(読み)しん

精選版 日本国語大辞典 「信」の意味・読み・例文・類語

しん【信】

〘名〙
① あざむかないこと。いつわらないこと。まこと。誠実。儒教では、五常(仁・義・礼・智・信)の一つとされている。
※十七箇条憲法(604)「九曰、信是義本。毎事有信」
※梵舜本沙石集(1283)三「信と云は心も言も実ありて、偽なく」 〔易経‐繋辞上〕
② 疑わないこと。信用すること。まことと思いこむこと。信頼。
徒然草(1331頃)一九四「あまりに深く信をおこして、なほわづらはしく虚言を心得そふる人あり」 〔荀子‐非十二子〕
帰依(きえ)すること。信仰すること。信心。信仰心。
※観智院本三宝絵(984)下「諸の童これをみてみなまことの信をおこしつ」
④ おとずれ。たより。音信
※俳諧・猿蓑(1691)跋「有昆仲騒士不集録、索居竄栖為信」
小学読本(1874)〈榊原那珂稲垣〉一「伝信機 鉄線に機を設けて一瞬に信を万里に伝ふる器なり」 〔晉書‐劉琨伝〕
⑤ しるし。あかし。割符符契。〔陳鴻‐長恨歌伝〕

しん‐・ずる【信】

〘他サ変〙 しん・ず 〘他サ変〙
物事を本当だと思う。また、信頼する。信用する。
源氏(1001‐14頃)明石ひとのみかどにも、夢をしむして国を助くる類(たぐひ)多う侍りけるを」
※徒然草(1331頃)七三「世俗の虚言をねんごろに信じたるも」
神仏を信仰する。帰依する。
※百座法談(1110)三月一日「何况やふかく信し、あつくたのみたてまつらせたまはむ功徳をや」
※宇治拾遺(1221頃)一二「誠の心をおこすといふは、他の事にあらず。仏法を信ずる也」

しん・じる【信】

〘他ザ上一〙 (サ変動詞「しんずる(信)」の上一段化したもの) =しんずる(信)
社会百面相(1902)〈内田魯庵〉変哲家「君達匹夫匹婦が方鑑天気九星陶宮等を信じるを迷信だといって笑うが」

しん‐・ず【信】

〘他サ変〙 ⇒しんずる(信)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「信」の意味・読み・例文・類語

しん【信】[漢字項目]

[音]シン(呉)(漢) [訓]まこと
学習漢字]4年
言行にうそ偽りがないこと。まこと。「信義忠信背信
まことと思う。疑わない。「信条信託信任信念信用信頼過信確信誤信自信所信盲信
神仏を信じて帰依する。「信教信仰信者信心信徒狂信篤信
遠くまで届く合図や便り。「信号信書音信いんしん・おんしん交信私信書信通信電信発信返信来信
約束のしるし。あかし。わりふ。「印信いんじん
信濃しなの国。「信州上信越
[名のり]あき・あきら・こと・さだ・さね・しげ・しの・ただ・ちか・とき・とし・のぶ・のぶる・まさ・みち
難読信天翁あほうどり信濃しなの

しん【信】

[名]
うそのないこと。まこと。誠実。「を示す」
疑わないこと。信用。信頼。「を置く」
帰依すること。信仰。信心。「を起こす」
[接尾]助数詞。特定の発信人から届く通信の着順を表すのに用いる。「第二
[類語]信用信頼信任信望人望定評評判暖簾のれん覚え名望声望徳望人気魅力受け名誉名聞めいぶん面目体面面子メンツ一分いちぶん沽券こけん声価名声美名雷名見栄みえ面皮世間体体裁肩身

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「信」の意味・わかりやすい解説


しん

一般には、真実で偽りのないことをいう。

(1)儒教においては、五常(仁・義・礼・智(ち)・信)の一にあげられ、友情に厚く友を欺かないことをいう。

(2)仏教では、サンスクリット語シュラッダーśraddhāあるいはプラサーダprasāda(信仰の意)の訳語。仏陀(ぶっだ)の教えを信ずることによって、心が澄み、清らかになることをさす。『倶舎論(くしゃろん)』4には「信とは心をして澄浄(ちょうじょう)ならしむ」とあり、倶舎宗ではあらゆる事象を75種の実体に分け、それを5大別した分類法(五位法)の中の心所法の一部にあげている。すなわち、心の働き(心所)のうちで、すべての善心と相伴うもの(大善地(だいぜんじ)法)の一とされる。また悟りに至る種々の修行を37に分類した三十七菩提(ぼだい)分法(三十七道品)のなかの五根(信・勤(ごん)・念(ねん)・定(じょう)・慧(え))の一とされる。

 なお、ヒンドゥー教で説かれる「信仰」バクティbhaktiは、神に対する信愛・献身的な信仰であり、仏教で説く「信」śraddhāとは異なる。

[小川 宏]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「信」の意味・わかりやすい解説


しん

(1) belief ある事柄や主張を,それ自体で納得するのではなく,それを支える権威のために受入れること。信憑性の合理性によって正信または迷信の区別,その確実の度合いによって疑い,憶測,確信などの区別がある。内的態度としては信頼を伴った絶対的帰依をいう,この意味で信念ともいう。 (2) śraddhā 仏道修行者のための最初の階位。原語の śraddhāは無条件に信愛するという意味のバクティ bhaktiとは異なり,心を清浄にして理解をもって信じるという意味である。 (→信仰 )

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【信心】より

…神や仏の力を信じ,これに帰依し,もろもろの願をかける心。したがって宗教に入る第一歩が信心である。…

※「信」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

靡き

1 なびくこと。なびくぐあい。2 指物さしものの一。さおの先端を細く作って風にしなうようにしたもの。...

靡きの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android