日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
マクドナルド(Ross MacDonald)
まくどなるど
Ross MacDonald
(1915―1983)
アメリカの推理作家。本名はケネス・ミラーKenneth Millar。ハードボイルド推理小説が英雄ものや暴力ものへ流れていくなかで、ハメットやチャンドラーを継承して社会、人間を力強く描写する高い文学性を特徴とする。処女長編推理『暗いトンネル』(1944)以来、どこかに自己を投影した作品が多く、『動く標的』(1949)で初めて登場した名探偵リュー・アーチャーLew Archerに自己の投影があることを作者自身認めている。続いて『人の死に行く道』(1951)、『縞(しま)模様の霊柩車(れいきゅうしゃ)』(1962)、『ドルの向う側』(1965)などの佳作を発表した。なお夫人は、『鉄の門』(1945)などで有名な推理作家のマーガレット・ミラーMargaret Miller(1915―94)である。
[梶 龍雄]
『菊池光訳『暗いトンネル』(創元推理文庫)』▽『井上一夫訳『動く標的』(創元推理文庫)』▽『小鷹信光訳『ロス・マクドナルド傑作集』(創元推理文庫)』