レッドグレーブ(英語表記)Redgrave, Vanessa

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「レッドグレーブ」の意味・わかりやすい解説

レッドグレーブ
Redgrave, Vanessa

[生]1937.1.30. ロンドン
イギリスの舞台・映画女優。長年にわたる政治活動でも知られる。有名な演劇一家の出身。父マイケル・S.レッドグレーブはイギリスで最も敬愛される俳優の一人で,母レイチェル・ケンプソンと妹リンも女優,弟コリンは演出家および俳優として活躍。1960年代に結婚した映画監督トニー・リチャードソンとの間に生まれた 2人の娘も女優。父と共演した舞台 "A Touch of the Sun"(1957)で女優デビュー。映画女優として本格的に活動を開始した『モーガン』Morgan!(1966)で初めてアカデミー賞候補となった。舞踊家イサドラ・ダンカンを演じた『裸足のイサドラ』Isadora(1968)でもアカデミー賞候補となり,『ジュリア』Julia(1977)でアカデミー賞助演女優賞を受賞した。アーサー・ミラー脚本を手がけたテレビ映画『ファニア歌いなさい』Playing for Time(1980)では,ナチスの強制収容所に送られるユダヤ人女性を演じてエミー賞を受賞したが,長年にわたりパレスチナ解放機構 PLOを擁護してきたことから批判を招いた。1990年代に入ると,『ミッションインポッシブル』Mission: Impossible(1996)などの人気映画への出演により批判は沈静化したものの,政治活動が女優業に影響を与えていることは疑いの余地がない。

レッドグレーブ
Redgrave, Sir Michael

[生]1908.3.20. ブリストル
[没]1985.3.21. デナム
イギリスの俳優。フルネーム Sir Michael Scudamore Redgrave。ケンブリッジ大学卒業。均整のとれた容姿美声と知的な演技により,『ハムレット』『リア王』のタイトルロールや『ベニスの商人』のシャイロックなどを演じ,シェークスピア役者として知られた。現代劇では『ワーニャ伯父さん』(1962)が有名。1959年ナイトの称号を受けた。娘のバネッサ Vanessa(1937~ )とリン Lynn(1943~2010),息子のコリン Corin(1939~2010)も俳優で,特にバネッサ・レッドグレーブは映画でもスター的存在。演技に関する著書として『俳優の道』 Actor's Ways and Means(1955)と『仮面か顔か』 Mask or Face(1958)がある。

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百科事典マイペディア 「レッドグレーブ」の意味・わかりやすい解説

レッドグレーブ

英国の俳優。ロンドン生れ。父は舞台俳優マイケル・レッドグレーブ。舞台をへて,1958年映画界入り。K.ライス監督《モーガン》(1966年)とイザドラ・ダンカンの生涯を描いた同監督の《裸足のイザドラ》(1968年)でカンヌ国際映画祭主演女優賞を2度受賞。気品と謎めいた雰囲気を漂わす役柄を多く演じる。他にM.アントニオーニ監督《欲望》(1966年),K.ラッセル監督《肉体の悪魔》(1971年),F.ジンネマン監督《ジュリア》(1977年,アカデミー助演女優賞),E.M.フォースター原作の《ハワーズ・エンド》(1992年)などに出演。ベトナム反戦運動や,1974年の英国総選挙での労働者革命党からの立候補落選)など,社会的・政治的活動も活発に行っている。著書に《バネッサ・レッドグレーブ自伝》がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「レッドグレーブ」の意味・わかりやすい解説

レッドグレーブ
Michael Scudamore Redgrave
生没年:1908-85

イギリスの俳優。地方での活動を経て,1936年オールド・ビックに参加。恵まれた容姿と声とを武器として,W.ウィッチャリーの《田舎女房》のような喜劇の主人公を演じた。その後,ハムレット,マクベス,プロスペローなど,シェークスピア劇の主人公をはじめ,T.S.エリオットの《一族再会》のような現代劇やチェーホフなどの外国劇の役も演じている。イギリス有数の知的な俳優で,スタニスラフスキーの演技論に影響を受け,みずからも演技論の著書がある。また,ヘンリー・ジェームズの小説を劇化した。1959年,サーの称号を受ける。夫人レーチェル・ケンプソン,娘バネッサ,リン,息子コリンもすべて俳優。
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