仮借(読み)かしゃく

精選版 日本国語大辞典 「仮借」の意味・読み・例文・類語

か‐しゃく【仮借】

〘名〙
① 借りること。
正法眼蔵(1231‐53)家常打眠仏眼法眼慧眼・祖眼・露柱燈籠眼を仮借して、打眠するなり」 〔春秋左伝‐宣公一二年〕
② 許すこと。見逃がすこと。手心を加えること。近代では打消または反語疑問語句を伴うのが通例かしゃ
四河入海(17C前)五「白髪紛紛寧少借 ちっとも白髪は我に仮借してゆるさぬぞ」
末枯(1917)〈久保田万太郎〉「真摯(まじめ)な、仮借のない師匠のまへに神妙に坐った」 〔戦国策‐燕〕

か‐しゃ【仮借】

〘名〙
① 漢字の分類法である六書(りくしょ)一つ。ある意味を表わす漢字がない場合、意味は違うが同じ発音既成の漢字を借用する方法。たとえば、供物を盛る祭器を意味する「豆」という文字を、同音の植物を表わす文字に借用するようなもの。かしゃく。仮借字(かしゃくじ)
※俳諧・つの文字(1791)凡例「但かなづかひのたがひめは、詩牌の仮借の例に傚ふ」 〔許慎‐説文解字叙〕
※史記抄(1477)八「あまりきつく申せとも常に仮借(かシャ)してとて、色に御腹立ありとも見せすして御とがめもなうて」

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デジタル大辞泉 「仮借」の意味・読み・例文・類語

か‐しゃく【仮借】

[名](スル)
許すこと。見逃すこと。「仮借なく罰する」
「精神の自由をかたく守って、一歩も―しない処が」〈鴎外青年
借りること。
かしゃ(仮借)
[類語]厳しい

か‐しゃ【仮借】

漢字の六書りくしょの一。音はあるが当てるべき漢字のない語に対して、同音の既成の漢字を意味に関係なく転用するもの。食物を盛る高い脚の付いた器の意の「豆」の字を、穀物の「まめ」の意に用いる類。

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普及版 字通 「仮借」の読み・字形・画数・意味

【仮借】かしやく

他の助けをかる。〔荘子、至楽〕生は假借なり。之れを假りて生く。生くるは塵垢なり。ゆるす。〔戦国策、燕三〕北蠻夷の鄙人、未だ嘗(かつ)て天子を見ず。故に振慴(しんせふ)す。願はくは大王、少(しばら)く之れを假借し、畢(ことごと)く(すす)むことを得しめよ。(かしや) 六書の一。他の字の音を仮りて用いる。是は匙(さじ)の形で匙の初文。これを代名詞や是非の意に用いるのは仮借。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「仮借」の意味・わかりやすい解説

仮借
かしゃ

許慎 (きょしん) の分類した六書の一つ。既成の漢字を借りて,それと同音ないし類音でしかも意味の異なる別の語に転用する用法。本来「皮革」の意味を表わす漢字の「革」を,同音カクをもつ別の意味の単語「改める」に転用して後者にも「革」の字をあてたり,「みみ」を表わす「耳」という漢字を,ジという音を共通にもつ助辞「のみ」にも用いるなどがその例。「釈迦」などの音訳,日本の万葉がなの一部,いわゆるあて字の一部もその一種である。

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世界大百科事典(旧版)内の仮借の言及

【漢字】より


【漢字の種類と造字・転用】
 ふつう〈六書(りくしよ)〉と呼ばれる分類がある。六書とは指事・象形・会意・形声・転注・仮借の六つである。このうち前4者が文字の形による分類であり,後2者は文字の転用に関するものである。…

【六書】より

…〈考は老なり〉といい,また〈老は考なり〉というような関係である。(6)仮借(かしや) あて字であり,令,長がそれぞれ県令,県長などの意味で使われる場合がそうだという。 これらの解説のうち(5)(6)の両者,特に(5)についてはさまざまに解釈が分かれて統一しにくいが,(1)から(4)までは漢字の構成原則,(5)(6)の両者は作られた漢字の2次的な使用のための原則と,だいたいのところ推測できる。…

※「仮借」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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