ボッシュ

精選版 日本国語大辞典 「ボッシュ」の意味・読み・例文・類語

ボッシュ

[一] (Hieronymus Bosch ヒエロニムス━) フランドルの画家。悪の諸相や怪奇な幻想・妖怪、あるいは地獄の情景を描出。代表作は「快楽の園」「聖アントニウスの誘惑」など。(一四五〇頃‐一五一六
[二] (Carl Bosch カール━) ドイツ工業化学者。ハーバーとともに、高圧下でアンモニアを合成する方法を発見。高圧化学反応の研究と開発により一九三一年ノーベル化学賞受賞。(一八七四‐一九四〇

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「ボッシュ」の意味・読み・例文・類語

ボッシュ(Hieronymus Bosch)

[1450ころ~1516]オランダフランドル派の画家。奇怪な空想と鋭い写実とが結びついた特異な画風で知られる。ボス。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ボッシュ」の意味・わかりやすい解説

ボッシュ

燃料噴射装置や制動装置ブレーキ)など自動車関連機器や部品および電動工具の開発,製造,販売を手がける企業。日本のボッシュ・グループの中核企業として油圧機器,包装機械メーカー等の関係会社とともにグループを構成,またドイツのボッシュ・グループの傘下にある。1911年ドイツの自動車部品メーカー,ロバート・ボッシュが日本で同社製品の販売・修理の代理店契約を締結,翌 1912年横浜に修理工場を開設。1939年ロバート・ボッシュの技術援助と三菱重工業,東京自動車工業(→いすゞ自動車)の出資を得て,ディーゼルエンジン付属機器メーカーのヂーゼル機器(1990ゼクセルに社名変更)が設立。第2次世界大戦後のモータリゼーションによる需要拡大とともに発展した。1955年ヂーゼル機器からブレーキ倍力装置事業を分離,自動車機器を設立。1972年ロバート・ボッシュの 100%出資子会社,ロバート・ボッシュ・ジャパン(1985ボッシュに社名変更)が設立。1999年ボッシュ,自動車機器,ゼクセル(2000ボッシュオートモーティブシステムに社名変更),ほか 2社が乗用車用ブレーキ事業を統合し,ボッシュブレーキシステムを設立。2002年ボッシュオートモーティブシステム,ボッシュブレーキシステム,ボッシュエレクトロニクス(1992ゼクセルとボッシュが設立)が,ボッシュオートモーティブシステムを存続会社として合併。2005年ボッシュとボッシュオートモーティブシステムが後者を存続会社として合併,同時に社名をボッシュと改める。2008年ロバート・ボッシュの完全子会社となる。

ボッシュ
Bosch, Carl

[生]1874.8.27. ケルン
[没]1940.4.26. ハイデルベルク
ドイツの工業化学者。ライプチヒ大学有機化学を専攻し,1898年学位を得た。 94年シャルロッテンブルクで工業技術を学び,現場作業の経験をした。バーディシェ・アニリン・ウント・ソーダ・ファブリーク (のちのイー・ゲー・ファルベン社,現バスフ社) に入社,1919年社長となった。 1913年高圧下で触媒を使って水素と窒素を合成させてアンモニアをつくるハーバー法の工業化に成功 (→ハーバー=ボッシュ法 ) 。さらに,水蒸気と水性ガスの混合物を高圧下で金属触媒に通して,水素を大規模に生産するボッシュ法を発見。 31年高圧化学の研究に対して F.ベルギウスとともにノーベル化学賞を受賞した。

ボッシュ
Bosch, Juan

[生]1909.6.30. ラベガ
[没]2001.11.1. サントドミンゴ
ドミニカ共和国の政治家。 1961年5月 30日独裁者 R.トルヒーヨ・モリナが暗殺されたのち,20年間にわたる海外亡命から帰国,ドミニカ革命党の党首として活発な政治活動を開始。 62年 12月に 38年ぶりに行われた大統領選挙で当選,翌 63年2月大統領に就任したが,同年9月 25日軍部クーデターで追放された。 65年軍部の革新派がボッシュの復権を目指して反乱 (ドミニカ危機 ) を起したが,米州機構 OASの介入で挫折。同年の選挙は敗北した。 73年ドミニカ革命党離党。 78,82,86,90年総選挙にドミニカ解放党を率いて出馬,いずれも落選した。

ボッシュ
Bosch, Hieronymus

[生]1450頃. セルトヘンボス
[没]1516.8.9. セルトヘンボス
オランダの画家。本名 Hieronymus van Aeken。ボッシュは生地ボス (ボッシュのオランダ読み) に由来する。その生涯については不明な点が多いが,おそらく地方画家のヤン・ファン・アーケンの孫と考えられ,生涯に 40点ほどの作品を残した。作品は初期の『七つの大罪』 (プラド美術館) ,『馬鹿の治療』 (同) ,中期 (1485頃~1505頃) の『干し草の車』 (同) ,『悦楽の園』 (同) ,『いばらの戴冠』 (ロンドン,ナショナル・ギャラリーおよびプラド美術館) など。透明な色彩と細密な描写で,半動物,半植物,半機械的な人間や,不思議な幻想的情景を描いた。

ボッシュ
Bosch(Bos), Cornelis

[生]1510頃
[没]?
オランダの画家,版画家。主としてローマで活躍。マニエリスム風な作品を手がけた。またラファエロや G.ロマーノの油絵から版画を制作した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「ボッシュ」の意味・わかりやすい解説

ボッシュ
Carl Bosch
生没年:1874-1940

ドイツの工業化学者。ケルンの生れ。シャルロッテンブルク,ライプチヒの各大学に学び,1899年バーディシェ・アニリン・ソーダ会社(BASF(バスフ))に入社。1908年アンモニア合成についてのハーバー法が実験室的に成功するや,BASF社は直ちにF.ハーバーと共同研究の契約を結び,09年,ボッシュがハーバー法工業化研究の責任者となった。彼は多数の化学者や装置技術者を組織して,触媒と高温高圧の技術を開発し,アンモニアの接触合成法〈ハーバー=ボッシュ法〉を確立し,13年,オッパウの工場で年間3万6000tの硫安を生産することに成功した。この合成法は,第1次世界大戦中にはアンモニアの酸化により火薬用硝酸の製造に,さらに尿素肥料の製造に利用された。19年,ベルサイユ平和交渉ではドイツの技術代表をつとめた。その後25年にイーゲー・ファルベン社設立とともに社長になる。31年,高圧化学の研究と開発,とくにアンモニア合成の触媒に関する研究に対して,F.ベルギウスとともにノーベル化学賞を授与された。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「ボッシュ」の意味・わかりやすい解説

ボッシュ

ドイツの工業化学者。ライプチヒ大学で学び,1899年バーディシェ・アニリン・ソーダ会社(バスフ)に入り,アンモニア合成(ハーバー=ボッシュ法)の工業化に成功。1925年イーゲー・ファルベン創立とともに社長。1937年カイザー・ウィルヘルム協会総裁。高圧化学技術への貢献に対し1931年ベルギウスとともにノーベル化学賞。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

化学辞典 第2版 「ボッシュ」の解説

ボッシュ
ボッシュ
Bosch, Carl

ドイツの工業化学者.冶金職人の修行を積んだ後,ベルリン工科大学で冶金学と機械学を学び,1898年ライプチヒ大学で有機化学の分野で学位を取得.こうしたユニークな背景が,のちに化学装置の研究に役立った.大学卒業後,BASF社に入社し,合成染料部門に勤務後,F. Haber(ハーバー)によるアンモニア合成の工業化研究を行い,二重筒構造の高圧反応装置を設計し,工業生産の成功に導いた.Haberとともに確立したアンモニア合成法はハーバー-ボッシュ法とよばれる.1919年IGファルベン社社長となり,1935年カイザー・ウィルヘルム協会の会長に選ばれた.高圧化学的方法の開発の業績に対して,1931年F.K.R. Bergius(ベルギウス)とともにノーベル化学賞を受賞した.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本の企業がわかる事典2014-2015 「ボッシュ」の解説

ボッシュ

正式社名「ボッシュ株式会社」。英文社名「Bosch Corporation」。輸送用機器製造業。昭和14年(1939)「ヂーゼル機器株式会社」設立。平成2年(1990)「株式会社ゼクセル」に改称。同12年(2000)「株式会社ボッシュ オートモーティブ システム」に改称。同17年(2005)現在の社名に変更。本社は東京都渋谷区渋谷。独ボッシュ社日本法人。自動車部品メーカー。ディーゼルエンジン用燃料噴射装置が主力。ほかにブレーキシステムなど。東京証券取引所第1部旧上場。平成20年(2008)完全子会社にともない、上場廃止。

出典 講談社日本の企業がわかる事典2014-2015について 情報

世界大百科事典(旧版)内のボッシュの言及

【イーゲー・ファルベン[会社]】より

…ドイツの化学工業を支配していたこの六大会社は,利益共同体契約を結んで,1916年以降共同で各種製品を製造していた。IGは,カール・ボッシュの指導下に世界市場に発展を図り,第1次大戦によって失った市場をしだいに回復していった。薬品,染料,窒素肥料の分野で世界的に有名だったが,その後スタンダード・オイル社と提携し,水素添加法による人造石油のほか,チタン,合成ゴムなどの新製品を開発し,ヒトラーのナチ政府の自給政策を可能にする基盤を与えた。…

※「ボッシュ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android