(読み)まじわる

精選版 日本国語大辞典 「交」の意味・読み・例文・類語

まじわ・る まじはる【交】

〘自ラ五(四)〙
① 互いにまじり合う。入りまじる。ごちゃまぜになる。まざる。まじる。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一〇「日の初に出でて虚空を暎(てら)すが如くして紅と白と分明にして金色に間(マシハレ)り」
② まぎれる。隠れる。隠棲する。
※平家(13C前)一「講堂中堂すべて諸堂一宇ものこさず焼払て、山野にまじはるべき由」
③ 触れる。接する。接触する。また、かかわる。かかずらう。
神皇正統記(1339‐43)下「朝端につかへ政務にまじはる道をのみこそまなびはべれ」
地蔵菩薩霊験記(16C後)二「右は伊吹大山に接(マジハ)り、左は余呉入江に隣り」
④ 他人と親しくつきあう。交際する。
書紀(720)皇極三年正月(岩崎本訓)「後に他(ひと)の頻に接(マシはる)ことを嫌(うたが)はむことを恐りて」
徒然草(1331頃)一一三「老人の若き人にまじはりて、興あらんと物言ひゐたる」
⑤ 男女が交合する。交接する。交尾する。
古今著聞集(1254)八「鵲飛来て、その首尾をうごかすをみて、二神まなびてまじはる事をえたり」
⑥ 行きちがう。物と物とが、互い違いになる。交差する。
数学で用いる語。
(イ) いくつかの図形が出合って、共通の点をもつ。線と線、線と面、面と面などが出合って少なくとも一点を共有する。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書(1889)〕
(ロ) 二つ集合が共通な要素をもつ。

まじ・える まじへる【交】

〘他ア下一(ハ下一)〙 まじ・ふ 〘他ハ下二〙
① 加え入れて一つにする。入れまぜる。まぜ合わせる。
※万葉(8C後)一〇・一九三九「ほととぎす汝が初声は吾れにもが五月の珠に交(まじへ)て貫かむ」
※大慈恩寺三蔵法師伝院政期点(1080‐1110頃)一「犬羊に参(マシフル)虎豹を以てし」
② 互いに組み合わせる。交差させる。また、ことばや約束などをとりかわす。かわす。
※書紀(720)雄略即位前(前田本訓)「情盤(みこころとけ)て楽(たのしび)極りて、間(マシフル)言談(みものがたり)を以(したま)ふ」
③ 互いに武器などで攻め合う。「砲火をまじえる」
※地蔵十輪経元慶七年点(883)三「陣を交(マじ)へて戦はむ時には」
[補注](1)ハ行四段動詞「まじはる」の他動詞形で、ともに漢文訓読文に用いられた。これに対して平安時代の和文では「まじる」「まじらふ」「まず」「かはす」の用いられることが多い。
(2)室町時代ごろからヤ行にも活用した。→まじゆ(交)

まじわり まじはり【交】

〘名〙 (動詞「まじわる(交)」の連用形名詞化)
① まじわること。人と交際すること。つきあい。交際。
※平家(13C前)一「上北面より殿上のまじはりをゆるさるる者もあり」
※明日への楽園(1969)〈丸山健二〉一「過ぎ去った日の彼との交わりを鮮明によみがえらせ」
② 男女が交合すること。交接すること。性交。〔日葡辞書(1603‐04)〕
③ 数学で用いる語。
(イ) 二つまたはいくつかの図形が出合うところに生じる共通の点。また、その点が集まってできる図形。種類によって、交点・交線・切り口などと呼ぶ。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書(1889)〕
(ロ) いくつかの集合に共通な要素の全体から成る集合の、そのいくつかの集合に対する称。集合A、B、C、…の交わりは記号∩を用いて、ABC∩…のように表わす。キャップ。共通集合。共通部分。積集合。
④ キリスト教で、イエス=キリストをもととする信徒相互の信仰生活。

こう カウ【交】

〘名〙
① まじわる所。
※米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「経度百八十度の交を過るとき、一日を増すこと定りなり」
② 季節、時期などのかわりめ。
※翰林五鳳集(1623)二八「古人有白頭如新、傾蓋如一レ故。予是歳春夏之交、辱浄土院宰之識荊〈熙春〉」
※条約改正論(1889)〈島田三郎〉一「嘉永安政の交に当り」 〔春秋左伝‐僖公五年〕
③ まじわり。つきあい。交際。〔易経‐繋辞下〕
④ =こうてん(交点)②〔遠西観象図説(1823)〕

まじら・う まじらふ【交】

〘自ハ四〙
① まじり合う。まじっている。まじろう。〔観智院本名義抄(1241)〕
② 人とつき合う。交際する。まじる。まじろう。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「容貌(かたち)よりはじめ、まじらひたるさまなど、もどかしきところなく」
③ 分け入る。入り込む。まじる。
※賀茂女集(993‐998頃)「もみぢ葉のふりしく山にまじらひてみのしなならぬいろもこきかへ」

まじろ・う まじろふ【交】

〘自ハ四〙 (「まじらう(交)」の変化した語)
※木工権頭為忠百首(1136頃)桜「桜花松のしけえにまじろへどあたなるくせはなほらざりけり〈藤原為忠〉」
※蜻蛉(974頃)中「まろも法師になりてこそあらめ、なにせんにかは世にもまじろはん」

か・う かふ【交】

[1] 〘自ハ四〙 (他の動詞の連用形に付けて補助的に用いる) ある動作がすれちがうように、また、まじるように行なわれる。互いに…し合う。交錯するように…する。「行きかう」「飛びかう」「散りかう」など。
[2] 〘他ハ下二〙 互いにまじえ合う。入れちがいにする。かわす。
※万葉(8C後)二・一九五「敷たへの袖易(かへ)し君玉垂の越野過ぎゆくまたもあはめやも」

かい かひ【交】

〘語素〙 (まじわる意の動詞「かう(交)」の連用形から) 動詞の連用形、名詞などに付いて、それらの動作あるいは物の交差すること、また、重なり合う所を表わす。「はがい(羽交)」「はすかい(斜交)」など。
※催馬楽(7C後‐8C)伊勢の海「伊勢の海の 清き渚(なぎさ)に潮加比(カヒ)に なのりそや摘まむ」

まじらい まじらひ【交】

〘名〙 (動詞「まじらう(交)」の連用形の名詞化) 人々との交際。仲間に加わること。まじわり。つきあい。
※宇津保(970‐999頃)あて宮「まじらひもせず、宮の御もとへも参らずながめ給へり」

まじ・ゆ【交】

〘他ヤ下二〙 (ハ行下二段活用の「まじふ」から転じて、室町時代ごろから用いられた語。多くの場合、終止形は「まじゆる」の形をとる) =まじえる(交)〔日葡辞書(1603‐04)〕

まじろい まじろひ【交】

〘名〙 (動詞「まじろう(交)」の連用形の名詞化) 交際すること。
※狭衣物語(1069‐77頃か)三「さやうのまじろひまでは、思しかくべうもこそあらざめれ」

ま・ず【交】

〘他ザ下二〙 ⇒まぜる(交)(一)

まじ・う まじふ【交】

〘他ハ下二〙 ⇒まじえる(交)

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デジタル大辞泉 「交」の意味・読み・例文・類語

こう【交】[漢字項目]

[音]コウ(カウ)(漢) [訓]まじわる まじえる まじる まざる まぜる かう かわす
学習漢字]2年
二つ以上のものがまじわる。「交差交通交流
入れかわる。かわるがわる。入れかえる。「交換交互交代交番
つきあう。つきあい。まじわり。「交際交渉交遊外交旧交国交社交親交絶交断交
男女が性的な関係を持つ。「交合情交性交
「交渉」の略。「団交
手渡す。「交付手交
(「淆」の代用字)入りまじる。「混交
[名のり]かた・とも・みち・よしみ
[難読]交喙いすか斜交はすか悲喜交交ひきこもごも交譲葉ゆずりは

こも‐ごも【交/交々/相/更】

[副]《古くは「こもこも」》
多くのものが入り混じっているさま。また、次々に現れてくるさま。「悲喜―至る」
互いに入れ替わるさま。かわるがわる。互いに。
「犬は一疋ずつ土橋の側から下りて行って、灌水の水を―に味うた」〈佐藤春夫田園の憂鬱
[類語]代わる代わる代わりばんこ交互に互いに相互に次次

こう〔カウ〕【交】

つきあうこと。まじわり。「親しくを結ぶ」「水魚の
年月や季節などの変わり目のころ。「春夏の

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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