伊和大神(読み)いわのおおかみ

精選版 日本国語大辞典 「伊和大神」の意味・読み・例文・類語

いわ‐の‐おおかみ ‥おほかみ【伊和大神】

播磨地方の神。伊和氏族にまつられ、大己貴命(おおなむちのみこと)、葦原志許乎命(あしはらのしこおのみこと)と同神ともいう。「播磨風土記」に種々の伝承がみえる。

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改訂新版 世界大百科事典 「伊和大神」の意味・わかりやすい解説

伊和大神 (いわのおおかみ)

播磨国風土記》に記された国作りの神。この神は播磨国宍禾(しさわ)郡伊和村を本拠とする伊和君(いわのきみ)に祭られて,揖保(いいぼ),宍禾,讃容(さよ)などの諸郡に事績を残している。それによると,土地を開拓し,境界を定めて〈クニ〉の基礎を築き,天日槍あめのひぼこ)と軍を起こして戦い,また集団の祭りに欠かせない酒宴の神でもあった。本来,各地方では〈クニ〉の始まりについてのいわれを語るために英雄神を創造した。その神は,〈クニ〉という集団の〈主(ぬし)〉として,領地を占有し鉄製農具と武器を用いて自然や他の共同体に対して挑戦的にたたかった,粗野な族長層を神格化したもので,イワノオオカミはこの地方的な英雄神の典型である。これらの地方の〈クニ〉が,強大な中央の政治勢力に隷属するとき,国作りの英雄神も土着性を失って吸収されることになる。天下の国作りを行ったとされる大国主神はこれらの英雄神を統合化して成立したものであると言える。
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朝日日本歴史人物事典 「伊和大神」の解説

伊和大神

『播磨国風土記』にのみみえる神で,もっぱら国内を巡行する。地域では有力な神だったとみえて,同風土記に多くの記事を載せ,御子神も10柱を数える。なか出雲出身であることを思わせる記事もあるが,本来的に播磨国に固有の神で,出雲との関係が生じるのは比較的新しく,天智朝(668~671)以後かともいわれている。いずれにしろ,風土記編纂のころから程遠くない時期に,早々とその支持基盤が衰退したらしく,出雲系の神に紛れてしまう。もともとはこの神を祭っていたであろう兵庫県一宮町の伊和神社などでも,いつとは知れず祭神を伊和坐大名持御魂神(現在は大己貴命)という出雲系の神として現在に至る。<参考文献>八木毅『古風土記・上代説話の研究

(神田典城)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「伊和大神」の解説

伊和大神 いわのおおかみ

「播磨国(はりまのくに)風土記」にみえる神。
播磨(兵庫県)の揖保(いいぼ),讃容(さよ),宍禾(しさわ)の3郡などで信仰された国作りの神。この地方の一族の基礎をつくった族長が神格化されたものとみられ,土着の豪族伊和氏によってまつられたという。のち大国主神と同一化された。

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