先例(読み)せんれい

精選版 日本国語大辞典 「先例」の意味・読み・例文・類語

せん‐れい【先例】

〘名〙
① まえにあった例。以前にあった同じような例。前例
古今著聞集(1254)二〇「此の如き興遊に、左右勝負舞を奏する事先例あり」 〔梁書‐袁昂伝〕
② 以前からの慣例。以前からの例式。まえからのしきたり。前例。
※続日本紀‐天平元年(729)一一月丁未「太政官処分、〈略〉及武官解任者、先例並属式部
※浮世草子・西鶴諸国はなし(1685)一「自今興福寺の太鞁に極め、先例(センレイ)の通り、置所は東大寺にあづけ」
③ 将来の同種事象基準となる例。前例。
※ニッポン日記(1951)〈井本威夫訳〉一九四六年三月二六日「仕方がありませんからこれにお乗り下さって結構です。ただこれを、先例になさらぬように願います」

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デジタル大辞泉 「先例」の意味・読み・例文・類語

せん‐れい【先例】

以前にあった同類の例。また、これまでのしきたり。前例。「先例に従う」
これからの基準になる初めての例。前例。「先例となる」
[類語]前例ためし先蹤せんしょう事例類例るい実例一例・具体例・例証たとえ引き合いケース例外特例用例好例作例語例引例症例例示

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改訂新版 世界大百科事典 「先例」の意味・わかりやすい解説

先例 (せんれい)

一般に前近代社会では,人々のあらゆる行為の規範として先例が重視され,それを逸脱した行為に対して法的・社会的制裁が存在した。とくに法や制度と社会の現実との乖離(かいり)が増大した中世では,先例のもつ意味は大きく,史料には〈先例に任せて〉の文字が充満し,多くの故実書がつくられた。たしかに一つの事実が先例として主張されればそれを無視することはできない。しかし忘れてならないのは,ある行為の規範となるべき先例は,多くの場合個人的な探索によって発見されるもので,別の探索ではこれと矛盾する先例が発見される可能性が大きい。つまり整合的な先例が万人共通のものとして存在しているわけではない。たとえば《御成敗式目》のいくつかの条文にみられる〈右大将家(源頼朝)の例〉でも,立法者の主観的判断によって探索され取捨されたものが,単なる歴史的事実を〈右大将家の例〉としてよみがえらせたものであり,それが中世的な理の作用であったといえよう。
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普及版 字通 「先例」の読み・字形・画数・意味

【先例】せんれい

前例。〔梁書、袁昂伝〕禮に據無しと雖も、乃ち事に先例り。~君、禮の歸するを問ふ。んで以て白す。

字通「先」の項目を見る

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「先例」の解説

先例
せんれい

前例とも。以前からの慣例,しきたり。古代~中世には無条件で守られるべきものと認識され,先例を破ることは新儀(しんぎ)とよばれて非難の対象となった。権利を保障する文書などでは,「先例に任せ」というかたちで用いられることが多い。鎌倉幕府の基本法である「御成敗式目」は,先例を重視して作成された。

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