兄弟(読み)きょうだい

精選版 日本国語大辞典 「兄弟」の意味・読み・例文・類語

きょう‐だい キャウ‥【兄弟】

〘名〙
① 兄と弟。また、その関係。けいてい。きょうてい
※続日本紀‐神亀四年(727)一二月丁丑「冝市往氏、賜岡連姓、伝其兄弟」 〔書経‐君陳〕
② 同じ父母から生まれた子どもたちを、男女の別に関係なくいう。また、その子どもたち同士の関係をもいう。兄弟姉妹
謡曲玉井(1516頃)「豊玉姫御兄弟は御出でなされ」
※人情本・英対暖語(1838)五「実の姉妹(ケウダイ)よりも睦ましく」
③ 片親を同じくする人。また、自分の兄弟姉妹の配偶者または自分の配偶者の兄弟姉妹。義兄弟。
※百座法談(1110)三月二七日「われら皆兄弟として各あひたのまむとて」
⑤ 男同士の、特に親しく気安い間柄で用いる呼び名。
※ぎやどぺかどる(1599)上「如何に兄弟、御作の物の喚はる声皆以てかくのごとし」
[語誌](1)「日葡辞書」には、「兄弟」の読みを示す語が三語上がっている。「キャウダイ」は呉音読み、「ケイテイ」は漢音読み、「キャウテイ」は呉音に漢音を添えた読みである。「ケイテイ」「キャウテイ」には文書語の注記がある。「キャウダイ」は出自漢語であるにもかかわらず古くから使用されていたことにより、身近な日本語として浸透していたようである。中世の古辞書類には「キャウダイ」しか登載されていず「キャウテイ」は中世に一時的にみられる読みと思われる。
(2)「姉と妹」を示す「姉妹」も同様に中国語から日本語に入ってきたが、日本においては男女によって特に区別することはなかった。そのために、兄と弟に限らず、姉と妹であろうが、姉と弟、兄と妹の場合でもキョウダイが使用されてきた。また、兄と弟を特にオトコキョウダイと言ったり、姉と妹をオンナキョウダイと言ったりすることがあるように、キョウダイは兄弟・姉妹の上位概念として使用されている。

けい‐てい【兄弟】

〘名〙 (「けい」「てい」は、それぞれ「兄」「弟」の漢音) 兄弟(きょうだい)をいう。〔日葡辞書(1603‐04)〕
仮名草子・尤双紙(1632)上「大切成物のしなじな〈略〉師弟、親子(しんし)、兄弟(ケイテイ)夫婦の中」

ひん‐でい【兄弟】

〘名〙 (「ひん」「でい」はそれぞれ「兄」「弟」の唐宋音) 禅宗で、法の兄弟、兄弟弟子の意。
正法眼蔵(1231‐53)十方「先師これを泥弾子として兄弟を打著す」
温故知新書(1484)「兄弟 ヒンテイ」

きょう‐てい キャウ‥【兄弟】

相良家文書‐一・建長四年(1252)三月二五日・相良頼氏、同頼貞、同頼俊連署去状案「よてきゃうていおのおのかはんかくのごとし」

あに‐おとと【兄弟】

〘名〙 (「おとと」は「おとうと(弟)」の変化した語) 兄と弟。はらから。きょうだい。
伊勢物語(10C前)六六「あにおとと、友達ひきゐて、難波の方に行きけり」

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デジタル大辞泉 「兄弟」の意味・読み・例文・類語

きょう‐だい〔キヤウ‐〕【兄弟】

片親または両親を同じくする男の子供たち。兄と弟。また、その間柄。けいてい。
男女の別なく、片親または両親を同じくする子供たち。また、その間柄。兄弟姉妹。「姉二人、兄二人の五人兄弟の末っ子」「兄弟げんか」
養子縁組みなどにより親を同じくする間柄になった者。また、自分の兄弟姉妹の配偶者または自分の配偶者の兄弟姉妹。義理の兄弟。
親しい男性どうしが、くだけた場面で用いる呼び名。「おい兄弟、ひとつ頼むよ」
兄弟ぶん」に同じ。
[補説]23は「兄妹」「姉弟」「姉妹」とも書く。
書名別項。→兄弟
[類語](1)(2)(3兄弟けいてい姉妹しまい兄妹けいまい姉弟してい弟妹ていまい兄姉けいし同胞どうほうはらから連枝れんし

きょうだい【兄弟】[書名]

なかにし礼による自伝的小説。平成9年(1997)「オール読物」誌に連載。単行本は翌平成10年(1998)刊行され、第119回直木賞の候補作にもなった。平成11年(1999)ドラマ化。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「兄弟」の意味・わかりやすい解説

兄弟/姉妹 (きょうだい)

兄弟姉妹関係は親子関係,夫婦関係とともに家族内外における基本的な親族関係のひとつであり,どのような兄弟姉妹関係を形成するかによって家族や親族組織の構造に差異を認めることができる。さまざまな家族制度を兄弟姉妹関係を視点としてみれば,兄弟姉妹間の連帯をなんらかの形で強調もしくは尊重するものと,兄弟姉妹間の分離を促進し,そのかわりに親子関係や夫婦関係を強調もしくは尊重するものの二つに大別できる。

 兄弟姉妹関係を強調する家族制度としてとくに注目されるのは大家族制(拡大型家族),同族組織,おなり神信仰,均分相続制,レビレート婚(兄弟逆縁婚),ソロレート婚(姉妹逆縁婚)である。日本における大家族制の最も一般的な形態は兄弟姉妹のうち複数の男の兄弟が結婚後配偶者をともなって生家にとどまり(多子残留),同一の家族を形成するものであり,親子関係に加えて兄弟間の連帯が強調される家族といえる。東北地方にみられた大家族の多くはこうした形態であるが,白川村や越中五箇山の大家族においては戸主および将来の戸主以外は配偶者との同居がみられなかった。しかし同一家族に生まれたほとんどの兄弟姉妹が一生を通じて生家にとどまるという点では,兄弟姉妹関係の重要性が優先されていたといえる。同族組織は兄弟関係を,家族の外側の本分家関係に置換した親族組織である。とくに兄弟間の長男と次・三男の生得的身分的地位の差異を本分家関係にまで拡大したものであり,ここに認められる兄弟関係の著しい特徴は,本家を相続するものと分家を創設する次・三男の差である。この差は一子残留制を基本とする日本の直系型家族において一般的であり,通過儀礼などの遂行にあたってこの差がよくあらわれる。これに対して均分相続制は兄弟間の格差をつけない相続制度であり,位牌祭祀形態のひとつである〈位牌分け〉(親の位牌を子ども全員がもつ慣行)もこれに類似した意味をもつといえる。レビレート婚とソロレート婚はそれぞれ兄弟間と姉妹間の一体性を強調する制度である。以上では主として兄弟間もしくは姉妹間のみにかかわる家族制度をとりあげてきたが,奄美・沖縄などにみられるオナリ神信仰は兄弟と姉妹の関係をめぐる家族制度のひとつである。奄美・沖縄では一般に兄弟をイヘリ,姉妹をウナリ・オナリと呼ぶ。これは兄弟姉妹を一括してキョウダイと呼ぶ本土の用語法とは異なる日本語である。オナリ神信仰とはオナリがイヘリを霊的に守護するとする信仰であって,イヘリは旅に出るときにはオナリ神のシンボルである白い布などを身につけていく。こうしたオナリ神信仰にみられる兄弟姉妹間の連帯は夫婦関係とは対立する。

 兄弟姉妹の分離を促進する家族制度として重要なものは一子残留制と夫婦家族制である。一子残留制は兄弟姉妹のうちのいずれか一人が相続者として残留する制度であり,したがって相続者以外は養子,分家,婚姻などによって生家から転出し,兄弟姉妹間の分離が行われる。これがさらに著しいのは夫婦家族制であって,この場合にはすべての男女が結婚を契機として生家をはなれて独立した家族を創設する制度であり,家族内の関係としては親子関係や兄弟姉妹関係よりも夫婦関係の強調がみとめられる。全体的にみれば,日本の家族制度のなかで完全な意味で兄弟姉妹間の一体性を強調するものはみられないといえよう。
兄弟分
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普及版 字通 「兄弟」の読み・字形・画数・意味

【兄弟】けいてい

兄と弟。〔詩、小雅、常棣〕そ今の人、兄弟に如(し)くは(な)し

字通「兄」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の兄弟の言及

【ヒメ・ヒコ制】より

…古代国家成立以前の兄弟姉妹(姫と彦)による二重支配体制をいう。血縁紐帯を基軸とした氏族社会で,同母の兄弟と姉妹は特に深く結ばれていた。姉妹は兄弟を守護する霊力をもつと信じられたからである。この関係は現代なお残っている沖縄のオナリ神信仰をみるとよくわかる。この関係にもとづいて,兄弟姉妹が政治的・宗教的支配権を分掌する支配体制ができ上がった。その典型例は,邪馬台(やまたい)国の卑弥呼(ひみこ)と男弟による共治体制,賀茂神社の斎祝子(いつきのはふりこ)とその兄弟の神官による祭祀体制などにみられる。…

※「兄弟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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