[名]
ある位置よりも前。
前後序列の、先の方。前側の方。「前方の来賓席」
「―後ろ方と、ことども分きて、―は賀茂に参り」〈栄花歌合
㋑前の方向。ぜんぽう。「前方に見える山」
ある時点より過去。副詞的にも用いる。
㋐以前。先ごろ。「定刻より前方に着く」
「―拝見致いたことがござる」〈虎寛狂・比丘貞
㋑事前。あらかじめ。「前方から承知していた」
[名・形動ナリ]
時代遅れなこと。また、そのさま。
中古衆生―にして」〈浮・禁短気・三〉
不慣れなこと。また、そのさま。未熟
「―なる買ひ手どもは、女郎に思はれんとて」〈浮・禁短気・一〉
控えめであること。また、そのさま。
調子に乗りても、物は―に言ふべし」〈浮・禁短気・二〉

ぜん‐ぽう〔‐パウ〕【前方】

まえの方。前面。⇔後方
前部が四角いこと。「前方後円墳」
[類語]前面正面向こう向かい真向かい真正面行く手向こう側

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「前方」の意味・読み・例文・類語

まえ‐かた まへ‥【前方】

〘名〙
① 時間的に二つに分けてその早い方。また、その早い方に属することや人。
※栄花(1028‐92頃)歌合「三月には、又賭弓(のりゆみ)あれば、まへ方・うしろ方と、ことどもわきて、まへかたは賀茂に参り、今一方は北野に詣づ」
② 現在、またはある時点より以前の時を漠然とさし、副詞的にも用いる。以前。前。前かど。
※虎寛本狂言・比丘貞(室町末‐近世初)「左様に仰らるるな、前方拝見致た事が御座る」
③ (形動) 過去の風情流儀であること。また、そのさま。古くさいさま。旧式
※浮世草子・好色一代男(1682)六「すこし前かたなる、おかた狂ひのやうに見えて」
④ (形動) 一定の事態にまで至っていないこと。事物に通達していないこと。また、そのさま。未熟。不慣れ。
※浮世草子・色里三所世帯(1688)上「金銀手に有時は此里の諸分まへかたにて気のつかぬ事多し」
⑤ (形動) 控え目であること。また、そのさま。
※浮世草子・真実伊勢物語(1690)一「おかんはすこしまへかたにいたしましたと、とってをきの大さかづき出して」
⑥ 空間的に、前方、または前部をいう。
※類従本実方集(998頃)「ゆみのけちにまだらまくに雪の降かかれるを入道少納言、まへかたのまだらまくなるゆきみれば、とあるに」

ぜん‐ぽう ‥パウ【前方】

〘名〙
① 前の方。前面。
御堂関白記‐寛弘八年(1011)六月二五日「御喪所巖陰前方有吉所
歩兵操典(1928)第九五「銃を僅に前方に出し」
② 前が方形であること。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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