会所(読み)カイショ

デジタル大辞泉 「会所」の意味・読み・例文・類語

かい‐しょ〔クワイ‐〕【会所】

人の集会する所。また、そのための建物や部屋。「碁会所
中世、公家・武家・寺社の住宅に設けられた施設の一。室町時代に発達し、歌会闘茶・月見などのための会合に用いられた。
江戸時代、種々の目的をもって人の集会した所。株仲間組合事務所町役人村役人事務所両替所、取引所など。

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精選版 日本国語大辞典 「会所」の意味・読み・例文・類語

かい‐しょ クヮイ‥【会所】

〘名〙
① 人の集会する所。また、そのための建物や室。会宿。
※米沢本沙石集(1283)八「酒宴の座席、詩歌の会所として無礼の事共多侍り」 〔春秋左伝‐成公一一年〕
② 公家、武家、寺社の住宅に設けられた施設の一つ。室町初期に特に発達し、歌会、闘茶、月見等の遊戯娯楽のための会合に用いられ、唐物、唐絵などを多数陳列する座敷飾りがなされた。
無名抄(1211頃)「このころ人々の会につらなりてみれば、まづ会所のしつらひよりはじめて」
③ 江戸時代、種々の目的をもって人の集合する事務所をいう。
(イ) 株仲間商人などの組合事務所。
※米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉二「『ロヤルエキテンチ』は、貿易品の市価を商定する、商法緊要の会所なれば」
(ロ) 米や金銀、繰綿などの取引所。
※浮世草子・椀久二世(1691)上「三枚肩をやめて歩行路に家質置て其銀会所(クヮイショ)よりすぐに道頓堀に沉ける」
(ハ) 諸藩の発行した藩札などの発行事務所。
(ニ) 諸藩が国産品の専売を行なう場合の専売機関。
(ホ) 江戸、大坂をはじめ都市の自治のための集会所。また、町役人の事務所。
咄本・当世手打笑(1681)五「彼年寄殿、其晩に町の会所(クイショ)え五人組をよびあつめて」
(ヘ) 遊郭内の管理事務所。検番
人情本・春色辰巳園(1833‐35)初「その身になって見るときは、辛気心苦(しんきしんく)の会所(クヮイショ)にて、なかなかたやすきくらしにあらず」
(ト) 幕末開港時の諸藩貿易事務所。
④ 江戸時代、松前藩が蝦夷(えぞ)の地の諸漁場に、主として徴税のために設けた役所。

え‐しょ ヱ‥【会所】

〘名〙
仏語。会得したところ。事物をさとって、より所にできるもの。〔文明本節用集(室町中)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「会所」の意味・わかりやすい解説

会所 (かいしょ)

広義には諸種の会合,寄合のために設定された会場を意味しており,鎌倉時代から江戸時代末まで多くの用例が見られる。中世には和歌,詩文の文芸的寄合の会場を会所と呼んでいて,対代(たいだい),二棟廊などを臨時に鋪設(しつらい)して会所にあてた。また,北野天満宮では和歌奉納のための会合が催され,そのための会所が所在していた。また,中世後半の村,郷の自治的寄合会場に源をもつ町会所が,近世には京都や奈良の市中に多く設けられ,町内自治に活用されていた。株仲間商人などの組合事務所,米や金銀・繰綿などの取引所,藩札の発行所などを会所と呼ぶこともあった。京都の伝統行事の一つである祇園祭の山鉾巡行に参加する山鉾町では,各町の町会所が祭り神事の寄合,準備,囃子の練習,山・鉾の飾場として大きい役割を今もなお果たしている。

 文芸,社交の会合の会場であった会所は会合の種目が多様になり,会合の機会が増加して恒例化すると,臨時の場からしだいに専用の場を設定する傾向を生んでいる。専用会所の早い例は足利義満の室町殿に出現しており,つづいて北山殿では金閣に隣接して会所二階殿が造立され,座敷には東西2ヵ所に多数の珍宝飾具足を飾り,人目をひいた。義満以降の足利家歴代将軍邸では奥向の庭池に臨んで会所,泉殿会所を造立しており,義持の三条坊門殿では2棟,義教の室町殿では3棟,義政の室町殿でも2棟の会所が存在し,各会所の屋内主座敷は多数の飾具足を飾り,和歌,連歌の月次会が公家,武家の会衆を招いて開催された。将軍邸以外にも内裏では泉殿あるいは小御所が会所として利用され,後小松院の一条東洞院御所にも寝殿とは別に会所が造立されていた。醍醐寺門跡の京内住房法身院や寺内の住房金剛輪院に会所が造立されていて,とくに後者の会所飾具足は将軍義教が寄進したもので,押板付書院違棚の各飾具足で構成され,将軍家同朋衆の手で飾付けを行っている。会所用例は15世紀前半に上述のような諸例が見いだされ盛況を呈したが,応仁の乱後にも継続し,足利義政の東山殿,細川管領邸,奈良興福寺門跡の住房禅定院や成就院に各会所が見いだされる。これらの会所は邸内の庭園に面して設けられ,屋内主座敷は押板,付書院,違棚の飾の場を集中し,飾具足で満たしていた。会所座敷の飾具足類は中国から舶載の唐物が中心であり,唐絵,銅器,漆器,土器,文房具で構成されていた。押板,付書院,違棚が設けられ,飾の方式が制式化されるのは,15世紀前半のことであろう。同朋衆の能阿弥,相阿弥が飾付次第や具足類の内容,種目を記した《御飾書》《君台観左右帳記》は,後に筆写流布されて住宅の室内装飾の定形化,普及に大きい影響を与えた。
書院造
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「会所」の解説

会所
かいしょ

会合や事務所などに使われる建物や部屋をいう。(1)室町時代の公家や武家の住宅のなかに建てられた客殿。連歌・茶会などの会合や対面のときに利用され,住宅を構成する建物のなかでは最も重要な役割を担った。(2)中世末期,町衆(ちょうしゅ)が地域ごとに設けた集会所。(3)江戸時代にはさまざまな会所がみられる。株仲間の事務所,米・金銀の取引所,商業機能をもった藩の役所,町内の事務所や集会所,両替・手形・藩札などの引替所,幕末に幕府や藩が外国貿易のために江戸や大坂に設けた役所などをいう。

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旺文社日本史事典 三訂版 「会所」の解説

会所
かいしょ

江戸時代,組合や寄合のための施設
種々の目的・機能のものがあり,(1)株仲間などの事務所,(2)米・繰綿 (くりわた) などの取引所,(3)藩札・手形の引換所,(4)専売・国産奨励の役所,(5)都市の自治集会所,(6)幕末の貿易機関などを会所と呼んだ。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「会所」の意味・わかりやすい解説

会所
かいしょ

集会や事務の行われる場所。平安時代以後,貴人の邸の客殿をこう呼んだが,江戸時代には,幕府・諸藩の行政,財政上の役所,町役人,村役人の事務所,商取引,金融関係の事務所に,この名がつけられた。

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普及版 字通 「会所」の読み・字形・画数・意味

【会所】かいしよ

集会の所。

字通「会」の項目を見る

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防府市歴史用語集 「会所」の解説

会所

 浜子[はまこ]を含めた塩田で働く人たち全てを取りしきるためのものです。

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世界大百科事典(旧版)内の会所の言及

【住居】より

…室町時代の将軍邸は身分が公卿であることもあって,寝殿造を基調にしていた。しかし,接客を目的にした会所(かいしよ)が建てられるなど,生活の内容はかなり変わってきている。15世紀初めの住宅を示すものと思われる〈仁和寺常瑜伽院指図〉によれば,寝殿の平面が細かい間取りに分かれ,目的に応じて部屋を使い分けていたようすが見取られる。…

【書院造】より

…平安時代の貴族の住宅形式であった寝殿造を母胎とし,中世における生活様式の変化のなかで,日常の生活機能を充足するために変容と改良が加えられた。室町時代初期ごろ,座敷飾の諸要素(押板(おしいた),棚,付(つけ)書院)が出そろい,同時代中期の応仁の乱前後の時期に盛行した会所(かいしよ)座敷の飾りに,押板,棚,付書院を組み合わせて装置し,置物を飾る風習が成立した。この座敷飾は中世末までに会所の枠をこえて住宅の主座敷を飾る方式として定着した。…

【問屋場】より

…近世の宿の事務を扱う場所。伝馬所または会所ともいう。宿役人の長である問屋の屋敷の一部をあてることもあり,別に設置する場合もあった。…

【室町時代美術】より

…義満が建てた北山殿の遺構である鹿苑寺の金閣(舎利殿,1398)は,それまでの住宅建築になかった三層の楼閣であり,禅宗寺院の影響が指摘されている。しかしながら,北山殿の主屋は寝殿であり,独立して建てられた会所は,唐物,唐絵の陳列場でもあった。当時の将軍邸における座敷飾の方式は,1437年(永享9)義教が後花園天皇の行幸を新造の室町殿に仰いだときの記録《室町殿行幸御餝記(おかざりき)》などによってうかがうことができる。…

【寄合】より

…このため,町奉行どうしが月番の奉行役宅で協議を行うことを〈内寄合〉として区別していた。町々には奉行所に協力し,市中の治安維持にあたる〈手先(下引)〉と称する者がいたが,彼らが情報の収集を行ったり,奉行所からの通達の連絡,容疑者の取調べなどをする会所があった。この会所には市中の茶屋が定められており,〈寄合茶屋〉といわれている。…

※「会所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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