精選版 日本国語大辞典 「分」の意味・読み・例文・類語
ぶ【分】
ぶん【分】
ふん【分】
ぶん‐・ずる【分】
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元来は区分されていることを意味する語であるが,そこから派生した,位,身分という意味が士農工商の区分けと重なって江戸時代には一般化した。〈分に過たる衣裳を是非に着よと言ものはなき事なり〉(石田梅岩《斉家論》)のごときが典型的な用例だが,さまざまな名辞と結びついて相似たニュアンスの中で使われた。しかし,その用法は微妙な含意をもつことになる。〈それ天下の四民士農工商とわかれ,各々其職分をつとめ,子孫業を継で其家をとゝのふ〉(三井高房《町人考見録》),〈下に居て上をしのがず,他の威勢あるを羨まず,簡略質素を守り,分際に安んじ〉(西川如見《町人囊》),〈家業を専にし,懈る事なく,万事其分限にすぐべからざる事〉(1711年(正徳1)の高札,手島堵庵《会友大旨》)。これらは階層秩序にかかわる通常の意味の例である。このうち分限は〈人の分限になること〉(井原西鶴《世間胸算用》)の場合には金持ちの意になる。同じ意味の用例は西鶴のほかにもかなりあり,士農工商という階層身分の中でその上限に達した人という意である。〈分散,欠落行方しれず〉(中沢道二《道二翁道話》)の〈分散〉が分からはずれたから破産した者とされたのも,同じ発想の悲惨な場面への運用である。しかし他方,〈其一分を捌き兼ねつるは独りもなし〉(西鶴《日本永代蔵》),〈一分立てて見せて下さんせ〉(近松門左衛門《心中天の網島》)の〈一分〉は,それぞれ一人前の仕事,一人前の心意気という意味を含みもっている。人間が分に区分けされている存在であるとされるところで,個人としてのあり方を表現する際に一分という言葉で限定する発想が生じた。それは自分が自分であることの意地を示す言葉でもあった。分という言葉が備えることになったこのようなふくらみに注目すべきである。
執筆者:野崎 守英
(1)時間の単位で,記号はmin。1min=60sと定義されている。(2)角度の単位で,記号は〈′〉。1′=(1/60)°=(π/10 800)radである。(1)(2)とも国際単位系(SI)以外の単位であるが,SIと併用される単位となっている。(3)尺貫法の質量の単位。1/10匁に等しく,1891年制定の度量衡法によれば,0.375gに等しい。分量単位は1/10分の厘,1/10厘の毛である。
執筆者:大井 みさほ+三宅 史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
江戸時代における金貨の貨幣単位。両の4分の1,朱の4倍。両と同様に重量単位から転じた。慶長小判では1枚の重量を4匁7分6厘,一分金はその4分の1としたが,のち改鋳によって小判の重量が変化しても両と分の割合は変わらなかったので,重量単位としての意味を失い,貨幣単位として定着した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…銭・厘を補助単位とする十進法の計算体系をもつ。それまで流通の江戸期金貨には1601年(慶長6)制定の両・分(ぶ)・朱という単位が使用されていた。1両=4分,1分=4朱の四進法であり,鋳貨の形態にも小判形と方形との2種があった。…
…日本では古くから黄金(おうごん∥こがね)と呼ばれ,五色の金の一つとされている。 古くから使用された理由は,大部分単体の形で産出するからである。これを自然金という。…
…尺貫法における長さの単位。曲尺(かねじやく)の尺と鯨尺の尺の2種に分かれる。(1)曲尺の尺。…
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[語義と出典]
度,量,衡の3文字は順に,長さ,体積,質量を意味し,同時にそれぞれをはかるための道具(ものさし,枡,はかり)や基準を意味する。なお衡と類縁の文字で権(けん)というのもあるが,これは,はかりそのものではなく,分銅のほうを指す。これら4文字をさまざまに組み合わせた語が古くから用いられており,例えば度量という語は,人の心の広さを指すのに用いられ,また他方では度量衡,度量権衡などの語と同義的にも用いられて,〈長さ,面積,体積,質量をはかること,これらの量をはかるための道具や基準,また,それらにかかわる法律的,行政的な制度ないし公共的な協約〉を指すものと解されてきている。…
…1891年に制定された度量衡法によって尺貫法が確立される以前に用いられた質量の単位。古代中国の単位に由来し,銖‐分‐両‐斤(銖は中位の秬黍(くろきび)100粒の重さ,分=6銖,両=4分,斤=16両)の系列をなし,唐の開元通宝の目方に等しい匁に対しては1両=10匁の関係にあり,ほぼ37.3gに相当する。ただし鎌倉時代後期以降,京都では金1両は4匁5分,銀1両は4匁3分などとされた。…
※「分」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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